第10話 集落の不思議体験。

 私は怖いマンガや小説を読むのが大好きです。

 『本当にあった怖い話』は中学生のころから愛読しています。

 『リング』『アナザヘヴン』『仄暗い水の底から』なんかも読み漁っていました。


 が……。


 好きで読んでいることと、書けることは別問題です。

 ホラー……書けません。



 さて。

 前回の山の中の集落では、肝試し大会がありました。

 集落の子供会のようなところが主催です。

 私は、一度だけ参加させてもらいました。


 場所は、集落入り口にほど近い、山の中腹にある墓地です。

 墓地です……。


 古い墓地なので、土葬の名残りもあり、お墓参りのときなどは「踏んではいけない場所」も多々ありました。

 そんな中での肝試し、なかなかエグイ。

 地元では、お寺の敷地内くらいでしか見ない墓地でしたが、ここではお寺などなくても、山の斜面に並ぶ古びた墓石と卒塔婆……。

 雰囲気だけは、アリアリの現場。


 上級生の子たちがお化け役を担っていて、釣り竿にぶら下げられたこんにゃくが飛んできたり、墓石の後ろを誰かが走り抜けたり、高い位置に設置されたハンモックに隠れている子に、枝で体を突かれたりなど、あれこれ工夫が凝らされていました。


 一人で回るなら、きっと怖かったと思うんですが(明かりは懐中電灯しかない)

 二人一組で、仲良くなった集落の子と一緒だったので、そんなに怖くはありませんでした。


 そう簡単に、出るモノが出るワケでもないんだな、という感じでしたが……。


 一度、不思議なことがあって……。


 当時、私の家族と、叔母の家族は一部屋で寝ていました。

 田舎の家って、一間、やたら広い部屋があったりするんですよね。

 大人四人、子ども五人で、布団は隙間なく敷かれていましたが、とにかく、毎年、一間で寝ていたんです。


 夜中、不意に目が覚めた私は、窓がガタガタ音を立てているのに気づき、起き上がって窓を見ました。

 すると、誰かが窓を開けようとしています。

 当然、鍵が掛かっているので開かないんですが、白いTシャツ(?)を着た人が、一生懸命、開けようとガタガタ揺らしているのです。


 最初は、叔父さんが仕事から帰ってきて開けようとしているんだと思いましたが、仕事から帰ってきたんだとしても、夜中に窓を開ける意味が分かりません。

 普通に、玄関から入って、部屋の襖を開ければいいだけですから。


 結構な音がしているのに、誰も起きません。

 昭和ガラスと言われる、すりガラスに柄の入った窓だったので、誰の姿かはわかりませんが男の人なのは確かで、シルエットはハッキリ見えていました。

 時間にして五分程度、窓を開けようとしていた人は、開かないから諦めたのか、いなくなりました。

 ここへきて、ようやく叔母が目を覚まし……。


「今、誰かが窓を開けようとしていた?」


「うん。叔父さんだと思う」


「ええ……? こんな時間に?」


 叔母は不思議そうにしながらも追及せず、私に「もう寝なさい」とだけ言うと、また眠りにつきます。

 私もそのあとすぐに、眠ってしまいました。


 翌朝、叔母がその話をするかと思いましたが、話題に上ることはなく、結局、誰だったのかもわからずじまいです。

 数年後に、一度だけ叔母にその話をしましたが、叔母は覚えていませんでした。

 思い返すと、外灯も街灯もろくにないような場所で、真夜中にも関わらず、ハッキリと見えていたのも妙です。


 山の中の小さな集落です。

 住んでいる人以外が、来るような場所ではありません。しかも、夜中に。

 結局あれは、なんだったんだろう?

 今でも、思い出すと不思議な気持ちになります。

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