第35話「コノ先、日本国憲法通用セズ」(2024/7/20)

 コノ先、日本国憲法通用セズ


 おどろおどろしい赤文字が書かれた、さほど古さを感じない木製の看板を見つけた。

 俺と沙耶さやは、互いの顔を見て頷く。


 沙耶に誘われて、二人でYouTubeを始めることにした。学生カップル×ホラージャンルというニッチな領域のコンテンツを提供し、登録者数の増加、ひいては広告収入ゲットを狙う。

 記念すべき一発目の動画撮影のために、都市伝説で有名な心霊スポットにやってきたのだ。


 早速カメラを起動し、録画を開始。時々会話を交えながら、恐ろしい雰囲気を出していく。

 しばらく進むと、古びた木造の建物が見えてきた。撮れ高を考えれば、行かない手は無い。俺は建物の中に入り、わざと息を荒げながら記録していった。

 一階の床に扉があった。開けてみると、ギギギという悲しい音と舞い上がる埃。床下収納にしては広く、地下室にしては深く、四角い落とし穴のようだった。

 しまったな、ロープでも持ってくるんだった。


 そんなことを考えていると、突然背中に衝撃が奔り、前につんのめった。俺は、暗闇の中に落ちて行った。


「あんたのいじめのせいで自殺した夏海なつみに、死んで詫びなさい」


 四角い天井の奥から、沙耶が遠ざかっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る