3.イケメンを装っていた女に貪り喰われてしまった





部屋の扉が開いた。





霧崎が戻ってきたらしい。


だが……。



「……は?」


俺は目の前に現れた光景に絶句するしかなかった。



俺の目の前に現れたのは、たしかに霧崎だ。


しかし、その格好は、明らかに別人と見まごうほどに変わっていた。


「……え?」


俺は目をこする。


しかし、目の前に居るのは確かに霧崎だった。


「ふふ。


おまたせ」



そう言って微笑むその姿は、男らしさのかけらもない女のような容姿をしていた。


髪を下ろし、服はボディラインが分かりやすいものを着ている。


身長も明らかに低くなっているし、胸もいくらか膨らんでいるように見える……。


おまけに、少し化粧をしているような気が…。



「おま……」



俺は絶句した。


そんな俺の様子を見て、霧崎は笑った。


「あはは!


驚いたかい?

その顔が見てみたかったんだよ!


どうだい?

ボクの格好は?


キミはこういう女が好きなんだろう?」



そう言って、霧崎は両手を広げて自分の格好を見せつける。


「おま……お前……」


俺は理解が追いつかない。



「驚きすぎて、言葉も出ないか。


キミの彼女さん…ああ、今はもう『元カノ』になったんだっけ。


うふふ。



キミはああ言う子が好きなんだろうと思って、ボクも見た目を寄せてみたんだ。



もちろん元カノさんをそのまま再現はしなくて、ボクの顔の良さとかもうまく活用できるようなアレンジも加えてみたんだけど…。


どう?


あんな女の思い出全部を上書きするくらい、可愛く仕上がってるでしょ」



霧崎は、俺の反応に気を良くしたようだ。




「…お前、お、女だったのか…?」




「さあ、どっちでしょう?



見ただけじゃあ、分かんないよね。


好きに触って、確かめてもいいんじゃない?」




霧崎が、細目で誘惑してくる。


「さ、触る…だと?」


「うん、そうだよ。


ボクの身体は、キミだけのものだ。



だからキミは、ボクの身体を隅々まで触っていいよ♡」



霧崎が、俺に近づいてくる。


俺は後ずさった。



しかし、すぐに壁に阻まれて、そのまま霧崎のベッドに倒れる。


「ふふ。


そんな怖がらないで?


ボクから暴力はしないよ。



キミはただ、確かめるだけなんだから。


ボクが、男と女、どっちなのかを、好き放題ボクの身体を使ってみればいいじゃないか」



そう言って、霧崎は俺の手を取ると、自分の胸に押し当てた。



「霧崎、やめろ……!」


俺の手は、霧崎の異常な力を振りほどけない。



「どう?


ボクの胸の感想は?」



柔らかな感触が、俺の手を包む。


「霧崎、あ…」


霧崎は、それを聞いて嬉しそうに笑う。


「ふふ。

もっとたくさん触ってもいいんだよ?


ほら、遠慮しないで」



そう言って、俺の片方の手も自分の胸に押し当てる。



俺は抵抗しようとするものの、やはり力が強くて振りほどくことができない。



「くそ……!」


俺は必死に抵抗するが……。



「あはっ♡


無駄だよ〜」



霧崎は、そのまま俺になだれ込むように

して、ベッドに押し倒してきた。


霧崎の香りが、俺の鼻を包む。


甘い、女の香りだ。



「ねえ、ボクはどっちかな?」


「し、知らねえよ…!」



俺は顔を背ける。


しかし霧崎は、俺の両手を動かして、胸の下の方に移動させる。


「ねーえ、ちゃんと触ってよお♡



うふふ。


胸だけじゃあ、まだ断定できないよね?


一番はっきりさせるのに良いところは…分かってるでしょ?」



霧崎は、自分の股に、俺の手を押し付ける。



「……っ!」




完全に、どっちか分かってしまった。


俺はこんな状況なのに、自分の中の男がせり上がるのを感じた。



霧崎は、とても満足そうな顔をする。


俺の耳元で囁いてくる。



「分かった?


