第21話 昭和の先生。

 私の通っていた小学校では、武器(と言うと語弊がありますが)を持っている先生が数人いました。

 小川おがわ先生という女の先生は、算数の授業で使う木製の大きな三角定規をいつも小脇に抱えていましたし、羽田はねだ先生という女の先生は、黒板指し棒(伸縮するタイプで先端に白いゴムキャップがついている)を、五、六年生のときの担任だったみなみ先生は、スキーのストック(輪っかの部分を取り除いて、棒だけにしたもの)を。


 それらを、ただ持っているだけなら良いのですが、そんなワケがありません。

 当然(?)生徒を叱るときに使うのです。


 いたずらをしたり、うるさくして授業を妨害したりした同級生が、木製三角定規でお尻を叩かれたり、ストックや指し棒で頭を叩かれる姿を見るのは、日常茶飯事でした。


 それから、武器は持っていないんですが、中指が武器となっていた教頭先生がいました。

 教頭先生に叱られるときは、必ずと言っていいほど「デコピン」をされるのです。

 私も一度、されたことがあるんですが、もう、痛いのなんの……。

 額の中心が真っ赤になるので、叱られて呼び出されたあと、喰らったか否かは、額を見ればすぐにわかりました。


 五、六年の担任だった南先生。

 ストックを杖のようにいつも持ち歩き、授業中の黒板指し代わりにも使いつつ、話をちゃんと聞いていない生徒の頭にも、スコーンと一発食らわせてくるという……。

 南先生は背が高く、手も長いことに加えてストックの長さがあるものですから、教壇の上からでも、教室の真ん中程度までは軽く届くので、厄介でした。

 そのストックは、輪っかを外した部分には突起が残っていたため、生徒を叩くときには、持ち手側で叩くように、一応、気をつけていたらしいです。


 ある日、私の二つ隣に座っていた男子が、授業中にお喋りをしていて、南先生の餌食に。

 スコーン!

 といい音が響きました。いつも通りです。


「コラ! 喋ってばかりいないで、ちゃんと前を見てノートを書きなさい!」


 叱られて慌ててノートを書き始めた男子は、数秒後に大声をあげました。


「血だ!」


 見ると、机の上に開かれたノートに、血がポタポタと垂れていて、うつむいた男子の額に血の筋が……。

 すぐさま、保健室へと連れていかれ、戻ってきたときには頭にネットをかぶせられていて、どうやら学校の目の前にある病院で、数針、縫われたそうで……。


 先生曰く、いつもは持ち手のほうで叩くのが、誤って先端で叩いてしまい、突起部分で切れてしまった、と。


 今だと大問題になりますよね。

 私自身、そう思うんですが……。


 実は、もう二十年以上になるでしょうか。

 前出のCちゃんこと、千佳ちかに呼び出されたときに、とある話を聞くことになります。

 次回は、そんな話を少し。

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