第6話 運命の出会い
元々、頭は悪くなかったので、プログラムを作ったりすることは得意で、その実力はなかなかなものということで、就職も、今の会社に入れたのだった。
一応、単独でも、地元大手といってもいいところであったのだが、かつての、財閥系のグループ傘下に入ったことで、給与面は、かなりいい方になっていたのだ。
だから、今から思えば、
「学生時代よりも、今の方が、はるかに充実している」
と思うのだった。
ただ、どうしても、
「孤独」
ということと、
「まわりからの束縛」
というものに対しての、
「トラウマ」
が消えるわけではなく、
「ちょっとしたことで、トラウマを思い出す」
という状態になったのだった。
そんな自分を、一度、
「精神疾患があるのかも知れない」
と思って精神科を訪れたことがあった。
その時は、
「あなたには、強烈阿トラウマがあるようですが、だからといって、精神疾患というわけではないですね」
という診断であった。
それを聞いて、
「安心した」
という感覚であったが、安心というよりも、どちらかというと、
「拍子抜けした」
と言った方がいいかも知れない。
別に、
「精神疾患」
というものであっても、なくても、自分にはあまり関係ないと思っていたのだが、それは大きな間違いだったようだ。
「精神疾患であれば、保証も受けられる」
ということをきいたが、それを公表することでのリスク、デメリットもあるということになるであろう。
そのことを考えると、ゆいかは、
「あまり、精神科に顔を出すのはやめておこう」
と思うのだった。
ゆいかは、他の人と、考え方が違う。
他の人だったら、
「精神疾患がバレると、絶対に差別される」
と思って、自分が精神疾患であるということを認めたくないと思うに違いない。
しかし、ゆいかの場合は、
「まずは自分のことを知らないと、何もできないではないか?」
ということから始まるということであった。
だから、最初に病院に行ったのだが、そこで、自分の立場や周りのことを考えたのだ。
それが、ゆいかのいいところでもあり、悪いところでもあるだろう。
一長一短な長所と短所、
「背中合わせ」
ということでもあり、
「紙一重だ」
ともいわれるのだろう。
「モンスターピアレント」
のせいで、そんな気持ちになったり、それを意識しないといけないという感情に包まれたりと、頭がよくて、頭の回転が速いだけに、そんな発想が渦巻いてしまうのだった。
そんな状況を考えていると、今の自分が、
「幸せなのかも知れない」
と考えるようになった。
しかも、会社では、コンプライアンスの問題があることで、
「女性だから」
などということで差別を受けたり、
「セクハラ」
というものもない時代が来た。
しかし、ゆいかは、正直、この状況をオンナの立場としても、
「あまりいい傾向ではないな」
と感じていたのだった。
というのも、
「あまり過剰になりすぎると、ロクなことはない」
と感じていたのだ。
要するに、
「過ぎたるは及ばざるがごとし」
ということであり、
「男性に気を遣って何もできなかった女性」
という降雨から、
「女性にお権利を開放する」
と言えば、聞こえがいいが、そんな状況にい便乗して、女性側から、
「男性に対してプレッシャーをかける」
という、
「女性ということを使っての、犯罪行為」
というものが、横行しないか?
ということを心配もしていた。
そんなことを考える時、
「私って、本当に女なのだろうか?」
ということを考えてしまうこともあったりした。
だから、親に対して、
「オオカミ男」
という発想をしたのかも知れない。
それは、
「権利の後ろには義務というものがあるように、開放される側の反対から見れば、逃げることのできない束縛が潜んでいるということが分からず、それまでの束縛をいきなり海保することで、オオカミになってしまう」
ということを感じ、
「それが、二重人格性を思わせるオオカミ男というものを、連想させるということになるのではないか?」
と考えられるのだ。
というのは、
「今ではあまり聞かなくなったことではあるが、実際には、いまだに犯罪として、存在している」
と言われる。
「美人局」
というものである。
読み方は、
「つつもたせ」
というものであり、
「女がオンナという武器を使い、男とグルになって、弱者を脅す」
というものだ。
弱者といっても、犯罪行為に引っかかる、
あるいは、自分の社会的地位が失墜するということで、一味のターゲットとしては、
「金をもっていて、社会的地位に執着が強い人間」
つまり、
「会社役員」
であったり、
「芸能人」
などが、狙われやすい。
彼らは、金や地位があるだけに、寄ってくる女はたくさんいるだろうから、人によっては、
「警戒心が、欠如し、感覚がマヒしてしまっている」
という人も多いことであろう。
それを思うと、
「狙われる方も悪い」
といえるのだろうが、圧倒的に、
「美人局」
の方が悪いに決まっている。
