三限目 特殊スキル
ため息をついて机に突っ伏していると頬につつかれているような感覚がする。
最初は気のせいだと思っていたがだんだん強くなってきて、今はつつくを超えて頬をつねられている。
痛くなって来たのでその方向を見ると、赤髪の龍人少女が不満そうにこちらを見ていた。
「無視、二回目なんだけど」
なるほど最初は用があってつついていたが無視されたから怒ってつねったのか。
「すいません、それで何の用ですか?」
普通に痛かったため冷たい言い方になってしまう。
「その......話も聞かずに急に話し切っちゃったから、悪かったなって」
「いえ大丈夫ですよ、それにあの時は俺にも非があった」
この答えに対して彼女はそれでもと返す、存外芯の通った性格をしているようだ。俺は彼女を誤解していたらしい。
「そういえば自己紹介がまだだったね、私はリネアそれと敬語もなくていいよ」
「俺の名前は佐藤怜人、呼びにくいと思うからレイでいいぞ」
リネアと握手を交わす、まだ仲良くなったとは言い難いがひとまずは一歩前進といったところか。
その後リネアにあの時不機嫌になった理由を聞いたが、どうやら親との仲が悪く龍人として扱われるのが嫌だそうだ。
リネアという名も自分で考えた偽名らしい、本当の名前を聞いてみたがもう少し時間がたったらと返されてしまった。
そんな風にリネアと会話をしたり、たまにクロが会話に混ざってきたり、そんな風に時間をつぶしているとチャイムのような音が鳴る。
それが鳴り終わると同時に恐らく教師であろう服装をした人物が教室に入ってきた。
「おはようございます、僕は今日からこの教室で教鞭をとるリノです。早速ですが皆さんにはやってもらいたいことがあるのですが」
リノと名乗った教師はそういうと水晶玉のような物を取り出した。
「それはズバリ、適性審査です!」
適性審査って何? そう思った生徒は俺以外にもいたらしく、手を挙げて質問をする生徒は何人かいた。
「適性審査とは自分にあった属性を見つける為のものです。この魔法具を見ていてください」
リノが魔法具と言ったものに触ると、緑色の光を放ち始めた。
「緑色は草の属性に適性があることを示しています。このように専用の魔法具を触ることで、適性の属性を知ることができるんです」
それでは端の席の人からお願いしますとリノ先生が言い、生徒が触り始める。
俺の反対の席から始まったので、順番的に最後になるだろう。
審査が始まってしばらく時間がたちそろそろ俺の順番が回ってくる頃、リネアが魔道具に触る。すると強い赤色の光が視界を満たす。
赤は火属性だったか、確か色が濃いほどより適性があるとのことなので流石は龍人といったところか口に出したら睨まれそうなので言わないが。
次は恐らく聖女であろう女性の番だ。聖女という肩書があるからか、審査し終えた生徒も気になるようで魔道具を見ている。
俺もその一人だ。彼女が魔道具に触れたその瞬間、包まれるような温かい光りを魔道具が発した。
時間としては二秒ほどだったが肩書に恥じぬ力は持っているようで、聖女様万歳というような声も聞こえた。やはり聖女だったようだ。
そして何人かが審査を終え、クロの番になった。彼女は後ろの席なので次は俺だ。
クロはワクワクを隠そうともせず尻尾をぶんぶんと振りながら魔道具に触れる。
すると最初は緑だったが次に青そして赤という風に色が変わっていく。
それを見たリノ先生が全属性保持者......? と困惑していた。周りもざわめき出している。
今まで二属性の色に変わる生徒は何人かいたが、全属性ともなると流石に理解ができない範囲なのだろう。
そんなことを知ってか知らずか、クロは耳と尻尾をピコピコ動かしながらこちらに手を振っている。
別にモフモフしてみたいなんて思っていない、半分くらいは......
クロが席に着くと次は俺の番だ。
席を立つと周りから注目されているような感覚がする。
まあ俺も特待生だということはすでに広まっているだろうし、これまでの特待生を見たら期待するのは当然だろう。
少し緊張はするがまあ一つの属性に適性があればいい。
そんな軽い気持ちで触れる。すると魔道具は白色に光った。
初めての色だ......何に適性があるのか分からなかったのでリノ先生のほうを見るも、彼も分からないという顔をしていた。
困惑していると頭の中に声が聞こえる。
[解析と言ってください]
まだ状況が読み込めていないが何かに導かれるように解析とつぶやく。
すると目の前に画面のようなものが広がる。そこには……
[特殊スキル 解析と模倣を習得しました]
そう書かれていた。
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