第14話「見て見ぬふり」(2024/6/29)

 チラリ。

 道を歩いていると、若くて美人な女性がすれ違いざまに俺に視線を向けた。

 我ながら、モテる男はつらいぜ。

 チラリ。

 今度は、ベビーカーを押したママさんがチラ見してきた。

 おいおい。命ある限り添い遂げると誓った相手がいるだろうに、不倫はいけねえぜ?

 ミセスまで虜にしちまうなんて、罪作りな男だ、俺は。

 チラリ。

 今度はスーツ着たおっさんに見られた。

 さすがの俺も、男にモテても嬉しくない。だが、俺の魅力に女も男も関係ないのだと思えば、悪くはない。

 今日はいい酒が飲めそうだ。


 安くて旨い居酒屋のカウンター席で上機嫌で一人飲みしている間も、視線を感じた。そんなに逆ナンしたいなら、声をかけてくれていいのに。俺、今はフリーだぜ?

 結局、チラ見はするものの声をかけてくる女はおらず、会計を済ませて帰った。

 リビングでズボンを脱いで、そのまま風呂へ向かう。汗をかいたままじゃ気持ち悪いからな。

 脱衣所で汗の染みたTシャツを脱いだときに、首元に違和感があったので、確認してみると。


 30%割引の値札がついていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る