第34話「ゾンビの手も借りたい」(2024/7/19)

 西暦2xxx年。

 かつて1億人が住んでいたこの国の現在の人口は、3000万人。

 人口が1/3以下に減ってしまった上に、高齢化が進み、深刻な人手不足に陥っている。AIが発達し、大方の仕事は人間に代わって自動で行ってくれるため、人手が必要な仕事といえば、せいぜい機械の管理やメンテナンスくらいのものだ。それもほぼAIで自己完結するため、基本的に人間がする仕事はない。最後の砦程度の役割だ。

 だが、人手が必要な仕事もある。その一つが介護だ。

 AIが代替できるし、むしろ力がいる介護は機械の方が向いているのだが、被介護者の心には寄り添えない。冷たい声色の音声とコミュニケーションなどできないのだ。

 人間のように会話できるくらいに進化しても、あくまでも人間の"ように"なのだ。

 はるか昔から人手不足が叫ばれる介護業界。猫の手も借りたい。

 猫に手は無いので、人間が頑張るしかない。でも、人間がいない。それなら、を使うしかない。

 そう、ゾンビを労働力にすることにしたのだ。技術の無駄遣いもここまで来た。

 今、まさにゾンビ介護士のスミス君が、お婆さんの入浴介助を終えたところだ。

 患者さんが泡を吹いて寝るので、仕事が捗る。

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