キミも、ボクの身体が欲しくなってきたみたいだね。



いいよ。


ボクの身体は、キミだけのものだから、好きに抱いても」



「う、うるさい……!」


俺は必死に抵抗するが、霧崎の顔がすぐ近くに寄ってきた。



そのまま、俺の耳を舐めてくる。


「ふふ……れろ……♡」


俺は背筋がゾクっとするのを感じた。


さらに霧崎は、俺の股間に手を這わせる。



「っ!」


思わず声が出そうになったが、なんとか堪えた。


しかし、霧崎の指は、するりと上下に動き始めた。



「いい加減に…しろ!」


「きゃあぅ…!」



俺は霧崎を押し飛ばした。


霧崎が俺の股間に手を当てていたおかげで、俺の片手が空いていた。


俺は霧崎を押し飛ばした勢いで、ベッドの布団を霧崎に思いっきり被せた。



「うわぁ!」



霧崎は突然の暗闇に、驚いた声を上げる。


俺は、すかさず霧崎に覆い被さり、そのままベッドに倒れさせた。



「なっ…坂本くん!」


「馬鹿野郎、もう知らん!


俺は帰るぞ!」



俺は霧崎が体勢を崩している隙に、そのまま部屋を出ようとする。



「ま、待ってよ……!

置いてかないで…」


霧崎の声が聞こえたが、俺は無視して扉に手をかける。


俺は扉を開けるようと、ドアノブを探したのだが…。



「あれ?


この扉、どうやって開けるんだ…?」


俺は扉を開けようとするも、ドアノブがない。


扉に、取っ掛かりらしきものが全く無いのだ。



「……なんだこの扉?」



俺が疑問に思っていると……。


「……くふっ!


あはっあははははは!」



そんな俺の様子を見て、霧崎が突然笑い出した。


すでに布団を取り払って、俺の背後に立っていた。


「な、何がおかしいんだよ?」


俺はゾッと背筋が凍るのを感じながら、霧崎の方を振り向いた。


「くくっ……ふふ……!


ボクがキミを、大人しく帰らせるとでも思ったのかい?


最初から、この部屋に入った時点で、キミはボクの掌の上なんだよ」


「っ…!


お前、この扉はどういうことだ?


こんなの、どこにも出られないじゃないか。

お前だって…」


俺は霧崎の異様な笑い声に恐怖を覚えながらも、扉を指さす。


「そうだね……。


この扉はね?



