断片20240621
どれだけ苦しくても生きることからは逃れられない。死ぬという手段によって逃れることができると思いがちだが、死によって意識を失うその瞬間まで生は続いているのだし、死んで生きることから逃れたとしてもその時にはもう意識がない。死という祝福を受け取るときには、もう私は死んでいて、私はもういないのだ。死を受け取るのではない、ただ生を手放すだけだ。死をその手に掴むことはできない。
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絶望を経験してからが人生のスタートだ。漠然とした望みも期待も勘違いも自惚れも、すべて打ち砕かれて未来が消滅したと感じたその瞬間から人生は始まる。それまでは、そもそも始まってすらいなかったのだ。
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成功とか成長とか自己実現とか、そういう言葉たちが持っている意味が年々狭くなっているような気がする。意味が狭くなった言葉は、その言葉を使う人の生き方すら狭くしてしまう。言葉の意味を狭くしている社会がある。言葉の意味を狭くしている人がいる。それらに反逆しなければならない。
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いつも吐いている人がいる。
「なぜあなたはそこまでして吐くのですか」
「絶望を吐き出すために」
「喉を痛めるだけです。絶望を吐くことなどできません」
「いつかきっと吐けるはずだ」
「食べたものまで全部出してしまって……夢が叶う前に飢えて死んでしまいますよ」
「私が食べたものも絶望の一部だ」
「仮に絶望を吐き出せたとして、あなたには何が残るんですか」
「絶望がここにあったという事実が残る」
「それが何になるのですか」
「それが希望になる」
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