第16話 存在感の強さ。

 中学に入学したころ。

 地元には、有名(?)な不良と呼ばれる人たちが何人かいました。

 私の通う中学校にも、そんな人たちがいて、地元周辺の大きな暴走族に入っているとか、ヤ〇ザの子どもだとか、嘘か本当か不明(とは言え99%本当)な噂があったり。


 当時、不良と呼ばれる人たちは、一目見てソレとわかる姿をしていて、男子なら学ランが足首までありそうな長さ、頬までありそうな詰襟、リーゼント。

 女子ならクルクルのパーマにお化粧、これもまた足首が隠れるほどの制服のスカート。

 中学はセーラー服だったんですが、スカーフが異様に短いか、身につけていないかのどっちか。


 ごく普通の生徒の私たちからみると、もう異世界の住人みたいな。

 彼らが歩いていると、私たちのような生徒はうつむいて目を合わせず、できる限り離れた場所を歩くという……。

 見た目が漫画やドラマの世界のようですから、遠目からガン見したりしていましたが。


 私が一年生のときの、三年生の先輩たちが、特に凄くて。

 三年生は校舎の一階、二年生が二階、一年生が三階だったので、部活や移動教室以外で他学年の階に行くことはありませんでした。

 ただ、学校には中庭があって、三年生が自分たちの教室から中庭に出て遊んでいる姿を良く見かけていました。

 遊んでいるのは、主に不良と呼ばれる人たちでした。


 ある日、ベランダでクラスメイトと話をしていると、中庭でキャッキャと笑う声が聞こえ、覗いてみると、案の定、強面の三年生たちが……。

 その中に、口ヒゲを生やした人がいて、私はめちゃくちゃ驚きました。


 ヒゲのある生徒を見たのは初めてで、そんなの、漫画やアニメでしか見たことがありません。

 実在している……それも中学生で!

 私が卒業するまでのあいだ、ヒゲの生徒を見たのは、その人だけでした。


 恐らく、というよりも、確実に普通のスタイルの生徒が多くを占めていたはずなんですが、昔の不良のスタイルは、圧倒的存在感があった気がします。

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