ボクとキミ、両方を閉じ込めるためのものなんだよ。


一度閉まったら、ボクの意思でさえ、開けることはできないよ」


「なんだって…。

正気かお前!」


俺は言いながら、今更霧崎に正気を問う事自体が無駄であることに気付いた。



「安心しなよ。


この扉は、明日の朝になったら自動で開くようになっているから。



まあ、それは明日の朝までは、決して開かないことの裏返しでもあるんだけどね。



さてさて、それまでボクとキミ、二人っきりで何をしようかなあ?」



「ひ……!」


俺は、霧崎が恐ろしくてたまらなかった。


完全に、目の前の食材をどう調理しようか楽しんでいる化け物が、目の前にいたのだから。


霧崎は、完全に詰んだ俺を前にして、恐ろしい勢いで欲望を畳み掛けてくる。



「うふふ。坂本くん、ボクとキミの二人きりだよ?もっとリラックスしていこうよ?今から明日の朝まで、たくさんイチャイチャ愛し合うことができるんだよ。ふふふ、楽しみだな。ずっとこうしてキミをボクのモノにするチャンスをうかがっていたんだ。長年の夢がやっとかなったんだよ、とっても嬉しいことじゃないか。キミも、ずっとボクが欲しかったんじゃないのかい? そうに決まってるよね?キミはボクのことを覚えていないみたいだけど、ボクたちは幼い頃に出会っていたんだよ。あの時のキミは可愛かったなあ。今のキミもずっとたくましくなって素敵だけど、あの頃のキミもそれはそれで素敵だったんだよ。まあキミはいついかなる時でもボクにとっては最高に素晴らしい運命の人であることには変わりないんだけどね。でもキミは、ボクのことを覚えていないようだったから、とても寂しかったんだよ。やっと高校生になって再会できたのに、ボクのことを全然覚えていないのはヒドくないかい?まああの頃と違ってボクは男装していたし、苗字も見た目も変わっていたから分からないのもしょうがないと思うけど、それにしたって辛かったな。キミに再会してから、半年は苦しくてキミに顔を合わせることもできなかったんだよ。おかげでキミに告白するチャンスを逃してしまって、これからどうやってキミと結ばれようかなって毎秒頭を悩ませていたんだよ。でもね、キミの周りにはウザったらしいメス犬どもがいつもうじゃうじゃ湧いてくるじゃないか。それに気づいたら、もううだうだ待っているわけにはいかなかったよね。キミは高校生になってから、やたらと女子に嫌われるようになったのに気づいているよね?ふふふ、それってね、ボクのせいなんだよ。あはは、驚いた顔をするね?その顔も美味しそうだから写真に永久保存するのは当然として、全身をボクの舌で舐めてあげたいね、ああ、見てるだけで美味しそうで脳が震えてくるよ。あ、ごめんごめんついキミが魅力的だから話が脱線してしまったよ、これもキミがボクを狂わせたせいなんだから、責任をとってほしいものだよ全く。ま、キミがボクを妊娠させて結婚してくれて、一生永遠に添い遂げるのは既定路線だから、どうキミが逃げ出しても責任は取らないといけないんだけどね、あははは、結婚式は教会でやるからね、ウェディングドレスも決まってるんだよ、楽しみだね。あ、そうそうキミが女子に嫌われてしまう話に戻るけど、当然全てボクの仕業さ。キミに近づくメス豚は全部追い払ってきたよ、すごいでしょ、えへへ。当然女子だけじゃなく、男だって近づけないようにしたよ。もちろんキミが完全にひとりぼっちになると可哀想だから、ある程度は男友達は許可したんだけどね。でもメスはだめだね、キミの優秀な遺伝子を狙って、ボク以外の女が神聖なるキミの周りを嗅ぎ回っているのは我慢ならなかったから、申し訳ないなと思いつつもキミが女の子から嫌われるように仕向けたんだよ。ごめんね、これから一生ボクがキミに尽くして今まで女の子に愛されなかった分、ボクが何兆倍にも返して愛してあげるからね、よかったね。あはは、でも気になるよね、いくらなんでも、ほぼ全ての女子に嫌われるように仕向けるのは無理があるだろうって、流石にボクの運命の人である聡明で究極で愛しいキミなら気づくと思うんだけど、まあすでにキミはどうあがいてもボクのものであることに変わりないから全部ネタばらししちゃおうか。