第4話「転生チャレンジ」(2024/6/19)

 ぼくはね、君に会いたくて何度も何度も転生したんだ。

 君はぼくを撫でてくれて、そばに居させてくれて、美味しいごはんを食べさせてくれた。朝出かけて、夜になるまで帰ってきてくれないから、待っている間は寂しかったけど、一緒にいるときはずっと抱いてくれた。

 それなのに、ぼくは死んでしまって、君を泣かせてしまった。

 もっと、そばに居たかった。

 ずっと、一緒に生きたかった。

 だから、ぼくは願った。生まれ変わって、君のところに行けますように、って。


 一回目の転生は、蚊だった。君に会いに行ったら、速攻で叩きつぶされて、また死んだ。

 二回目の転生は、蝿だった。君に殺虫剤をかけられて、痙攣しながら死んだ。

 三回目の転生は、ゴキブリだった。君が仕掛けたトリモチに引っ掛かって餓死した。

 他にも、毛虫やら蜘蛛やら、やたら虫にばかり転生した。

 君はぼくの存在に気が付くけど、昔みたいに撫でてもらうことはできなかった。


 だから、ぼくは願った。ちゃんと君と一緒に居られる存在になりたいって。


 願いは叶った。正確には、もう少しで叶う。

 君の笑顔を見られるまで、ぼくは君のお腹の中で、ゆっくり過ごそう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る