第47話「雨宿り」(2024/8/1)

 15分前は快晴だった空に重苦しい雲が詰まり、大粒の雨がそこら中に特攻している。時折空が光り、10秒おいて雷鳴が轟く。


 私はシャッターの閉まったお店の軒先で雨宿りしている。

 お天気アプリの予報では雨が降り出すのは1時間後だったから、徒歩で買い物に出掛けたのに。


 これは文明に対する自然の挑戦だ。


「ついてないなあ」


 隣から声が聞こえた。

 驚いて目をやると、ずぶ濡れの若い男性が前髪から滴る汗を腕で拭っていた。

 その仕草がやけに色っぽくて、息を飲んで見惚れた。


「少しの間、相席させてください」


 彼はそう言って笑う。

 私は声も出せずに、ただ頷いた。

 こんな田舎にも彼みたいなイケメンがいるんだ。

 たまには帰省するのもいいものだ。


 会話もできずに10分ほど待つと、雨があがった。

 軒先から手を出して確認しても、掌に雨粒は落ちてこない。


「ようやくあがりましたね」


 私が声をかけた先には、誰もいなかった。

 彼がいた場所には、水溜まりもできていない。


 そういえば、お婆ちゃんが言っていた。

 お爺ちゃんと出会ったのはまさにこの場所で、雨の日に一緒に雨宿りしたのだと。


 今年の盆は、お墓で眠るお爺ちゃんに会いに行こう。

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