二限目 平穏な学園生活?そんなものはない
「ねえねえ、君って特待生なんでしょ!?」
ゆらり、ゆらりと目の前でモフモフが動いている。
見ただけでふわふわだとわかる毛並みのそれを持った少女が、私気になります! という言葉があふれ出るほどに尻尾と耳を揺らして質問してくる。
なぜこんな状況になっているのか、それは数分ほど前にさかのぼる。
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「さてこれで今日から君はこの学園の生徒というわけじゃ。扱いとしては特待生のような感じじゃのう」
レノンが出してきた書類に何度か拇印を押した後、説明を受けているときにノックの音が聞こえ、失礼します! と元気な声を出しながら獣人の少女が入室してきた。
それを確認したレノンが
「ああ、持っておったよ。では怜人よ儂は見ての通り多忙でのう、後のことは彼女に聞くといい」
そう言って、空間に溶けるように消えた。
「え?」
取り残された俺と初対面の少女、少女のほうを見ると眩しいほど目を輝かせていた。
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というわけだ。
「私の名前はクロイ=ハウリア、気軽にクロって呼んでいいよ」
耳がピコピコと動いている。どうやらクロイは狼族の獣人らしく、撫でてみたくなるほど見事に手入れがされた毛並みを持っていた。
「俺の名前は佐藤怜人、今日からこの学園の生徒になったらしい」
「サトウ=レイト? うーん言いにくいからレイって呼んでいい?」
なるほど、どうやら俺の名前はこの世界の住人からすると少し発音しにくいようだ。
にしてもレイか......変でもないし恐らくそっちのほうが呼びやすいだろう。
「いいよ、その代わり俺も君のことクロって呼ぶよ」
それを聞いたクロは嬉しそうによろしくねと言った。
「そういえば特待生って何なんだ?」
純粋に気になったのでクロに聞く。
「特待生っていうのはいわゆる推薦みたいな感じで、レノン校長から個人的にスカウトされた生徒のことだよ」
「へえーじゃあ特待生は何人くらいいるんだ?」
「うーんと今年はレイと私を含めて4人かな?」
驚いた、目の前の少女が俺と同じ特待生でしかも特待生の人数がそんなに少ないとは。
廊下を右に曲がる。思ったよりもこの学園は大きいらしく一人で歩いていたら迷子になりそうだ。
「なるほど、ほかの特待生はどんな奴なんだ?」
それを聞いたクロは入学したばっかりだから私もあんまり知らないけどと前置きをした。
「一人は赤髪の龍人でもう一人は金髪の聖女らしいよ」
龍人と聖女かぁー......できればあまり関わりたくないというのが本音だ。
もちろん一目見たいという気持ちはあるが、関わると俺の平穏なスクールライフが脅かされるのは間違いないだろう。
しばらく進むとクロが止まった。
「ここが私たちの通う教室だよ!」
そこには俺が通っていて学校の教室のドアに似た木製の扉があった。
少し緊張する、この扉をくぐったらこの学園での生活がスタートするそんな気がしたからだ。
平穏な学生生活が送れるといいな......できれば彼女も欲しい。
ドアをくぐるとそこには何人かの生徒がいた。外の景色を見ている奴、本を読んでいる奴、見渡していくと見知った赤髪が見えた。
「げっ」
思わず声が出る。心配してくれたことは感謝するが不審者って校長に吹き込んだの忘れてないからな。
席の場所を確認したクロに手を引かれる。どうやら席の場所が近かったようで少しうれしそうだ。
そしてそのまま手を引かれてついた席は赤髪の少女の隣だった。
隣!?これだけ席があって隣!?
ちらっと彼女のほうを見るが目をつむっていて何を考えているのか分からない。
ちなみにクロは後ろの席だったのだが気まずさから助けを求めようとするも、隣の金髪の生徒と会話をしており無駄に終わった。
ん?そういえば特待生の見た目って......隣を見る。
「赤髪の」
目をつむった彼女の髪は鮮やかな赤色で
「龍人」
俺の声を聴いた彼女はうっすらと目を開ける。生えている角と輝く瞳は龍を連想させる。
もう一人の特待生も......
後ろでクロと会話をしている少女を見る
「金髪の」
彼女の髪色は眩しいほどの金髪で
「聖女」
浮かべている笑みは包み込まれるような優しさを感じ、正に聖女のようだった。
机に突っ伏す。そういえば周りの生徒からも一歩引いたような雰囲気を感じるような気がする。
特待生は校長の推薦で、なおかつ今年は4人しかいない為特別視されるのは当たり前で、しかもその四人が固まっているとなると距離も取りたくなるだろう。
それを踏まえて一つ言いたい、俺の学園生活どうなっちまうんだ?
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