四限目 優しい人ほど怒らせると怖い

 「なーんだ特待生って奴は全員すごいと思ってたけど出来損ないもいるみたいだなぁ」


 教室の隅でグループを作っていた一人の生徒がそう言った。


 「やめなさい、フラブ君」


リノ先生が直ぐに仲裁をしようとするがフラブと呼ばれた生徒は俺への非難を止める気はないらしい。


「だってそうでしょー? 魔道具は適性がある属性の色に光る、でもこいつは白つまり全属性に適性がないってことですよね?」


 なるほどこの画面は俺以外には見えていない。つまり俺は周りからしたらただ魔道具を白色に光らせただけの劣等生に見えるってわけか。


 試しにフラブに解析を使ってみる。


[フラブ=レートン 人間族 適性魔法 雷]


 あれ、思ったよりも読み取れる情報が少ない。


[レベルが最低値のため最低限のことしか読み取れないようです]


 ほほう、どうやらスキル自体にもレベルが存在しているようだ。


 レベルを上げる方法も今後探していかないとな。


 思考に耽っているとちょんちょんと控えめに肩をつつかれる。


「ねえ、あれ無視してて良いの?あのフラブって奴すごい怒ってるよ」


 とリネアがフラブの居る方向を刺しながら教えてくれる。


 どうやらフラブは俺が思考に耽っている間も、ずっと演説のような罵倒をしていたらしい。


 そろそろ血管が切れるんじゃないかと思うくらい顔を赤くして怒っていた。


「おい、聞いてんのかよ!」


 聞いていたとは言えないな。


「さっきから人のことを空気みたいに扱いやがって……これは上下関係を分からせてやる必要があるみたいだな」


 フラブの右手に光が集まる。恐らく魔法を使う気なのだろう。


 リノ先生は流石にそこまでするとは思っていなかったのだろう。


 咄嗟に風の魔法で打ち消そうとするが雷の魔法には詠唱が短く、弾速が速いという特徴があるためを間に合わない。


 そして肝心の俺だがはっきり言って避けるのは無理だ。


 つい最近まで平和な世界でダラダラと生きていたのだ、避けろという方が無理がある。


 甘んじて受けよう、そう思っていると体が急に動き出す。


 [模倣]


解析の画面が出てきたと思ったら俺の手には

フラブと同じ雷魔法が握られており、それを向かってきている雷と衝突させた。


 すると雷同士は打ち消し合い、大きな音を立てて対消滅する。


[模倣・解析した相手が使用したスキルを模倣することが出来る]


 なるほど、解析にばかり目が向いていたが模倣スキルもなかなかにチートらしい。


「なんだって!? お前は適性がないはずじゃ......」


フラブが動揺を隠せないかの様に驚く、そして懲りずに暴言を吐こうとするもクロが話を遮った為、叶うことはなかった。


「もういいでしょ? 貴方はレイを馬鹿にしたけど実際は違った、ならまずするべきことは謝罪じゃ無いの?」


 こちらからだと顔は見えないが、尻尾の毛が逆立っているので俺の為に怒ってくれているのだろう。


 流石にクロを敵に回すのはまずいと思ったのかフラブはえっととかそのとか、言葉にならない声をあげている。


「ねぇ」


 その声を聞いた時俺は教室の温度が10度ぐらい下がったような気がして思わず身震いをした。


「くどいよ?」


  この時ばかりはクロの顔が見えなくて本当に良かったと思う。


 もし見える位置にいたら、夢に出てくるどころじゃ済まなかっただろう。


 あまりの重圧にフラブ口から泡を吐きながら気絶してしまう。


 この時に俺いや俺たちはクロを怒らせてはいけない、そう心に誓った。


 騒動の後にリノ先生から止められなかったことで謝られたが、模倣スキルの有用性を知ることが出来たので気にしないで欲しいものだ。


 そしてフラブが保健室に連れていかれ、審査はつつがなく進行した。


 することが全て終わって解散になったが、帰る場所がないと困っていると、寮の空いている部屋を使っていいそうで、クロに案内してもらった。


 部屋のベットに寝転ぶ。


 「明日からは解析と模倣スキルのレベル上げを目指して頑張ろう」


 今日は色々なことが起きすぎて疲れていたので、俺は直ぐに眠りに着いた。



 


 

 

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