その答えは実にシンプルだよ、ボクはキミが女子に嫌われるように、キミが関わりそうな女を一通り洗脳して回っていたんだよ。ふふ、もちろんそんな非現実的な話があるわけない、ってキミは思うよね?でもね、キミはもう嫌と言うほど見ているはずだよ、ボクがいろんな人を洗脳して、キミがボクのものになるように洗脳を続けてきた結果をね。ボクにはね、特殊な能力があるんだ。この瞳が見えるかい?うふふ、キミに見つめられると照れちゃうな、これから最低でも百回は結婚して見つめ合おうね。この瞳で相手をじっと見つめると、その相手はボクの意のままに操ることができるんだよ、しかも結構応用がきく力でね、頑張って時間をかけたり、力を込めれば相手の記憶や人格、その人の精神全てを改造してやることもできるスグレモノの力なんだよ。あ、キミは今怯えたね?キミも洗脳されるんじゃないかって、恐ろしくなったみたいだね?でも安心してね、何故かキミだけにはボクの力が全く通用しないんだよ。不思議だね、まあキミはボクの地球上でたった一人の絶対なる運命の人だから、そんな例外になっちゃうのも仕方ないんだろうけど。最初キミの心を操って、ボクの恋人にしようとしたことがあったんだけど、全然通用しなくてね、最初はなんでキミに限って力が通用しないんだって絶望したけど、今となっては洗脳を使わずにキミをボクのものにしろという神からのお告げなんじゃないかって思ってるんだよ、えへへ、やっぱりボクとキミは、神様さえも公認の運命のカップルなんだよ、嬉しいね。また話を戻すけど、キミの彼女…おっと違ったね、『元彼女』だね、あはは、まあボクからすれば、キミの彼女になるべき存在は、キミの生涯においてボクだけであるのは宇宙の真理といっても過言ではないから、厳密にはあの女はキミの彼女だったタイミングは一瞬たりともないはずなんだけど。覚えてると思うけど、あの女はボクに惚れたからといって、キミをわざわざ捨てるような薄情な女じゃないんだ、もちろんボクの宝物であるキミに手を出したことはクソの極みなんだけど、キミもまあまあいい女の趣味をしてるじゃないか、ボクもあの女のことだけは少し評価しているんだよ。キミは女の子に嫌われまくって参っていたところに、あの女と出会ったんだよね。どんな女もキミのことを嫌っている中、あの女が忌々しくもキミに優しくして、しかも結構キミのことをよく見ていて、ちゃんと愛していたじゃないか、もちろんボクのキミへの愛に比べたらミジンコのようなものだけど、敵ながらあっぱれと言いたいところもあったね、でもキミはボクのものだからね、恋敵であることには変わりない。それでボクは、あの女に都度会って、時間をかけて洗脳をかけてやったんだよ。あの女は本当にしぶとかった。ボクに何度も何度も洗脳をかけられているのに、なかなかキミのことを嫌いにならないんだ、むしろどんどんキミと仲良くなって、キミもあの女と仲良くなって、とうとうキミの告白まで承諾して、恋人ごっこまで始めるじゃあないか、所詮ボクとキミの間の絆に比べたらお遊びだとは思っていたけど、それでもボクの心は張り裂けんばかりに苦しかったよ。だってボクとキミは、お互いの初めてを全部捧げ合う関係だからさ、ボクの初カレもキミだし、キミの初カノもボクになるはずが、よく分からない泥棒猫が割って入ったんだからね。キミがあの女に愛を囁いている所を覗き見た時なんか、ボクは全身にガソリンを被って、学校の真ん中で焼死してやろうと思ったくらいの苦痛だったんだよ。でもボクは諦めなかったよ、だってキミはボクの運命の人なんだから、そんな簡単に手放すわけにはいかないだろう?それでね、ボクもなりふりかまっている訳にはいかなくなって、キミを全力でボクのものにしてやろうと、改めて決心したんだよ。ボクも遠慮を止めて、あの女の精神をズタズタに壊して、作り直してやることにしたのさ。