第45話「ヴァンパイアの女」(2024/7/30)

 私の首筋に歯を突き立てて血を啜るのは、私の彼氏だ。

 彼はヴァンパイア。私はただの人間。

 種族が違う。でも、関係ない。私は彼を愛し、彼も私を愛してくれている。


 彼は私を気遣って、ほんの少量の血液しか啜らない。もっと啜ってくれていいのに。

 私の血が彼の中を巡る様を想像するだけで、達してしまいそうになる。

 彼が私を満たしてくれたように、私も彼を満たしたい。


 今宵は新月。揺らめく蝋燭くらいしか光源のない世界で、私達は互いを求めあった。


 また、来月会いましょう。

 そう言って暗闇に溶けて行った彼は、二度と私の前に姿を現すことはなかった。

 王国の討伐隊によって、ヴァンパイアは根絶やしにされてしまった。


 彼と言う存在は、私の記憶と、首筋にしか痕跡がなくなってしまった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る