親戚なのか? 未唯ちゃんは
僕は鰐中さんと和十尊君と一緒に楽器屋さんに行くことになった。僕は
ショッピングモールの二階へ上がると、和十尊君が僕達に言う。
「あそこにアイスキングのハンカチあるな。三百円か――」
「アイスキング?」
「はっ? 知らんのか、アイスキング。谷っちは何にも知らない馬鹿なんだな。氷の王様だよ、氷王。ほら、あのポップに書いてあるだろ」
僕は和十尊君が指を差した方を見る。
(あのね、和十尊君。あれ、氷王じゃなく、水玉のハンカチだよ)
きっと和十尊君は親の都合かなんかで海外生活が長くて、日本の漢字に慣れていないのだろう。
「ターニーはどんなの買うか決めてるの?」
「いちおう動画サイトでスネアの音を聞いてみて、
「へえ」
「鰐中さんは?」
「あちき? あちきはテレキャス持っているから、ストラトを見にきたの」
「なあ、お前ら。楽器の見分け方は豪華客船に乗ったつもりでオレに任せろ」
(和十尊君は大船に乗ったつもりでって言いたいのかな? 泥船のような気がするんだけど)
そんなことを話しているうちに楽器屋さんに到着。
「ギターコーナーあっちだね」
鰐中さんにそう言うと、彼女は別の所を見ていた。
「あっ! ミッちゃん!」
鰐中さんは、鍵盤コーナーにいる金髪碧眼美少女に近づいて声をかけた。
「あっ! ウメ!」
「どうしたのこんな所で?」
「キーボード? シンセサイザー? それを見にきたの」
「そうなんだ、ピアノじゃないんだ」
「ブラッドヴァニアの曲が気に入って弾いてみたくて」
(ウメ? ひょっとして鰐中さんの下の名前はウメなのかな?)
「鰐中さん知り合い?」
「うん、親戚の
(ん? 途中で友達挟んでいるよね? っていうか従姉妹の叔母さんって叔母さんでいい気がするんだけど……。あと妹の子供は甥か姪だよ)
「ウメ、この人は?」
「この人はターニーこと谷川君。バンドメンバーでパートはドラムなの」
「えっ、そうなんですか! ひょっとしてゲーム音楽とか叩けます?」
(ゲーム音楽って難しいよな……、いっぱい練習すればいいかもしれないけど)
「うーん、ゲーム音楽かぁ。叩けないかな」
「そうですか……、ブラッドヴァニアをやりたいんだけどなぁ」
「谷っち、男なら叩けないって諦めるのはカッコ悪いぞ」
「ごめん」
「まったく凡人はこれだから」
(たしかに綺麗にベースライン弾きながらノリも醸し出している和十尊君は凄いよ)
そんなこんなで未唯ちゃんも一緒に楽器を探すことになった。
◇
「ストラト? バンドでどんな曲をやるの?」
鰐中さんはギターコーナーにいる店員さんに聞く。
「うーん。歌ものとブラッドヴァニアっていうゲーム音楽をやりたいんです」
「ブラッドヴァニアか。それならSSHのストラトがいいね」
(SSH?)
「谷っち、SSHが分からないって顔をしているな」
「うん」
「ふん、まったくこれだから。いいかSSHってのはな、
(たぶん違うと思うよ。その高校でギター製作はしていないんじゃないかな?)
「ははは、ワトソンは馬鹿だなぁ。SSHって
(それも違うと思う。店員さん違いますよね?)
「SSHはピックアップが
和十尊君が堂々としているのに対して、鰐中さんは恥ずかしそうにしている。
「エフェクターは――そうだな。俺個人は
「あちき、チューブスクリーマー持ってる!」
「じゃあ、オレの分のシュークリーム買ってくれ」
(スルーだな。スルー)
結局、鰐中さんはSSHのストラトを購入。僕も予算内で良さげなスネアを買った。ちなみに未唯ちゃんはカタログだけ貰って、後でいろいろ調べるらしい。
「ねぇ、未唯ちゃんだっけ?」
「何ですか? 谷川さん」
「綺麗な金色の髪だけど、ハーフだったりする?」
「へへへ。これ、フェデレイション・オブ・セイント・キッツ・アンド・ニィヴィス生まれのママのお陰なんです。パパは地球人ですけど」
(それって鰐中さんと親戚じゃなくて、和十尊君と親戚なんじゃない? 発想が宇宙人だし)
「オレも千代田区と港区のハーフだぞ」
(うん、東京だね)
そんなこんなでお買い物は無事に? 終わる?
「じゃあ、ミッちゃんもうちのバンド加入ってことでよろしくね♪」
「それホント? やったー!」
こうしてカウベルタンバリンは四人組のバンドとなった。
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