さすがのボクも人格が根本から変わってしまうくらいの強烈な洗脳を仕掛けるのは初めてだったから、あの女を完全に壊しちゃってもいいかって気持ちで、本気でやったよ。まあ仕方がないよね?キミを他のメス豚から取り戻すためだもん、そのくらいはボクだって覚悟を決めてやったよ。幸い、あの女はそこそこ心が強かったみたいでね、壊れることもなく、ボクの思い通り、キミを捨ててボクに乗り換えようとするような、男を取っ替え引っ替えするようなクズ女になったってわけさ。もとは一途で、相手を心から愛するような女だったのが、上昇志向が強すぎて、相手をスペックだけでしか判断できないような、周りの男も、自分さえも不幸にする迷惑女に変貌したんだよ。そこまで精神を改造した後に、ボクに惚れるような洗脳をかけるとあら不思議。キミを捨てて、ボクに乗り換えようとするクズ女の出来上がりさ。あはは、すごいだろう、ボクの力は?もはや、キミが好きになった女はこの世に存在しない。あの女は死んではいないけど、中身は完全に別人で、これから先は周りの家族も、友達も、将来の恋人も不幸にして、朽ち果てていくんだよ、あはははは!なんだい、ボクがヒドいことをしたみたいに思うのかい?でもキミも悪いんだよ、あんな女と付き合おうとするなんてさ。ボク以外の女に手を出したから、一人犠牲者が出てしまったんだ。あの女も存在自体が罪だけど、ボクのモノであるという自覚がなかったキミにも責任があるというものだよ。まああの女のことはもうどうでもいいや、もう終わった話なんだから。ちなみに学校の関係者はすでにボクが全員洗脳しているよ。普段はいつもどおりに振る舞っているけど、ボクが命令したり、ボクに危害を与えようとする奴がいたら、即座に身を呈してボクを守ったりして、ボクの意のままに動いてくれるようにしてあるんだ。教室でみんながキミの助けを聞かなかったのもそれのせいだね。ああ、もちろんキミの家族とか、近所の人たちとか、今まで会話したことのあるお店の店員とかも含めて、キミが接触したことが一度でもある人間も、ボクが全て洗脳済みだよ。大変だったけど、キミへの愛があればこのくらいは乗り越えられたよ。だからね、坂本くん、キミは遅かれ早かれ、今日ボクの部屋に来なかったとしても、キミの周りの外堀は、とっくの昔に全部埋まっていて、内堀も埋まって、天守閣まで完全に制圧されていた状態だったんだよ。キミが人生で出会ったことがある人間、少なくともキミが頭に思い浮かぶ人間は、全員ボクの味方だから、いざキミが助けを求めても、ボクとキミが結ばれるようにしか動いてくれないんだよ。さっき交番にキミが駆け込もうとした時も、お巡りさんはすでに洗脳済みだったから、正直なところキミが交番に逃げ込む意味はなかったんだけどね。ただキミがボクを拒絶したことを考えるとなんだか辛くなって、ちょっと心が苦しくなって、少しだけ大人しくしてたんだよね。まあ、すぐにキミをボクの部屋に連れ込むことができたから、気持ちはかなり持ち直したんだけど。ああそうそう、もちろん、キミの家族もボクの手中だから、家に逃げ込んで引きこもっても、完全に無駄だよ。知ってた?キミの家族の協力を得て、ボクがキミの生活を24時間365日リアルタイムで監視と盗聴していたことを?それだけじゃなくて、ボクはキミの家や部屋に寝泊まりしてることもしょっちゅうあったんだよ。キミは全然気づかなかったけど、まあキミの家族ぐるみで協力してもらってたし、時にはキミに睡眠薬を盛ったりして、無防備に寝ているキミに抱きついて添い寝なんかもしていたり、キミの身体を裸にして、ボクの身体も使って色々な『実験』をじっくりしていたんだけどね。本当は、今日に至るまでにキミを犯して繋がってしまおうかと思うことが、7634549464315回くらいはあったと思うんだけど、キミの意識がある時に、お互いケダモノのように愛し合うほうが、初エッチにはいいかなって思ったんだよね。だから、ずっと今日までキミを欲しい想いを我慢してたんだよね、やっと今からキミを犯して犯される最高の時間が待っていると思うと、本当に感動して涙が出そうになるくらいだよ。あははは、坂本くん、怖がってるね?