しかし、狙われた男は、なまじ金があるだけに。
「金で解決できるなら」
と思って金を出すと、最後、
「一生付きまとわれる」
ということになるだろう。
美人局側とすれば、
「どうせ、誰にも言えないだろう」
といって、タカをくくっているに違いない。
しかし、そんな美人局というのも、実は、
「諸刃の剣」
のようなものだ。
仕掛ける方は、
「自分たちの計画は完璧だ」
と思っているようだが、
「世の中そんなに甘くはない」
といってもいいだろう。
というのも、
「確かに、相手は守らなければいけないものがあるから、金を出す」
ということである、
だから、
「秘密を握っている限り、自分たちは安全だ」
と感じるのだろう。
だが、それが一番の落とし穴なのだ。
脅される方は、
「金があって、名誉のために金を出す」
という人間である。
最初は、
「面倒だから」
ということで、一度は、
「元々、自分が鼻の下を延ばした」
ということで、こんなことになったのだから、
「授業料が高くついた」
ということで仕方がないと思ったのだろうが、
「二度目からは、そうはいかない」
ということである。
このままずっと付きまとわれるということであれば、話は変わってくるわけで、こうなったら、
「お金で、やつらに制裁を加える」
と考えるのは当たり前だ。
「金があるから、金を出す」
というのは、一度だけで、二度目からは、逆に、
「金を使って排除する」
とは考えないのだろうか?
何といっても、
「やる方は、やられることに気付かない」
というが、まさにその通りなのだろう。
一度金を払った方とすれば、次からは、必死になって相手を潰そうとする。これは、
「金が欲しい」
というよりも、今の名誉がなくなることで、
「金もなくなる」
という当たり前のことを分かっているからであり、
「金があるから金を出す」
という、
「まるで小学生程度の発想」
しかない連中は、その時点で、
「破滅への階段を上っている」
ということになるだろう。
たぶん、
「非政府組織」
に依頼して、
「やつらが、これから何もできないくらいにまで、懲らしめてください」
ということで金を払っているだろうから、
さすがに、
「簀巻きにして、海の底に沈める」
ということはないまでも、女は、
「金で売られるくらいは平気であるだろう」
それは、完全な自業自得で、同情の余地はないということになるだろう。
やはり、
「策を練る人間ほど、自分がやられることを考えない」
という、いわゆる、
「驕り」
のようなものがあるのだろう。
「自分は、相手に対して強い立場である」
ということに胡坐をかき、それ以上に、
「自分に対しての驕りが強い」
ということなのである。
それを思うと、
「明日は我が身」
であったり、
「因果応報」
という言葉を感じずにはいられないというものだ。
ミステリー小説などでよくあることとして、
「一度、警察が捜索した場所というのが、一番発見されにくい」
ということである。
警察というのは、それなりに、自分たちに自信を持っている。
「国家権力」
というものを笠に着るということになるからであろう。
そういう意味で、
「かしこい犯人」
というのは、絶えず警察の裏を掻くということを狙っているので、案外と楽に裏を掻くことなど簡単にできてしまうのであろう。
しかも、
「普段からしている方は、されることを分かっていない」
ということで、
「まさか、警察の上前を撥ねよう」
などということはないだろうと思っているに違いない。
そんなことを考えていると、
「必要以上に、余計なことを考えてしまうのだろう」
と感じた。
ゆいかは、今自分の頭の中が、
「カオスになっている」
ということを感じているのだろうか?
中に誰かがいるということを感じながら、さっきまで、
「モンスターピアレント」
を思い出していたということを、失念するところだった。
本当は、思い出したくもないと思っていることなのかも知れないが、それだけではないのかも知れない。
一つ言えることは、
「父親の気持ちを知ることなく、父親が死んでしまったことに、後悔があった」
ということであった。
「少しでも、会話ができたかも知れない」
と思うのだが、思い出すたびに、
「そんなことはありえない」
と自分に言い聞かせようとする、
「もう一人の自分がいる」
ということを、思い知らされる気がするのだった。
「確かに恨んでいるし、自分の中に、拭えないというトラウマを残したのは、父親の責任だ」
ということになることを感じていた。
だとしても、死んでしまった人のことを、一括りにして、
「モンスターピアレント」
という言葉で片付けていいものかどうか、それを考えてしまうのだった。
「親にだって、それなりの考え方はあっただろうに」
と思うと、このままでは、自分が親になった時、父親と同じ轍を踏んでしまうということになりかねなかったのだ。
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