6:星語(ニロ-バベル)

「ノヱッ!サハ ノッネ イシ?」


 と話しかけてきた彼女。

 しかし生憎、意思の疎通がはかれそうにない。

 私は軽く頭を下げ、彼は手をスッと上げ挨拶した。


「サハ ルコ サハヲ゛ィイモ チヱッワ゜ュンチ゜ セイ メンチ゜ イシ, サハ セイ クヱコ イシ?」


 と、微笑みながら続ける彼女。

 私は此方の言語について、最低限の話術しか覚えていない。


「ツムグ、言語の意味はわかるんですよね?」

「あぁ。テインは分からないんだっけか?」

「一人称辺りは聞き取れるのですが……」


 此方がそのように戸惑っていると、彼女はさらに続ける。


「イン、サハ ヒーキ ヒッキ゜ サッワ゜ ネ゜ャ?ニロ、ヱッケライ、ネ゜ロソ、ツミンワ……」


 私が困っていると、ツムグは彼女に向かってハンドサインをしながら、申し訳なさそうに話した。


「悪い、ちょっと待っててくれないか?」

「っ!アーク゜~」


 ハンドサインが伝わったようで、彼女は微笑みグッドサインを見せた。


「あの、彼女は何と…?」

「とりあえず始めは挨拶してた。怪我はないかとか聞いてくれて……そんで、今は使える言葉は何かと聞いてる。」

「なるほど……」

「テインがさっき言ってた、天紋ヘブンコードってのは伝わらないのか?」

「えっ!?ど、どうでしょう……」


 天紋ヘブンコードは、この世界のあらゆる言語の大元とも言われている。しかし、それを活用する地域はほとんど無く、強いて言えば精霊種族の中でも長寿な人たちが使えるかな?くらいだ。

 とはいえ、頑張ってみることにした。


「えっと……い、イロ ヘブン-コード サッワ゜……トゥン……」


 拙い星語ニロ-バベルを使い、天紋ヘブン-コードは使えると言うことだけは伝えた。


「ヘブンコード!?ヨッメュ……イロ ヘブン-コード サッワ゜ トゥンネ……」


 だが、流石に使えないみたいだ。文章の作りが似ているので、否定文は表情と共に見れば分かる。

 などと考えていると、彼女はツムグを指差しながら話し始めた。


「ノ゜ロル゜セロ、サハ サッワ゜ ニロ-バベル トゥン?」

「え?あぁ、オレは全然喋れないな。」

「サハ ナハ ノハ メワランチ゜?」

「魔術の1つを使ってるだけなんだ。」

「イロ ワュッ~」


 なにやらやり取りをしている。

 どうかしたのかと聞いてみると、


「オレは星語ニロ-バベル?を使えないのかってのと、今はどうやって聞き取ってるのかだって。」


 と、すんなり答えた。


「……いや。いやいやいや。」

「「?」」


 二人とも私を見てキョトンとしている。

 だが、よーく考えてほしい。

 彼がさらっと会話しているから気づいていないのかもしれないけれど……


「会話、成立してません?」


 本日3度目くらいの沈黙が流れた。


「あぁ、そうじゃん。」

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