第8話 両親の実家、それすなわち、田舎。
学校の休みには、春休み、夏休み、冬休み、がありました。
母親の実家がある地域では、田植え休みなんて言うのもあったそうです。
時期も、若干のズレがあったり。
雪が多く降る地方では、夏休みが短めで、冬休みが長いなど、地域性が垣間見えることも。
長い休みの時期には、良く父親や母親の実家に泊まりに行くことが多くありました。
家が商売をしていると、学校が休みの日曜日でも、お店は休みではないため、遠出をすることはほとんどありません。
なので、夏休みなどで親が帰省するときはすごく嬉しいのと、町中にはないものがたくさんある田舎が、面白かったんですよね。
歳の近い従姉弟たちが集まることも多かったですし。
今回は、父の実家へ行ったときの話です。
父の実家は国道を挟んで両側を山に囲まれた、田畑ばかりの田舎でした。
家の前には一分も掛からない距離に小さくて浅い川が流れていて、夏場はそこで遊んだりも。
ある年、私は野イチゴがたくさん実っている場所を、つまみ食いしつつ虫取り(ここで言う虫取りとは、トンボやセミ、バッタなどで、断じて蜘蛛ではない)しながら遊んでいました。
そのとき、着ていたのは淡いピンク色のワンピースだったんです。
裾が割と大きく広がるタイプ。
野イチゴを取りながら、ふと、マンガなんかで良く見たシーンを思い出しました。
主人公たちが、スカートやエプロンの裾を持って広げ、そこに摘んだフルーツやお花を入れるシーンを。
一度、家へと駆け戻り、アミと虫かごを置くと、また野イチゴのあるところへ行き、広げたスカートに採れるだけ採って入れました。
気分はもう、少女漫画の主人公です。
野性味あふれる遊びをする昭和の子どもとはいえ、一応、乙女ですから。
そういうの、憧れちゃうお年頃ですから。
後先考えず、とりあえずやってみたいお年頃ですから。
ウキウキ気分で、あぜ道をスキップで帰っちゃったりして。
で、家に戻り、行きの電車で買っただるま弁当の容器に、摘んできた野イチゴをザザーッと入れたら――。
なんと!!!!!
驚くことに、ワンピースが赤く染まっているじゃあありませんか!!!
野イチゴの果汁がベッタリです。
母親に強烈に怒られたのはもちろんのコト、お気に入りのワンピースが染み残りして着れなくなった悲しさ。
まさに天国から地獄……。
思えば、マンガで広げたスカートに入っていたのは、リンゴみたいな皮のしっかりしたフルーツだったような気がします。
次回から、野イチゴを摘みに行くときは、ビニール袋を必ず持っていくようにしました(懲りてない)
そんな感じで、田舎では、自分の地元では見かけない、野生のあけびやザクロ、桑の実などをつまみ食いするという貴重な経験をたくさんしました。
これはまだ、田舎とは言え平地にあった父親の実家の話。
次回は、もう地名からして山の中だよね? という、母親の田舎のお話をしたいと思います。
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