第7話「妖怪ジレンマ」(2024/6/22)
僕は、10年くらい前に流行った、妖怪をウォッチする某アニメの歌を最大限に参考にして、嫌なことがあったら「妖怪のせい」と思うことにしている。
快晴だという天気予報を信じて傘を持たずに出かけたら、急な豪雨に見舞われて全身ずぶ濡れになり、Tシャツ越しに透け乳首を晒したのは妖怪のせい。
期末テストの開始のチャイムが鳴ると同時に腹痛に襲われ、5分で限界が来て、まだ手を付けていない大部分の問題の解答権と引き換えにトイレに駆け込み、その結果赤点になったのも妖怪のせい。
妖怪たちは、日々こうして僕のメンタルを
3時間目の国語の授業が始まった。
僕の隣の席の小林さんが、先生に指されて教科書を読んでいる。ページを捲る指、文章を追う目、音読する口の動き、そして玉を転がすような声。彼女が起こす音波が、僕の心に流れ込んで、僕の内側を自由に暴れまわる。
この気持ちが彼女への好意であることは分かっている。想いは伝えなければ伝わらないのに、勇気が出ない。もし、断られたら。始まらない可能性を考えるあまり、スタート地点にすら立てない。
これも、妖怪のせいだ。
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