第11話 【杏奈視点】杏奈と碧太
お兄さんが風呂から上がった。
次は私がお風呂に入る番。脱衣場で服を脱ぐ。脱いだ服は大きな白いカゴに入れることになっている。さっきお兄さんが無地の物を洗濯してたから、カゴのなかには色柄物しかない。
今日の私のパンツ、ピンクの生地に熊さんの柄。お気に入りのパンツ。
カゴのなかにお兄さんのパンツがあった。
お兄さんのパンツは全部色柄物だ。私のよりもすごく大きい。高校生だからかな、と思ったけど、ママのよりも大きい。それに形も変わってる。
お兄さんのパンツと私のパンツを重ねてみた。やはり全然大きさが違う。
「お兄さん、おっきいんだ」
なんでこんなに大きいのかな。不思議だ。
しばらく見比べたあと、他の服もカゴに入れた。私の服は色柄物が多い。お兄さんの服は白が多いかな。
洗濯機の中では白無地の物が洗われている。洗濯機の中で昨日はいてた私の白いパンツとお兄さんのシャツが、一緒にくるくる回ってる。
私は洗濯機が好きだ。家族の服が一緒になってくるくる回るのが好きだ。
でも、本当に好きなのは家族で入るお風呂だ。
お父さんがいた頃、ママとパパと私で、仲良くお風呂に入ってた。
私はまだ小さかったけど、それでも3人入るとお風呂は狭くて、それでも体の洗いっことか、肩までつかって100数えたりとか、パパに水鉄砲教えてもらったりとか、楽しかった。
ひとりのお風呂はつまらない。
「お兄さん、一緒にお風呂入ってくれないかな」
お湯の中に口をつけてブクブクしながら言ってみた。
おっきなお兄さん。洗いっこしたら、私の小さな手では洗い切れないかな。お兄さんは私の背中流してくれるかな。
裸を見せるのはちょっと恥ずかしい。でも、恥ずかしいよりも、楽しい方が私は好き。
初めてお兄さんと新しいお父さんと会ったとき、新しいお父さんはお兄さんは妹が好きだって言ってた。
凄くうれしかった。心の中でバンザーイてしてた。
だけどお兄さんはなんか迷惑そうだった。お父さんにブツブツ言ってたみたいだし、もしかしたらそんなに妹好きじゃないのかも、って思った。
少し悲しくなって、外の景色ばかり見ちゃった。
帰りにお兄さんに言った。
「私、気にしてませんから」
お兄さんが妹好きでなくても、気にしません。
でも、私はお兄さんが好き。だって優しそうなんだもん、お兄さん。
だから……せめて、お兄さん、と呼ばせてください。
お兄さん。
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