第11話 スカート

家に帰ってドアを開けたら姉さんが居た。

「何だよ」

「校長先生に特例、出させないよ?それに、ちょっとコレ、試着してもらいたいんだけど…」

やな予感が…

「ちょっ、葵!待てー!」

やべ。逃げよ。

しかし捕まってしまった。

そういえば姉さんは50m走6秒の化け物なんだっけ。

「今何考えてたの?」

「そういえば、姉さん足速かったなーって」

「その後になんか変な事考えてたでしょ」

「い、いやー?」

「…まあ、そんなことより。これ、試着してよ」

姉さんが持っていたのはスカートだった。

「………ちょっとナイフ持ってくる」

「姉さんに何するつもりよ」

「刺す」

一一〇けいさつ呼ぶぞ」

「その前に刺すから大丈夫!」

何を言っているのだろう、俺。

「まあ、これ履けば私の事刺してもいいけど…?」

姉さんも何を言っているんだ。

自らを犠牲にしてまで弟のスカート姿を見たいか。

「…姉さん、男装じゃ駄目?」

「あ、確かにその手が…………」

「よし!」

「……………いや、駄目」

「何で!?」

「葵は可愛いから」

「理由になってない!」

「…………何でそんなにいやなの?」

「男のプライド、というか?」

「今は女なんだからいいよね」

「いやだ!」

「赤ちゃんじゃないんだから駄々こねない!」

「駄々こねてるのは姉さんだろ!」


⭐︎★⭐︎


【遥目線】

「っふ、wwwwwww………」

「笑うな糞姉貴!」

葵がガチギレしましたがスカート履かせることに成功。

私の右腕が犠牲となりましたが。

腕が折れても警察呼ばない私ってやっさしー。優しすぎて死んじゃう。

「本当は姉さんも強要罪で捕まるぞ?」

「葵の方が罪重いから大丈夫だよ?」

「何がだよ…」

まあそれは良いとして。

早速葵が着替えようとしてるんですけど。

「ちょっと待って!?」

「何?俺明日配信で忙しいんだけど」

「学校の準備は?」

「母さんか」

「母さんなんていないでしょ」

「まあ、今日はなんか眠いし寝る。おやすみ…」

「早くない?まだ午後5時だけど」

「明日早起きしたいんだよ。おやすみなさーい」

「夜ご飯は?」

「適当にレンチンするから大丈夫」

「そう…歯磨きなさいよ」

「分かってる。じゃ。この制服は洗濯機に入れとくから」

「あ、うん」

そう言うと葵は洗面所のドアを閉めた。


「母さん……」

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