第15話 闇の配信

「…さて、どうしようかな」

配信が終わった。

俺がため息を吐いて、ぼーっとしていると、携帯がプルプルと鳴った。

栞からの電話だ。

『もしもし。葵?』

「栞?どうしたんだ?」

『あのさ、いい事思いついちゃってー』

…栞の「いいこと」はロクな事ない。

「はいはい。どうしたんですか」

『何その態度。まあいいや、ちょっと密談しよ』

「密談…?」

『そう。ちょっと今から指定したサイトに来て』


葵>『ここであってる?』

栞>『うん、そうだよー』

なんか、うん、密会にぴったりそうな、怪しい雰囲気のサイトである。

葵>『なあ栞、ここって本当に安全なサイト?』

栞>『そうだよー。証拠もあるよ』

そこまで言われちゃあ…

葵>『そうか。じゃあ、何についての話なんですか。』

栞>『Vcuber続ける方法、思いついた』

葵>『え』

そうなの!?

栞>『新人Vcuberとして活動すれば、いいんだよ☆』

葵>『…うん?』

どゆこと?


話を聞くと、既存のアカウントでは活動せず、新しいアカウントを作り、ワールズも新人として登録すればいいという話だった。

葵>『そのアカウントも監視されるんじゃ?』

栞>『いや、ワールズのアバターあるでしょ?あれで多少は声変わるみたいだから』

葵>『いや、でも、バレたらどうすんだ?退学だぞ?』

栞>『あのねえ、私は命懸けでやってるの。退学ぐらい、どうでもいいんだよ』

そっか…栞はこれで食ってるんだもんな…

葵>『そっか…』

栞>『別に、葵はやらなくてもいいんだよ。最後は自分で決めて』

葵>『ああ』

……うーん……

一応、名門の中学校だからな…

でも、とても姉さんの稼ぎだけで食ってけるとは思えないぞ…………?

………………………………………………

葵>『俺も乗った』

栞>『おk。徳河学園から北に200m行ったところにワールズステーションあるでしょ?あそこに来て』

葵>『了解。何時?』

栞>『午後0時。いける?』

葵>『🫡』

栞>『じゃ、また明日。Vcuber事務所応募したから、名前考えといて』

仕事が早い!流石栞。

葵>『また明日』


名前か。どうしよう…

好きな物から考えていこう……

「…みかん?」

じゃあ、名前はみかんでいいか。

名字は……

「……狐」

狐は可愛い生き物です。

でも、名字かあ…

狐といったら…神社?

巫女の「巫」で調べてみると…

………「御巫かんなぎみかん」

幸い、御巫という名字もみかんという名前もVcuber間では存在しなかった。

じゃあ、御巫みかんで行こう。

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