第3話 初めてのお誘い
友達―
友達なら、一人多くなったってこまんねーよな。
この日から、俺の生活が180°(いやもっとそれ以上)変わることになるのだった。
次の日――
ピピピッ―ピピピ―
目覚まし時計の音で俺は鉛のような体を起こす。こんな毎日が辛い…一生寝ていられたらどれだけ楽なことか…
「あら紬ちゃん、おはよう。」
母親ですらちゃん付けなんてな…冗談は顔だけにしとけっつーの。
「おはよう。母さん。今何時〜?」
ご飯が並べられてあるテーブルの前に座る。
「6時半よ〜いつもよりちょっと早くてびっくりしたわ〜。どうしてこんな早いのよ?」
俺だってこんな早くから起きたくねーよ。と心のなかでは思いつつ
「待ち合わせ。」
とボソッと。そしてまたすぐパンを頬張る。
父親は出張であと2週間は帰ってこない。母親はデザイナーで家で仕事。兄貴は…大学の講義が昼からとかで多分まだ夢の中だろうな…ほんとに許せない。
「でも、紬ちゃんが誰かと一緒に〜なんて珍しいわね〜!誰となの?もしかして彼女?」
「そんなんじゃねーよ!ただの友達だよ!!」
「あらそうなの?お母さんちょっと残念だわ〜」
そう、あいつとはただの友達なんだよ!
俺は食器を台所に戻して部屋へ戻った。
6時47分―家を出るには少し時間があった。俺はベッドに寝転んでスマホを開く。
少し時間が経ったあと、一通のメッセージが届いた。
こんな朝っぱらから誰だよ…
うっすら予想はしつつアプリを開く。
『先輩!今日朝一緒に行くって覚えてますよね?!』
案の定市川からだった。昨日なんか別れ間際に勝手に連絡先入れられたし…
『あー覚えてる覚えてる』
『ほんとですか?集合場所は宍野川駅前ですよ!( ´∀`)bグッ!』
駅までは歩きでだいたい十分ぐらいだから…もうそろそろ家出ねーとな。
俺はカバンを背負って部屋のドアを開けた。
「紬ちゃん、これお弁当。」
「ありがと。んじゃ行ってくるわ。」
「いってらっしゃーい紬ちゃん!お友達のこと聞かせてね〜。」
はぁ?!ちょっ!言うわけねーだろ!会わせもさせんよ!
と言える時間があれば言っていた。
――――――――――――――――――
家から少し行ったところの桜の木が風で揺れて花びらを落としていた。
こーいう時ってだいたい急いでる女の子が角から走ってきて―みたいな王道シーンが始まるんだが…まあこのクソ陰キャにぶつかってくる奴なんていねーよ…ってか。 自分で言うとだいぶ辛いな。
…とまぁ結局いい意味でも悪い意味でも何事もなく駅に着いたんだが、ここで大問題が1つ。
「西口か東口…どっちだ?」
そう、初めての待ち合わせあるある1位(俺調べ)
場所にはたどり着いたんだけど相手がいない!問題である。
さて…どうするか。本来の俺なら関係なく来た電車にすぐさま乗るんだが、今回は流石に…か。
今俺がいるのは西口。市川がまだ来てなかったなら東口に行けば入れ違いになる可能性が…市川が来るまでここで待つか…?
ここで、(少し)機械に疎い俺は|ようやく気付いた。
これ《スマホ》があるじゃねーか!
『市川、今どこにいるんだ?』
とりあえず送ってみたが、返事は…そんなすぐ来るわけないよな。
『先輩!もしかして西口ですか?!』
『すみません!私としたことが!東口に来てましたぁ!!』
『(泣いてるスタンプ)』
やっぱりか。市川は30分前ぐらいから待ってそうだもんな。
『市川、お前はそこにいろ。俺が行くよ。』
『いえいえ!大丈夫ですよ!私が行きますので!先輩はそこで待っててくださいね!』
『そうか?わかった。』
――――――――――――――――――
来ない。いつまで経っても来ない。
あらかじめ俺も結構余裕をもって来ていたからいいものの、このままだと遅刻だぞ。
『市川、大丈夫か?』
ピリリリリリ!
市川からの電話だった。
なんで急に電話なんだ…?
と疑問に思いながら電話に出る。
「せんぱいぃぃぃぃ!だずげでぐだざいーーー!」
安定の声量だな…スピーカーにしてなくても普通に聞こえるぞ…
「どうした?」
「私、方向音痴すぎて迷子になっちゃいましたぁぁぁぁ!!」
なるほどな…だからいつまで経っても来なかったのか…って迷子!?
「とりあえず周りになんかねーか?それか東口まで戻れるか?」
「…!はい!なんとかして元いたとこまで戻ります!大丈夫です!」
ほんとに大丈夫か…?これ…
「俺がそっち行くから、着いても一歩も動くなよ。」
「はい!わかりました!この市川遥、絶対に動きません!」
まぁ行くか。あの感じならなんとか東口までは帰れてるだろ。
俺は東口まで少し急ぎめに歩いた。もしかしたら無意識に市川を心配してたのかもな。
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