第17話 動物のお話。その1

 時は少し戻ります。

 小学校三年生の時だったか、四年生の時だったか……少し記憶が曖昧ですが……。


 二軒隣の食堂に、幼なじみで同級生の男の子「Yくん」がいました。

 ある日、学校が休みの日曜日に、遊びに行こうと、弟と一緒に外へ出ると、Yくんと一緒にクラスメートの男子、HくんとMくんが固まって騒いでいます。


「なにしてるの?」


 見にいくと、三人の真ん中に、真っ白で長い毛がフワフワした子犬がいました。

 目がクリッとして子熊みたいな顔立ちです。


「可愛いーーー!!! 子犬、どうしたの?」


 触らせてもらいながら聞いてみると、Hくんのご近所で飼われている犬が子犬を産んで、貰い手を探していたというのです。


「うちで飼うんだ」


 と、Yくんはニコニコで子犬を可愛がっています。

 それがもう、羨ましくて羨ましくて。それになにより、子犬が可愛い!!!

 Hくんが言うには、あとまだ三匹残っていたそうで……。


 私と弟はすぐさま家に戻り、うちも犬を飼いたいと、母親に懇願しました。

 答えは当然のように「ダメ」です。


 こういうときに良く言われるのは、きっといつの時代も変わらないんだと思うのですが……。

 まず、うちが食堂で食べ物を扱っていること、それから、犬を飼うには散歩をしたり、お世話が必要なこと、一度飼ったら、要らないから捨てるというわけにはいかないこと、等々が上げられました。


 返す答えもきっと、いつの時代も変わらないと思いますが、ちゃんとお世話もするし、散歩もするから、と。

 食堂だからダメなら、なんでYくんも同じ食堂なのに飼えるのか、と。


 私も弟も結構粘ったので母親も気になったのか、一緒にYくんが貰って来た子犬を見に外へ出ました。

 動物が嫌いなわけでもないので、見たらやっぱり「可愛い」と思ったのでしょう。

 Yくんのご両親に本当に犬を飼うのか、など話を聞きはじめ、最終的に「じゃあ、飼ってもいいよ」となりました。


 ずっと様子を見ていたHくんとMくんは「飼うなら俺たちが貰ってきてやるよ」と、速攻で貰いに行ってくれて、私は白いフワフワの子犬が来るのを楽しみに待っていました。

 数分後、戻ってきたHくんの手に抱えられていたのは……。


 同じ白だけれど、Yくんの子犬とは違って毛足が短く、眠そうな顔をした柴犬みたいな子でした。

 フワフワじゃあないのはショックでしたが、貰ってしまうと「うちの子が一番」になるのはなぜなのか……!


 後で聞いた話では、柴犬とスピッツの雑種(いまではミックス?)だそうで、子犬もスピッツが強く出ている子と、柴が強く出ている子がいたとのことでした。

 フワフワの子のほうが、先に貰い手が決まったようです。見た目、可愛いですからね……。

 でも、柴は柴で、なんだかんだで可愛い。


 そんな感じで、二軒隣に兄弟犬がいる状態だったので、日中はどちらも店先に繋がれて、良く顔を合わせていました。

 散歩は家族で交代で、朝、昼、夜と行っていました。

 今だと室内飼いなんでしょうが、当時は番犬としての意味合いが大きく幅を利かせていたので父親が倉庫のようなデカい犬小屋を店の裏に作り、外飼いでしたね。


 夏の暑さも、今ほどじゃあなかったので大丈夫だったのでしょうが、今だとちょっと考えられないですよね。

 飼い方自体も、今よりも雑というか、適当というか……。

 放し飼いにしている家も結構ありましたし。


 ご飯も、ドックフードじゃあなく、残り物だったり猫まんまみたいなものだったり。うちもYくんの家も、ラーメンの残りを食べていることが多々ありましたし(塩分とかどうなっていたのか)

 犬ガムも、本当にたまーにお客さんがくれることがありましたけど、ガムよりも出汁を取った牛骨とか豚骨を貰っていましたし……。


 骨、丸かじり……中々、ワイルドですね。


 そんなふうにして、うちにやって来てくれたワンコ。

 まあ、色々とやらかしてくれるのですが、それはまた、別の話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る