五限目 早朝の出会い

「もう朝か......」


閉めたカーテンから漏れる光で目が覚める。


時計を見ようとするが、昨日住み始めたばかりのこの部屋にはベット以外何もないことに気が付く。


まあ昨日は疲れて早めに寝てしまった為、寝過ごしたということはないだろう。


家具などは後で考えるとして何からすべきか......ベットから起き上がり顔を洗いながら今日の予定を考えているとお腹の音が鳴った。


 ......とりあえず、腹ごしらえをしよう。昨日の昼から何も食べていないから腹ペコだ。


 配布された制服に袖を通し、軽く整えてから寮を出る。


 確か朝早くでも食堂は空いているはず、昨日クロが言っていたことを思い出し食堂に向かう。


 朝早いからか他の生徒はおらず辺りは静寂に包まれている。


この調子なら一人で優雅に朝食をとれるだろう、そう思いながら角を曲がると金髪の少女と鉢合わせた。


「「あ、」」


 少し気まずい雰囲気が流れたのを感じたので、適当に会釈をしてこの場を去ろうとする。


 しかし彼女も目的地が同じ方向のようで、俺の三歩ほど後ろについてくるという変な状態になってしまう。


 しばらくその状態で歩いていたが、このままだと埒が明かないので足を止め彼女に話しかける。


「もしかして食堂に用があるんですか?」


「そ、そうなんです! 貴方も朝食を取りに?」


 やっぱりか......ええ、そうなんですと返答をかえす。


「私、セシア=ライトって言います。確かあなたも私と同じで特待生でしたよね?」


「俺は佐藤怜人って言います。呼びにくいのであればレイでもいいですよ」


 よろしくお願いします。セシアは包み込むような笑顔で笑った。


「実は私出身がこの王都じゃなくて、少し離れた聖都ライエルなんです。昨日からここの寮を借り始めたんですけど、新しいことが多くて疲れて早く眠ってしまって......」


 なるほどそれで朝早く起きて朝食を取りに来たと。


「実は俺も東のほうの出身なんだ。ここにいる理由は君と全く同じだよ」


 遠くから来た者同士と分かったからか、セシアは仲間を見つけたと顔を輝かせる。


「東というと侍がいるという国ですか!?」


「え? うーんそんな感じ」


 まじかよ、この世界侍いんのかよ。何なら忍者もいそうだし、一度は見てみたいものだ。


 軽い雑談をしていたら食堂についた。


「わぁ、バイキング形式みたいですね......。!」


 寮飯みたいなのを想像してたけど、実際はホテルの朝食のような感じだった。


 あれ、もしかしてこの魔法学園って結構いいところなのでは?聖女も通うぐらいだし......すごいところに入っているのかもしれない。


 そんな考えはグゥーとなったお腹の音でかき消された。


 席を決め料理を取りに行く俺たち、並んでいるのは普通の物で異世界だからゲテモノしかないという最悪な事態も想定していたが杞憂だったかもしれない。


 しかし残念なことに白米を食べる文化はないらしく、探したがどこにもなかった。

 東にあるという侍の国に期待しよう......


 料理を取り終わり席に戻ったが、セシアはまだ選んでいるのか戻ってきていない。


 白米を探していたため結構時間をかけた気がするが、セシアはどんだけ持ってきてるんだ? 戦慄しているとセシアの声が聞こえた。


「すいません遅れました、魅力的なものが多くて......」


 全然大丈夫、そう言おうと声がかかったほうを見るが俺は絶句してしまう。


 そこには到底朝食とは思えない量をトレーに持ってご機嫌そうにニコニコしているセシアがいた。


「早速食べてしまいましょう」


 まあ個人差がある、よな? 俺も料理に手を付け始める。


 味はまあ元居た世界と同じぐらいだったが、正面の席で大量の食材が消えていく光景のせいでうまいかどうかまでは正直分からなかった。


 食後の休憩ということでコーヒーを飲んでいるのだが、あれだけの量を食べても何の変化もないセシアを見て少し引いていたがとあることに気が付いた。


 俺と同じコーヒーを飲む彼女の所作は丁寧で、音を立てずに上品に飲んでいる。


 さっきも量こそ多かったものの、食べる所作の節々に上品さを覚えたため、聖女とはそこらへんもしっかりしないと行けないのだなと勝手に想像する。


「レイさんはこの後学園に直行するんですか?」


「まあそうしようかな。そろそろ生徒の数も増え始めたし」


「じゃあ一緒に行きましょう! あ、あと敬語は不要ですよ」


 俺にも敬語は不要だといったが癖のような物らしく敬語でいるほうが落ち着くらしい。


 席を立ち教室に向かう俺とセシア。朝から濃い出会いがあったな、呑気にそう思っている俺にこの後あんなことが起きるとは、まだ誰も知らなかった。


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