3:意思疎通
「――これで儀式は終わりです。成功したはずですが……」
〝祝福の儀〟により、彼との間に強い縁が生まれた。
彼には私の祝福が、私には彼からの名前が施された。
「祝福っていうやつで、
「あっ、え、えと、私の力では、
「〝何かしら〟って。ランダムなの?」
「はい。神の祝福は日本語で『
「俗だな。で、何を授けられたんだ?」
「うぅん……授けられるのは、その人の人間性に所縁がある魔術なので……」
この人の人間性……出会って早々なので、はっきりとは分からないですね。
「〝念写〟を試しましょう。」
「カメラとか絵のやつか?」
「まぁそうですね。とはいえ、流石にそんな道具ないので、また結界を編みますが……」
「そうか。ちなみに、オレの血とかじゃダメなのか?魔術だとかには、なんかそういうイメージあるけど……」
「えっ、良いには良いんですけど……ヘタすると禁忌とつながるので……」
こっちの世界の法律や掟に触れてしまう可能性が大きいので避けたいですね。
「ところで気になってたんだけど」
「はい?何でしょう?」
「儀式の最後に唱えた、聞いたことない発音のはなんだ?」
「あぁ、あれは
「それに付随してもう1つ。さっきテインも言っていたけど、オレこっちの言語知らないんだけど……」
「すぃ~……」
やばい、そうでした。
「さっき落ちてきたときに使ったやつって、オレにも使えるのか?多分だけど、あれって言語じゃないよな?」
「っ!」
そうです!それです!!
「あ、でもさっき言ってた魔力ってやつ……オレそれがないんだったな。」
「いえ!魔力は外付けでも保有できるので!ちょうど今は私が長い間着ていた白衣があるので!」
というと、彼は自身が着ている白衣をみながらこう聞いてきた。
「……これ最後に洗ったのいつ?」
また流れる暫しの沈黙。
「天界では時の概念はないので。」
「おうそうか。とはいえ」
「天使の汗は綺麗なので。」
「……なるほど、じゃあ汗が染みてるくらいには着て」
「あぁ~あぁ~あぁ~っ!!」
「うぁっうぁぃっうぁぇ……」
彼の胸ぐらをつかみ、思いっきり揺さぶる。
「待てこれ取れたら裸なんだぞやめろって!!」
☆☆
「いいですか?先ほど唱えた『ケユチ・ヤ゜ロネシッヲィヘク』……これは天使の白魔術です。」
先ほどまではそれなりに他人行儀な感じで接してましたが、なんかもう面倒になりました。まぁもういいでしょう。
「落ちてくるときに私が使った『ヌミア』と、天界で天照尊が使われていた『ヌニア』は同様の物ですが、あくまでも別の物です。」
「どっちも同じ意味合いみたいだしな。音も似てるし。」
「まぁ、そうですね。声と神の声ですので。そして、こちらで使われているのは……えっと、確か共通語で『ヌフィラリッネ』という魔術です。この発音は国によってことなるので、読み方は一概にできませんが。」
「意思疎通か……そのまんまだな。」
たしかにそうだ。とはいえ、あまり難しくても不便だろう。
「まぁ、他の魔術もわりとそのままの……」
「……?どうした?」
ちょっと待ってほしい。
「え?いや、いま……」
「うん?」
「『ヌフィラリッネ』ってどういう意味か分かりますか?」
「え?意思疎通とか会話って意味じゃないのか?」
「いや、その、あってるんですけど……」
平然としている彼。私は少し考え、彼に声をかける。
「……ヲゥヱッコ。」
「え?おう、こんにちは。どうした急に。」
「トタ゜。」
「よろしく……なんだ改まって。」
「すぃ~……」
やっぱりだ。間違いない。
「え、なんでわかんですか?」
この人、こっちの言葉を理解している。
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