バニーガールになった清楚可憐な幼馴染みが俺を誘惑すると、なぜか幼い義妹が甘える件。

上城ダンケ

第1話 文芸部室のバニーガール

 春。新学期。4月上旬、月曜日。


 文芸部室にバニーガールがいた。


 エナメル素材のハイレグバニースーツとうさ耳カチューシャ。黒タイツに包まれた脚にハイヒール。機能性ゼロのカフス。


 正真正銘、超模範的なバニーガールがそこにいた。


「梨々子だよな」

「ええ。幼馴染みの顔、忘れたの?」

「忘れてない。そうじゃなくて」

「そうじゃなくて、なに?」

「格好だよ、格好。なんでバニーガールなんだよ」

「碧太好きでしょ、バニーガール」


 梨々子が指さした先の本棚にはライトノベル。『異世界転生したら妹がバニーガールでした。ついでに幼馴染みもバニーガールでした』全10巻。


 木山梨々子。高校2年。俺、得能碧太の幼馴染みかつ生徒会副会長様だ


 切れ長の目、漆黒ロングの髪の毛、透き通るような肌。

 スレンダーなのに出るとこ出ている容姿。


 男子全員が一目惚れしてもおかしくないくらいな美少女、それが俺の幼馴染み、木山梨々子だ。


「なんで梨々子が文芸部室にいるんだよ」

「ここ、文芸部室である前に生徒会倉庫だもの。生徒会倉庫に副会長がいるのって問題あるかしら?」


 問題ない。確かにここは生徒会倉庫かつ文芸部室だ。俺を入れて部員数2名という文芸部に部室は用意されない。生徒会倉庫を間借りしているのである。


「うーん、ちょっときついなあ」


 梨々子がバニースーツの胸元をいじる。


「見えるぞ」

「えっち」

「俺は注意してあげたんだ。幼馴染みとして」

「へー」


 ジト目で俺を見る梨々子。


「つーかさ、どこから持ってきたんだよ。それ」

「この部屋にあった。文芸部の備品じゃないの?」

「なんで文芸部の備品にバニースーツがあるんだ」

「碧太がえっちだから」


 またそれか。くどいぞ、梨々子。


「とりあえず、文芸部のじゃない。生徒会の備品だろうよ」

「生徒会にもバニースーツは不要だと思うんだけどな」

「文化祭か体育祭で使用したんじゃないか」

「なるほど。碧太にしては頭冴えてるわ」


 ぽん。梨々子が手を打つ。


「あーあ。やっと碧太が部費を変態グッズに流用した証拠を見つけたと思ったのに。碧太の弱みゲットしたと思ったのに」

「俺の弱みゲットして何するつもりだ?」

「荷物持ちとか肩たたきとか」


 それ、今でもさせられてるんだが。


「とりあえず、脱げよ」

「え」


 梨々子が両腕で胸を隠す。

 

「碧太のえっち、脱げなんて。やはり碧太って変態だわ。セクハラ碧太」

「俺は変態でもセクハラでもない」

「脱げって言った。今すぐここで、碧太の目の前で脱げって言った」

「そこまで言ってねー」

「目が言ってたもん」


 そのとき、文芸部室の扉が開き、「ちわーっす!」と元気よく一人の1年女子が飛び込んできた。


「すみませーん、掃除当番で遅く……う、うえええ!? バ、バニーガール!? ぐはっ!」


 後輩の大垣乃亜だった。軽くオレンジに染めたセミロングヘアを揺らし、驚愕に満ちた表情で俺たちを見る。


「せ、生徒会の梨々子先輩じゃないですか! 得能先輩、梨々子先輩に何を、い、いえ、梨々子先輩と何を……あ!」


 大垣がワナワナ震え出す。


「も、もしかして、幼馴染み同士のえっちな現場でしたか!? 大垣、お邪魔虫でしたか!?」


 耳まで真っ赤になって大垣が言った。おい、大垣。お前、勘違いしてるぞ。


「あのね、大垣さん。ここ、文芸部室だけど生徒会倉庫でしょ。私、副会長として備品の要不要をチェックしてたの」

「……備品の要不要をチェック?」

「そう」

「それとバニーガールがどう関係あるんですか?」


 怪訝な顔つきの大垣。


「私、ビッチになるの」




【あとがき】

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