何に使うの? 和十尊君

 和十尊君が年季の入った物凄くボロいアパートを見つけ、僕が遊びに行った一週間後、サークル室で彼と二人きりになった。


「ほい」

「どうしたのこれ?」

「おう。これ買ってきたから、また遊びに来いよ」


 そう言って紙袋から買ってきたものを取り出す。


「チーかま、チータラ、チートロに藁人形。これがあればバッチリ遊べるだろ」


(チートロって何? チーズにトロ? っていうか藁人形って何?)


「うーん、和十尊君さぁ。あのアパート何かいるよね?」

「おう。だから、谷っちの顔をこの藁人形に貼ろうと思ってな」


(僕は生贄ですか?)


「それなら違う所に引っ越しした方がいいよ。あのアパートの契約、不動産屋さんへ行って、解約した方がいいんじゃないかな?」

「ん? 不動産屋? 何を言ってるんだ谷っち」

「えっ、アパートの契約のことについて言っているんだけど」

「契約なんかしとらんぞ。一階が空いていたから、そこで寝泊まりしているんだよ」


(この間『見つかった。アパート』って言っていたのは不動産屋さんを介さずにアパートの空き部屋を見つけたのね。しかも無断で使って、不法侵入だよ。それ)


 和十尊君の規格外の行動に、僕は開いた口が塞がらなかった。

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