第21話 【杏奈視点】LINE
「おはよー、アンナちゃん」
「おはよう、モアナちゃん」
バスの中。いつもと同じように後ろの席、モアナちゃんの隣に座る。
「ね、スマホ買ってもらった!?」
「うん」
「いいなあ! モアナもスマホ欲しいんだけど、お母さんが高校生になってからだって許してくれないんだ。いいなアンナちゃん。今度持ってきて!」
「……学校に持って来ちゃ駄目なんだよ」
小学校はスマートフォン禁止だ。
「だよねー。あーモアナも欲しいな、スマホ」
モアナちゃんが「すーはスマホーのすー、まーはスマホのまー」と変な替え歌を歌い出した。
「スマホといえばだけど、アンナちゃん、お兄さんとLINEとかする?」
「うん」
「きゃー! いいなあ、LINE! やっぱスマホ、中学生になったら欲しいよお! モアナもLINEしたいっ!」
そんなにLINEて、楽しいのかな?
「ね、お兄さんにどんなLINE送ってるの?」
「まだ送ったことないよ」
「えー! 駄目だよアンナちゃん!
私はまだお兄さんとLINEしたことない。つい先日アドレスを交換したばかりで、何も送ってないのだ。
「お兄さんとお付き合いするんでしょ? 中学生になったら告白だよね!? そして高校生になったらプロポーズだよね!?」
「そこまでは言ってないよ、モアナちゃん」
「おはようのLINE、お昼ご飯食べたのLINE、今から帰るよのLINEしなくちゃだよ! そうやってマメなLINEが男心をくすぐるんだから!」
「詳しいんだ。モアナちゃん」
「ママと一緒に大人のドラマ見てるからね! 恋愛については中学生より知識が上かもだよ、アンナちゃん!」
「すごいんだ。モアナちゃん」
「ふふ、男心も乙女心もバッチリだからね。帰ったらすぐにお兄さんにLINEするんだよ。ただいまって。わかった? アンナちゃん」
「うん」
お家に帰ったらLINE。忘れないようにしよう。
♡ ♡ ♡
「た……だ……い……ま」
スマホで書くの、まだ慣れない。「ただいま」って書きたいだけなのに「只今」ってなったり、「たたいま」って濁点抜けたりする。
ふう。やっと書けた。そのうち慣れるかな、書くの。
「あ、そうだ。アイコン変えなきゃいけないんだった」
アイコンが大事なんだよってモアナちゃんにアドバイス貰ったんだった。
かわいい自分の写真がいちばん、ってモアナちゃん言ってたな。
「……ぶさいく」
上手く撮れない。全然可愛くないし、なんか恥ずかしい。
自撮り以外にしよう。
モアナちゃんによれば、自撮り以外はペット、好きな芸能人やアニメキャラなどが多いそうだ。
ペット飼ってない。好きな芸能人いない。アニメキャラもなんかやだ。
やはり、自撮り。
もう一度撮る。やはり可愛くない。どうしよう。アクセサリーとかつけたら可愛くなるかな。
とりあえずお部屋で探してみよう。
……あれ?
お兄さんの部屋の扉開いてる。何か見える。
「うさ耳?」
うさ耳のかぶりものが転がっている。
あれを頭につけたら……可愛いかも。
勝手に部屋に入って、お兄さんのうさ耳使ったら、お兄さん怒るかな。
ノックしてからだったら入っていいって言われてるし……いいかな? たぶん。お兄さん優しいし、怒らないよね。
こんこん。一応ノックしてからお兄さんの部屋に入った。うさ耳を拾う。頭に付けてみる。
「うわあ。可愛い」
うん。可愛い。写真撮ろうっと。
ぱしゃっ。
いい感じに撮れた。これをアイコンにしよう。
『ただいま。』
うさ耳アイコンで、LINEを送った。お兄さん、読んでくれるかな。
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