そうだよね?逃げ場がないもんね?ずっとどこかのタイミングで逃げられると思っていたら、とっくの昔に詰んでいたんだもんね、それは怖いよね、ははははは。まあ、言ってしまえばキミとボクは生まれた瞬間から結ばれるのが確定しているのだから、怯えなくても最初から詰んでいたわけで、泣いてもしょうがないんだけどね。ああ、かわいいな、愛しいな。怯えてるキミの顔も魅力的で、またさらにボクの愛が狂って燃え上がっていくのを感じてるよ。もちろんキミの表情は余す所なく全てが国宝級の価値があるのは言うまでもないことなんだけど、特に怯えた顔は、ボクの母性がズクズクと刺激されて、キミを産んでみたくなるくらいなんだ。あ、ごめんごめん、まだボクの力じゃあ、キミを産むことはできないからこれはただの願望に過ぎないけど、ボクみたいな能力が現実に存在するってことは、キミを産み直すような奇跡も、いつかは実現できるんじゃないかってボクは確信してるんだよね。だから、ボクはキミと一緒に叶えたい夢が無尽蔵にあるんだけども、そのうちの一つに、ボクがキミを産み直してしまうってことも、リストとして登録してあるんだよね。えへへ、流石にこれは恥ずかしいけど、これから先、キミがボクのモノである限りは、その夢を叶えたい想いは膨らんでいく一方だし、ボクたちは一心同体の夫婦になるんだから、早いうちに夢は共有しとかないとだからね。色々話して話が逸れちゃったけど、結局ボクが何を言いたいのかっていうと、ボクはもう絶対にキミを離さないし、キミの妻になるし、坂本くんもボクの夫として生きていくのは確定なんだから、これからボクとキミは裸になって、お互いの身体がぐちゃぐちゃに溶けてしまうと錯覚するくらいに身体を交わらせて、ボクとキミの遺伝子を混ぜて、新しい命がボクの中に出来上がるまで愛し合うんだよ。ふふ、今日約束したとおりだね?キミは、ボクと世界一情熱的な性交をすることで、一人前の男になるんだよ。あはは、すごいだろう?ボクはキミを騙してなんかいないんだよ。あっ、ついでにボクは男に興味がないとも言っていたけど、より正確に言うのなら、『ボクはキミ以外の存在に興味がない』んだよ。ボクはキミが男であろうが女であろうが、変わらず愛していると自信を持って言えるからね。ボクは正直、自分が女であることをそんなに好んではいなかったんだけど、キミの子供を産めると分かってからは、むしろ自分の身体が女であることを感謝しているくらいだよ。だってキミの子供を産めるんだよ?ボクとキミが愛し合った結果できる子供を、ボクのお腹を痛めて育てることができるんだよ?そんなの最高に決まっているじゃないか!あははは!うん、確かに今はボクたちも高校生で、それはまだ早いかもしれないけどさ。でも、世間の目とか、法律とかの面倒くさいことは、ボクの能力を利用すればどうとでもなるんだよ。だからね、そろそろボクも待ち望んだキミを前にして我慢するのがとても難しくなってきたんだよ。今ボクたちはこの部屋に二人っきりで、当然邪魔者もいない、つまりこの密室はボクたち二人だけの愛の空間なんだよ。坂本くんはまだボクへの愛に目覚めていないと思うけど、ボクとキミは運命の赤い糸でグルグルに結ばれているんだから、ボクに夢中になって、ボクがキミに抱いてるのと同じくらいの愛を育んでくれるのは明白なんだよ。だから安心して、ボクの愛に溺れてしまってもいいんだよ。ボクはキミの愛が重いほど嬉しいし、キミにならボクは何をされてもいいと思っているんだから、遠慮はせず、全力で歪んだ愛をボクにぶつけて狂っていってほしいな。ああもうそんな表情をするなよ、身体が疼いて早くキミと一つになりたい欲求で頭がいっぱいだよ、もう我慢の限界だ。今からキミをブチ犯してこの昂りを鎮めさせてもらうよ。当然避妊は全くしない、キミの全部をボクの身体で受け止めて、二人の愛の結晶ができるまで止めないからね。さあ坂本くん、ボクはキミを世界の誰よりも愛してるよ、ボクの全てをキミにあげるから、キミの全てをボクにちょうだい!あははははははははははははははは!!!!!」





