第46話「雀ものがたり」(2024/7/31)

 少年が、用水路のフェンスを乗り越えて、身を乗り出しました。

 右手でフェンスに掴まって、左手を水面にぐんと伸ばしています。


 そこには、溺れそうになっている雀がいました。

 手が届かないので、少年は長い木の棒を拾ってきて、やっとの思いで救い上げました。


 助けてもらった雀はたいそう感謝して言いました。

「おお、あなたのお陰で助かりました。このご恩は決して忘れません」

 雀はぴょこぴょこと去っていきました。


 雀は羽が乾くまで日向ぼっこをすることにしました。

 塀の上で太陽にあたっていると、突然とら猫が現れて、雀に噛みつこうとしてきました。

 雀はびっくりして、塀から落ちてしまいました。


 雀が落ちた先には大きな犬がいて、猫が雀を食べようとしていると分かると、グルグルと唸って、猫を追い払いました。

 雀はたいそう感謝して言いました。

「おお、あなたのお陰で助かりました。このご恩は決して忘れません」



 雀の寿命がやってきました。

 若い頃に助けてもらった少年と大きな犬を最後に思い浮かべて、息を引き取りました。


「タロウ、散歩に行こうか」

「ワン!」

 少年が、大きな犬の首輪に紐を繋ぎました。

 その紐は、あの雀と同じ模様をしていました。

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