第2話 VTuber異世界転生2
老人は悲しそうに首を振った。
「リアナ様は1年ほど前、勇者様とともに魔王討伐に向かった。しかし、どうやら2ヶ月ほど前になるだろうか。魔王に拘束されて、闇帝国の牢屋に監禁されてしまったのじゃ」
「え?それは大変ですね..」
「うむ..」
「なるほど…で、肝心の勇者様は?他の仲間たちはどうなったのですか?」
「勇者のレオンハルト様はリアナ様を見捨てて、逃げて来たそうじゃ」
「え?勇者が仲間を見捨てて逃げてきた?勇者をそこまで追い詰める魔王ってそんなに強いのですか?」
老人は
「うむ。想像をはるかに超える強さだったと聞いておる」
「う…」
「勇者様は自分の城に戻っておられる。しかし、魔王の実力を思い知らされ、
「…」
(おいおい、勇者のくせに..。しっかりしてくれよ。まあ。俺も人のこと、どうこう言える人生じゃなかったけど..)
俺はため息をついた。
「勇者様は時々、死にたい、と仰っているらしい」
「...」(えー、まじかよ…。人間界やばくねーか?)
「あの勇敢なレオンハルト様を、あそこまで追い詰めるとは。魔王はとんでもない強さだということじゃ」
「…」
「勇者様と3名の仲間、重戦士ガルド様、
「な、なるほど..」
「もし、勇者パーティがいなくなったら、人間界は終わりじゃ」
「む...」
「他2人の勇者パーティである重戦士ガルド様と狼戦士フェンリル様は現在、行方不明じゃ。生存は絶望視されている」
「何だって!?そ、それって普通にやばいですよね?じゃあ、そのリアナ様って人が殺されたら人類終わりですよね?」
「無論じゃ。魔王に収監されているリアナ様だけが、唯一の希望なのじゃよ。勇者様は大怪我をされている上に、精神的にも戦える状態ではないと聞く。本当に心配なのじゃよ」
「今のこの状況って、心配とかっていうレベルじゃないですよね!?リアナ様を助けに行かないとやばいじゃないですかっ!」
「確かに、そうじゃ」
「じゃあ、みんなで」
「…」
「ど、どうされたのですか?」
「すでに手を尽くした。ダメだったのじゃ」
「は?」
「勇者レオンハルト様の母国、アルカディア王国では全兵力の90%に相当する2万もの兵をリアナ様を救出するために遠征したのじゃ」
「え?」
「しかし、帰って来た者は一人もいなかった」
「!!!!」
えーーーっマジかっ!ヤバすぎるだろ!
「リアナ様は人間界で唯一の聖剣士。彼女がいない今、魔族がいつ攻めてくるか分からない」
「…」
俺は
(おいおい。この街どころか、人類全体がやばいだろ! 人類最後の希望が魔王に監禁されているなんてさ)
「皆、恐れおののいているんじゃよ」
「それはそうでしょ!彼女を助け出す方法はないのですか?」
俺は前のめりになった。
老人はしばらく沈黙した後、ゆっくりと答えた。
「助けに行く勇気と力がある者がいれば、話は別じゃが…」
「なるほど...いるのですか?その勇気のある人って」
「いない」※きっぱり
「なるほど….」
「闇の帝国は恐ろしい場所なんじゃよ。魔王直属の都市国家じゃ」
老人の話を聞いた後、俺はしばらく黙って考え込んだ。
俺はどこに行っても悪運しかない、と人生諦めモードに突入するかと思いきや。
しばらくすると、生前によく体験した、どこからともなく根気のない自信が湧いてくるのであった。
決意を込めて拳を握りしめ、力強く言葉を発した。
「俺は
俺はなんだか誇らしげに老人に向かって言った。
「な、なんと」
びっくりした老人は俺の目を見つめた後、希望ある表情に変わった。
俺は続けた。
「俺は再生回数ゼロの底辺YouTuberだった!」
「むう…」
「だけど、この異世界に来たのには、きっと何か意味があると思っている!」
「おお」
「俺は自分をやり直したい。無力な、そして底辺の自分から脱却して、本当の俺を見つけ出すんだ、リアナ様だっけ?…を救い出して、この街に再び希望をもたらしてみせる。それが俺の新しい人生の始まりだ!」
老人は俺の決意を聞いて、にっこりと微笑んだ。
「お前さん、本当に勇敢な心を持っているんじゃな。ありがとう、その気持ちだけで十分嬉しいよ。ただ、無理はしないでくれ。闇の帝国は恐ろしい場所じゃ。自分の身を守ることも大切じゃからな」
老人の言葉に俺は深くうなずき、決意を新たにした。
「ありがとう、必ず、リアナ様を救い出してみせます」
(俺はいったい何を言っているんだ?そんな約束してどうするんだよっ!?)
と葛藤するがまあ、俺みたいな底辺な人間もいずれ魔王と戦わざるを得なくなるよな。きっと。こっちでも冴えない人生だったな…
老人はにっこりと笑いながら
俺に街の歴史やエピソードを語り始めた。
「ここフロレンシアは、古くから魔法と剣術の両方が栄えてきた街なんじゃ。遠い昔、この地には強力な魔法使いと勇敢な戦士たちが住んでいて、彼らが力を合わせて闇の帝国の侵略を何度も退けてきたんじゃよ。街の名前『フロレンシア』は、繁栄と平和を象徴する言葉から来ているんじゃ」
老人は目を細めながら、続けた。「この街にはたくさんの英雄たちの物語があるが、中でも一番有名なのは『光の騎士団』の伝説だ。彼らは魔族と戦い、街を守り続け
「街を守り続けた。リアナ・ミスティアも、その光の騎士団の
老人は少し寂しげな表情を浮かべた。
「だが、今はその希望が闇の帝国に奪われてしまった。街の人々は不安と恐怖に包まれているんじゃよ。リアナが戻ってくることを信じて待っているんじゃが、現実は厳しい」
「いろいろ、ありがとう。爺さん」
「いや、なあに」
老人はにっこりと返した。
「ところで、爺さんの名前は?」
「わしか?」
「ああ」
「セオドアと申す」
「ありがとう、セオドアさん。俺は行くよ」
俺はセオドアという老人の話を聞きながら、フロレンシアの人々の苦しみと希望をわずかながらも共有できた気がする。
それに現実を知った今、すごい絶望的なはずなんだけど。
生前の
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