「うあ………ひ……ひぇ……………ひ………」




俺はおぞましい狂気の濁流に呑まれて、身体中に痙攣を起こし、言葉にならないかすれた声を漏らすことしかできず、ただただ恐怖で身体を震え上がらせていた。



「んー?


泣いてるキミも、素敵だね♡


涙も美味しそう」



霧崎は俺の涙を嬉しそうに舐めてくる。 



こいつは人間じゃない。


人間の形をしているだけで、どこか恐ろしい深淵からやってきた、化け物だ。




霧崎は蕩けた顔をして、俺の視界が埋まるほどに顔を近づける。



「坂本くん、愛してるよ。


早く一つになろうね?」


俺がどんなに泣き崩れても、霧崎は恍惚の表情を崩さなかった。



霧崎と俺の唇が、重なる。


舌が俺の中に入ってくる。



こんな化け物に犯されているのに、俺の身体は霧崎を女として認識してしまっている。


全身が、霧崎を犯す体制に入ってしまった。



俺は霧崎の唾液を呑み込んだ瞬間から、身体の奥底から湧いてくる肉欲に耐えきれなくなり、自分から霧崎の舌に絡みついていった。


「んふ♡」


霧崎の悦びが、舌を通して直接伝わってくる。



俺は両手で霧崎の胸を揉みしだく。


霧崎は、俺の股間をまさぐる。




もう、俺達は止められない。


この狂気は、俺と霧崎が死ぬまで、終わることはないのだ。



「てめえ…いい加減に、しろっ!」



俺は霧崎を、乱暴にベッドに押し倒す。


「あっ♡」


そのまま服を全部脱ぎ捨て、霧崎の服も破り捨てる。




霧崎の裸。


その白い肌と、魅惑的な局部。



俺の正気は、さらに遠ざかっていく。





「くそっ…クソがぁ!このバケモンめ!」



俺は悪態を吐き捨てて、霧崎の足を掴む。


滑らかな白い足の感触が、さらに俺の正気を削っていく。



霧崎の恐怖と欲望に染められて、半ばヤケクソになっているせいか、自分の行動が止められない。



霧崎は、今までで一番妖艶な笑顔で、俺に言った。



「いいんだよ。


欲望に身を任せて、ボクを滅茶苦茶にして。


全部ボクの愛で、受け止めてあげるから♡」




俺は霧崎に抱きしめられ、そのまま欲望のままに霧崎を襲った。



「くっ…うう、霧崎…!」


「ああんっ♡」






そして、俺達は結ばれた。



もう何もかもが、どうでも良くなった。



霧崎は俺の全てを受け止めて、俺は霧崎の全てを貪り尽くした。


その反対に、霧崎も俺を貪り尽くした。



お互いがお互いの身体を使って、快楽に溺れた。



俺は、霧崎に絡め取られ、深い狂気に溺れてしまった。



もう、逃げられない。




いや、霧崎が俺に目をつけた瞬間から、俺の人生は詰んでいたのだ。











======

あとがき・解説



イケメンを装っていた女に迫られ、性的に食われてしまう話。


ユーリの狂気に、主人公の坂本君も狂わされてしまったみたいです。

一応後日談的に、もう一話だけ続きます。


ユーリの腕力が強いのは、洗脳の能力を応用して、自分自身の腕力のリミッターを外す自己暗示をかけているからです。

これによって、ユーリは女性の身体でありながら、本来の力をはるかに超える力を発揮することができるようになっています。



愛の重い描写にありがちな、ギチギチの長文セリフ。

自分自身書いているうちに、正気がゴリゴリ削られそうになるのを感じました。


多分かなり読みずらいので、飛ばしてほどほどに読むのがいいと思います。



それはそうと、こんだけの分量を一切噛まずにまくしたてるユーリの姿を想像すると、結構シュールな気がします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る