第16話 蜜柑と林檎

【詩織目線】


お、葵くんきたー。

「何やってたの?2分遅れだよ」

「細えな、お前は…たかが2分で」

「へいへい。じゃ、Vcuberの件も二人とも合格したんで。いきましょか」

「え!?っていうか、そもそも何で俺まで!?」

「事務所に事情を説明したら速攻でオッケーだった。同情してくれたよ」

「ええ………」

葵くんは疑っているようだ、まあ関係ない。

「それより、名前決まったのか?」

「言い出しっぺから言うのがルールですー」

「ええ……俺は【御巫かんなぎみかん】でいこうと思ってるけど」

「へー…じゃあ、私は【御巫かんなぎりんご】でいこうかなー」

「何で!?」

「なんか、姉妹みたいでいいじゃん」

「そう……かな……………?」

「うん!(強引)じゃあ、受付に行こう!!!」

「えっ、ちょっと、待っ-」

私は葵くんの手を引っ張って、受付まで行った。

…こうやって書くとなんかロマンチックな気もしてくるけど、一応、私は葵くんを引きずって歩いています。

意外と軽いです。あ、そっか、今は葵くん女だもんね。


受付について、Vcuber事務所から貰った入場証(?)を渡すと、受付のお姉さんは軽くOKしてくれた。

『いい?葵、特殊魔法とか使っちゃダメだし、初心者風に演技してよ?』

『ああ。分かった』

葵って演技上手いの?A.いいえ。

心配だなぁ……

では、タブレットで編集開始。

「みかん?私たちってどっちが姉なの?」

「え?りんごが姉でいいんじゃないか?」

「いいの?じゃあ私、姉ね。りんごお姉様とお呼びなさい」

「何でだよ」

「…りんご姉さんでいいよ」

「キャラ作りは進んでるのか?」

「あ〝」

やばい。やってなかった。

「俺のはこんな感じだけど」

狐耳に狐のふわっふわな尻尾。しかも2本あるので、もふもふし放題である。

でもちょっとクールさもあって、凄い。

流石。

よし。

「できた?」

「うん。こんな感じ」

葵と似て狐耳に狐の尻尾。

ロングの髪で、尻尾は一つ。りんごなので赤色の髪と瞳。

「いいんじゃね?じゃ、配信開始ですか?」

「後30分だよ」


よし。

2人とも配信の画面は【ちょっと待っててね】になっている。

【りんごのコメ欄】

〈新人Vだって?〉

〈りんごって美味しいよな〉

〈御巫ってなんて読むの?おみ?〉

〈「かんなぎ」だって〉

〈妹いるんだよな?〉

〈ああ。御巫みかん〉

〈そっちも新人?〉

〈そうだよー〉

〈新人5人いるんだってな〉

〈りんごちゃん立ち絵どんな感じだろ〉

〈りんごちゃん無理はすんなよ〉

〈そういえば、二年前にもみじが死んだんだったな…〉

もみじ姉さん………

〈新人他4人誰だっけ?〉

〈一人目 御巫みかん二人目 草薙つるぎ三人目 天空宙四人目 勾玉ひすい〉

〈天空だけ場違いな気がする〉

〈それな〉

〈天空ー〉

〈立ち絵まだ発表されてないんだよな?〉

〈楽しみだよな〉

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