第22話 突然の呼び出し。

 突然ですが、今日は時間が一気に飛びます。

 これは、今(現時点)から二十年以上前の話です。


 ある日の夕方、仕事から帰ってきたところに、一本のメールが入ります。

 前出の二話、十五話に出てきた同級生のCちゃんこと、千佳ちかからです。


『飲みに行こうと思って、あんたんち(実家の店)に行ったら休みだったから、角の焼き鳥屋にいるんだけど、来ない?』


 飲みに行くのはいいとして、私の実家に行こうとしていたとは、これ如何いかに?

 当時は千佳と私の住んでいたアパートは、自転車で五分程度のところだったので、飲みに行くというのであれば、実家に行かずとも、うちに来ればいい話しなのです。

 なんだか良くわからないながらも、とりあえず、指定の店へと向かいます。

 暖簾をくぐって入り口のドアを開け、ぐるりと店内を見渡すと、奥のテーブル席で手を上げている人が。


「あれ……?」


 小学校三、四年生のときに担任だった、岳本たけもと先生の姿がありました。

 ちなみに、千佳は五、六年生のころに岳本先生の受け持ちでした。

 この岳本先生、私が高校になったころくらいまで、数年に一回程度ではありましたが、実家の店に立ち寄ってくれる人だったのです。


 というか……小学生のころの先生たちは、自宅が市内にある先生が多かったせいか、割と頻繁に商店街の飲み屋さんに出没していて……。

 まあ、先生も人だよね?

 と思わざるを得ないようなお姿を拝見することが多々ありました。詳しくは控えますが……。


 うちの店に来るのは岳本先生くらいでしたが、ほぼ毎回、酩酊してしまい、タクシーを呼んで母親と一緒に担いで乗せ、自宅の住所を伝えて送り出すという、中々得られない経験をさせてくれた先生でした。


 その先生が、なぜか呼び出された店にいる……。


「岳本先生、久しぶりです。今日はどうしたんですか?」


「うん、たまたま千佳と会ってさ、秋摩のうちに行こうと思ったら休みだったから」


 オーマイガー!

 それでうちに云々ということでしたか。

 私が着いたとき、トイレで席を外していた千佳が戻ってきて、懐かしい昔話に花を咲かせたのですが……。


 ちょうどこのころ、学校では先生の不祥事やいじめの問題が頻発しているころで。

 私の次男のクラスでも、先生が生徒を『馬鹿』と叱ったことで、緊急保護者会が開かれたりしていました。


「今の先生も大変だよね。昔はさぁ~……」


 なんて話しをしつつ。

 みなみ先生のストックや、小川おがわ先生の木製三角定規、教頭先生のデコピンの話題で盛りだくさん。

 岳本先生にしても、クラスメイトの男子を引っ叩いて口の中が切れてしまったとか、雪合戦のときに雪だるまの頭ほど大きな雪玉を男子生徒に投げて、よろけた生徒がポールに頭をぶつけて額を切ったとか、色々とやらかしていたのです。


「それでも、当時はそんなに問題にはならなかった感じだったよね?」


 と言うと、先生は苦笑いで「そんなことないよ」と言いました。

 当時も、そういう行為はやっぱり大問題になって、教育委員会から厳しく叱られたり、指導が入っていたそうです。

 今のように、緊急保護者会が開かれるほどではなかったけれど、参観日のあとの保護者会などでは、保護者から厳しく言われることもあったようでした。


 まあ、昭和だからいい、とか、昭和だから許される、という問題ではなかったということですね。

 場合や度合いにもよるんでしょうが、いつの時代でも『叩いて叱る』のは問題視されていたんですね。

 当然と言えば当然ですし、保護者によっては容認していたりもしたんでしょうが。


 単純に時代が変わって、先生の叱り方で緊急保護者会が開かれるようになったんだ、と思っていた私には、ちょっと意外な話を聞けました。


 自分の子どもを育てるのにも、なにが正解だかわからないまま時間が過ぎていくのに、先生ともなると他人の子どもの指導ですから、なにかと大変なことが多いだろうな……。

 などと、今でもニュースなどを目にするたびに、考えさせられたりします。

 今回は、そんな話でした。


 次回は、また時が戻ります。

 中学生の頃の話などを少し。

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それなりに幸せな昭和の乙女 釜瑪秋摩 @flyingaway24

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