第50話「本当にあった新聞勧誘」(2024/8/4)

 新居へ引っ越し、中に荷物を忙しなく運び入れている最中に、その男は来た。

「書買新聞のAといいます。新聞の契約をお願いできませんかね」

 低姿勢だが声のでかいおっさんだった。不要だと言ってもなかなか引かなかったが、ネット注文していた家電を運送業者が届けに来てくれて、Aは不承不承といった様子で帰っていった。


 それから二週間後。

「あ、どうも! この辺りに引っ越してきたので、挨拶に伺いました! よかったら、これどうぞ」

 20代前半くらいの男(Bとする)が、両腕に抱えていた洗剤やら石鹸やらを渡してきた。

「あと、これに名前書いてもらえます? みんなに書いてもらってるんで」

 そう言って渡してきたのは、書買新聞の契約書だった。

 もちろん、Bを追い返した。洗剤やら石鹸やらを突き返して。


 それからさらに一週間後。

 性懲りもなく、またAがやってきた。

「半年だけでも、お願いします!」

 さすがにブチ切れた。

 お隣さんが何事かと顔を出してきたので、ばつが悪くなったのかAは帰っていき、以降はAもBも訪れることはなかった。


 新生活を始める諸君、気を付けたまえ。

 奴らはどこからか仕入れた転居者情報を元に、君の所にやってくるぞ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る