第2話 幼馴染みはビッチになる

「「え?」」


 驚く俺と大垣。


「聞こえなかった? ビッチになるの。清楚可憐からビッチへ転身するんだ、私」

「清楚可憐からビッチ? 大垣、意味分かりません! どうしてビッチになる必要があるんですか? 大垣は清楚可憐な梨々子先輩が好きなのに!」

「ビッチになれば二度とY1にならない。だからビッチになる」

「Y1?」

「そう、Y1。私、Y1グランプリ優勝者だもの」

「なんです、Y1て? ミスコンですか?」


 大垣が首をかしげる。

 そうだ。大垣、新入生だ。Y1グランプリ知らなくて当然だ。

 

「俺が教えてあげよう、大垣。Y1はミスコンじゃない。YはヤりたいのY。我が校の男子が一番ヤりたい女子生徒を選ぶイベント、それがY1だ」

「ヤ、ヤりたい女子生徒を選ぶ!?」

「そうだ。学期ごとに1回、1年の間に3回行われる。そのY1で梨々子は史上初の3連覇を成し遂げたんだ」

「さ、3連覇!」


 Y1グランプリ。ヤりたい女子ナンバーワン。なんと破廉恥なコンテストあろう。


 そんなコンテストでグランプリ。怒った梨々子はY1グランプリ粉砕を公約に生徒会副会長に立候補、当選。しかし、そんな梨々子をあざ笑うかのごとく、Y1実行委員会は2学期も3学期もY1で梨々子をノミネート。嫌がらせのように梨々子を連続でグランプリにしたのだ。


 というか、たぶん嫌がらせだ。


「そんなセクハライベントがあるだなんて、とんだセクハラ学園です! そんな高校に入学していたとは、大垣、大後悔! 大垣の高校時代は大後悔時代です!」

「大後悔なのは私もだわ、大垣さん」


 梨々子が口を挟んできた。


「Y1を潰すと言っておきながら3連覇。副会長の面目まるつぶれね。せめて4連覇は阻止しないと世間の笑い物よ。だからバニーガールになってビッチになる。わかったでしょ?」

「すみません、大垣、全然わかりません!」

「あのな大垣。Y1にノミネートされるのには資格があるんだ。まず、彼氏がいないこと。次に清楚可憐であることだ。たぶん梨々子はバニーガールになって清楚可憐ではない、自分はビッチだとアピールしたいんだ」


 ふんふん。大垣が頷く。


「大垣わかりました! バニー、すなわちウサギは性成熟が早く、おまけに年中発情しています。それゆえ欧米ではバニーガールはえっちなお姉さんのシンボル! 清楚可憐の真逆! そーゆーことですね?」

「さすが読書家の大垣さん。えっちなラノベしか読まない碧太とは大違い」

「へへ。大垣、褒められてしまいました!」


 笑う大垣。


「ということで今学期のヤりたいJKに選ばれないため、バニーガールになろうって思ったの。これで校内を闊歩すればビッチ認定間違いなし! Y1なんかにノミネートされないでしょ?」


 自信たっぷりに梨々子が言った。俺はため息をつく。


「ちょっと何よ、碧太。ため息なんかついて。文句あるの?」

「あのなあ、梨々子。その格好で校内歩いたら普通に校則違反だぞ。それもかなり重大違反。生徒会副会長罷免されてもおかしくない。いいのか、それで?」

「う……そ、それは……」

「どうなんだ、梨々子?」

「……よくないけど。よくないけど!」


 梨々子の顔が不機嫌になる。


「あーあ。名案だと思ったのに」


 全然名案じゃない。


「ねえ碧太」

「なんだ?」

「碧太はキモい?」

「は? いきなり何言ってんだ梨々子」

「いいから答えて。そして私を見て。上から下までちゃんとよ?」


 なんなんだ、一体。


「特別にガン見許してあげる。そんな碧太の反応を見て碧太がキモいかキモくないか、判断させてもらうわ。キモかったら絶交。キモくなかったら、頼みたいことがある」

「何だよ、頼みって」

「後で言う」

「今言えよ」

「抵抗は無意味よ、碧太。はい、スタート」


 強引だな、全く。まあよい。そういうことなら遠慮無くガン見させてもらおう。


 どれどれ。ふむ。


 ウサミミ似合ってるな。長い黒髪が清楚さを演出。それに相反する胸部の露出具合。そのミスマッチがセクシーさを演出。腕組みした胸部からのぞくそれなりに豊かな谷間は男子高校生なら悩殺ものだろう。


 そして密着したスーツが強調するくびれ。梨々子って身体薄いんだな。なのにメリハリのある腰とふっくらとした太もも。ふくらはぎからヒールまでの曲線が美しい。


 うん。どこから見てもバニーガール。そして美人だ。


「私のバニー姿見てどう思ったか正直に言いなさい」


 最適解はなんだろう。迂闊なこと言ったら罵倒されるし。別に罵倒されてもいいが大垣に変なプレイと勘違いされかねない。


 うーむ。わからん。


 とりあえず褒めとくか。


「梨々子って美人だな」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る