第4話 ポーションを撮影動画に

武器屋を出てから1時間後

俺は中心街を歩き回った。


そこは広大な市場だった。

色とりどりの屋台が立ち並ぶ中、俺はいつの間にか目を輝かせながら歩いていた。


すると

ある看板が目にとまった。


希少きしょうアイテムのポーションを売ると言われる薬屋だ。

暖簾のれんをくぐり、中に入ると、店主がこちらに目を向けた。


「いらっしゃい。今日は何をお探しですか?」


俺は胸を高鳴らせながら

「ポーションを一つください」



「ポーションですか。これは高価なものですよ」

店主は棚から美しいボトルを取り出し、慎重に渡してくれた。


おお..高級感が伝わる!

俺は高級品と言えばアップルのiPhoneとかMacとかをイメージする。

だが、これは、それをはるかに超越する高級感だ。

さらに深いエメラルドグリーンの魔法の輝きにすごく魅了される!


「これ、いくらですか?」

俺は興味本位で店主に尋ねた。


「300ジュエリーになります」

「う!」


日本円にすると300万円か…

めっちゃ高額だな。


「まあ、一般の人が買うような物じゃないですからね。興味を持ってもらえただけでも、私はうれしいですよ」

「あの、ポーションってもっと上のランクありますよね?」

俺の興味は増すばかりだ。


「もちろんです。ポーションよりもさらに大きな回復量のハイポーションですが1000ジュエリー。それから、当店でも1本しか置いてない、全回復できるエクスポーションがございます。こちらは3000ジュエリーで取引させて頂いております」


「3000ジュエリー!」


3000万円かっ!


店主はにっこりして

「はい、これでも安価でやらせて頂いている方なんですよ。何と言っても、この地域は勇者様のご活躍で、魔族の支配が及ばないところです。交易路が確保されているから、商品にかける保険も安く抑えられるのですよ」

「なるほど..」


(そういえば、俺の所持金ってまだ1万ジュエリーあるんだよな。その他に初期で貰える7ジュエリーがあるのか..)


俺の所持金はまだ1億円残っている。


(もう使わずにとっておこう。この先に何が起きるかわからない)


と思ったものの。


(そう言えば、今のこの状況。勇者が魔王に敗北濃厚であれば、ここもいずれ戦火に巻き込まれるだろう。だったら金なんか持っていても仕方がない。むしろ、このポーションを手に入れて、備えた方がいいかも知れない)


俺は運が悪い男だという自覚がある。

厄災はあっという間に、目の前に来ることだろう。

そう確信した。


店主は再び並べたポーションを布でかぶせ始めた。

「こちらの商品はあまり多湿たしつな所に長時間は置けませんので、そろそろ倉庫に戻させていただきますよ」

「...」

「お客様、いかがされました?」

「それ買います」

「え?」

店主はびっくりして俺の方を見た。


「ポーションを10本、ハイポーションを3本、それから」

「お客様、あの..」

「エクスポーションを1本ください」

(ご、合計9000万円...)


「ご冗談じょうだんを」

「じょ、冗談なんかではありません。買います」

「しょ、承知しました」


俺はスマホ決済で9000万円分のポーションを購入した。


残金は1000万円ちょっとか...

50億円あったのに随分と使い込んだな


俺は店を出ると、あることを思い付いた!


「そうだ、これらの超高額商品を買ったことを動画にして投稿すれば、バズるんじゃないか。異世界のみたいで素敵すてきじゃないか!」


早速、俺は近くの静かな場所に移動して、スマホスタンドを取り出した。

そして、YouTube用の動画撮影を始めた。


俺はスマホのカメラに向かって

「みなさん、こんにちは!今日は特別な企画です。この異世界で高額希少アイテムの1つであるポーションを買っちゃいました。これ全部でお値段は、なんと!9000万円です。早速、開封してみたいと思いまーーす!」


俺は慎重にボトルのふたを開け、一滴を手のひらにらした。

あわいい光がそこから広がり、まるで小さな星が誕生したかのような美しさだった。

光は手のひら全体を優しく包み込み、かすかなかがやきが空気中にただよう。

周囲の色彩しきさいが一瞬であざやかさを増し、魔法の力が感じられる瞬間だった。


撮影中であることを忘れてしまうほど、うっとりさせられる。


「見てください!この回復魔法が放つ神秘的な美しさ」


そして、俺は死刑が執行された時に首のあざにポーションを一滴垂らした。

瞬く間に、首のあざが全て消えた。


「この驚異的な効果!これは間違いなく本物です。」


カメラに向かって満面の笑みを浮かべた。

「これからも異世界の驚きの商品を紹介していきますので、チャンネル登録といいねをお願いします!」


それから、最後に締めの言葉を述べる。


「どうして、こんな大金を出してまで、ポーションを買ったのか?と言いますと。この世界では、勇者とその仲間が、魔王と命懸いのちがけで戦っているんですよね。だから、俺も戦わないといけないと思ったんです。俺なんか、彼らに比べたら、大した力もありません。それでも、ポーションを持っていたらいざって時に役立つでしょ。街が戦火に巻き込まれた時、街の人の救命活動とかってできるし」


(ん?俺は何を綺麗事きれいごとを言っているんだ?)

正直、こんなこと言う自分が信じられなかった。


俺は常に自分さえ、よければ正直どうでも良いって生き方をしている。

生前もそうだった。


だから、勇者と魔王の戦いなんて人ごとのように考えていた。

ただの娯楽みたいなもんだろって。

魔王に負けた勇者パーティなんて、本当にかっこ悪いと思った。

挙げ句の果てに、勇者が引きこもってしまうなんて。


でも、そうではない。

これは戦争だ。


だから、勇者やその仲間のリアナって人も必死にみんなを守ろうとして戦っている。


撮影を終えると、カメラを片付け始めながら、俺はあれこれと考え事をした。

撮影した動画を投稿したが、相変わらず1回も再生されない。


しかし、自分の気持ちに整理をつけることができる貴重な動画になった。


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