突如起こること。

「もしもし」


 久しぶりにこの電話機が鳴っただろう。僕の家にある電話機がなった。最近は携帯電話の普及であまりこのような電話機を持っている家も多くはないだろう。僕の家もそろそろ解約して、携帯電話だけでもいいのではないか、そんな話が親父との間で上がっていたくらいには、だ。


 「間宮さんのお宅でよろしいでしょうか。」


 「はい、間違いないです。」


 この電話番号にかけてくる人なんて、そう多くない。最近は3か月前に何とか放送が受信料の電話に来たくらいだ。だから、誰なんだろうと思っていた。電話越しには女の人の声、だいたい僕の母親と同じくらいの年だろうか。僕は16歳、母親の年齢はよく知らないが、だいたい40過ぎたくらいだろうか。そう考えると、多分そうなんだろう。僕はそう当てをつけて、頭の中を探った。


「ああ、ありがとうございます。飛騨の母親です。」


 まさかの相手であった。飛騨というのは僕の彼女の苗字である。飛騨なんて姓、そうそうないから多分そうであろう。まだ一度もあったことも、話したこともないのにこんな形で声を聴くとは思っていなかったので、少々びっくりしている。彼女の親となるとなかなか緊張するな、などと考えた。しかし僕は、彼女が両親に僕たちの関係を伝えているのかは知らないので、もしかしたら何かあったから電話をかけてきたのでは?などと思慮していた。まあ、このまま話を聞いていればわかるだろう。そう考えた。


「いつもお世話になっております。どうかしましたか?」


「娘が……」


 相手が突然泣き崩れたのか、受話器から声が聞こえなくなった。僕はよくわからなく、話の全容もつかめていなかったので


「すみません、すみませーん。」


 そう繰り返していた。すると突然。


「おねーちゃん、しんじゃったんだ。」


 

 ────……は?


 どういうことだ。何事だ、訳が分からなかった。


 意味が、分からない。どういうことなのか、まったく理解をする思考が働かなかった。


 誰か教えてくれ、この言葉の意味、を……。

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