第6話 桜は美しいだけではない。

※今回のお話は、ゾゾゾなお話になりますので、苦手な方は回避してください。心霊系ではなく、気色悪い系です。また、大丈夫だよ~、という方も、なるべくお食事中は回避してください※





















 では、行きます。


 私の通った小学校は、校庭をグルッと桜の木に囲われていました。

 桜だけでなく、松の木やイチョウ、栗の木にモクレン、椎の木や紅葉、ほかにも良くわからない木がたくさん植えられていました。


 小学校はそんなものなんですかね?

 主に落葉樹が多かったと思います。


 桜の季節は、それはもう見事な咲きっぷりで、見ごたえ抜群でした。


 ですが……。


 今でこそ、そう滅多に見なくなりましたが、当時は害虫の発生が著しく、花が終わって葉が茂ると、出てくるんです。


 アメリカシロヒトリ。


 蛾の幼虫、つまりは、毛虫。

 黒い体に白くて長い毛がもっさり生えているんですが……。

 これが、恐ろしいほどの数なんです。

 そして、すぐ落ちてくる。


 登下校などは、校門を入り校舎に行くまでのあいだ、嫌でも桜の木の下を歩かなければならないんですが、帽子や背中、肩などに、容赦なく落ちてきます。

 掃除の時間に、校庭の掃き掃除だったりすると、掃いているあいだにも落ちてきます。

 そうすると、大パニックです。


 背中にしろ頭にしろ、落ちてこようものなら「取って! 取って!」と大騒ぎしますが、取ってと言われても、触れるワケもなく、仕方なしに雑巾やほうきで叩き落とします。


 毛虫が体に付いている気持ち悪さと恐怖に比べれば、叩かれる痛みなど毛ほども感じません。

 それくらい、嫌でした。


 とにかく大量に発生しているものですから、恐ろしいことに、毛虫が葉っぱを食べる「シャリシャリ」という音が聞こえるほどで、それがまた恐怖を煽るんですよね……。


 遊具にも落ちてくるので、鉄棒に掴まろうとした瞬間、そこに毛虫がいて危うく触るところだった、なんてことは当たり前にありました。


 用務員さんが授業中に、タンクを背負って、シャワーのようなノズルで駆除用のスプレーを撒くんですが、相当、大変だったと思います。


 そして、そのスプレーのあとには、当然ですが、大量の残骸が広がります……。


 残骸を踏んで歩いた記憶はないので、きっと掃き集めて捨てられたんでしょうけれど、毛虫の残骸が大量にあるところなど、想像もしたくありません……。


 今はもう、アメリカシロヒトリを見ることはなくなりましたが、ネットなどで検索すると、地域によっては大量発生している場所もあるようなので、いなくなったワケではなさそうです。


 それにしても、春にはあんなに奇麗で見事な花を咲かせる木なのに、初夏には毛虫が群がって恐ろしい木になるというのは、なかなかのものです。

 また大量発生した、なんてことにならないといいな、と、桜の木を見るたびに願っています。

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