第二章 甘ったるい甘

徐々に甘くなる世界

第11話 許さんぞぉう


撃沈していた。

私が恥ずかしさのあまり。

何も言えない。

栄一郎にさりげない告白。

馬鹿じゃないの?調子に乗っている。


「おーい。大丈夫?」

「...江美子?」

「いや。ずっと顔を突っ伏しているから」


目の前に鶴島江美子(つるしまえみこ)が顔を見せた。

私の友人の様な存在の彼女。

顔立ちは隠れ美人とされている。

丸眼鏡を掛けており...詳しくは分からないが。


「...どしたの?」

「...告白した」

「...そっか...ぁ!?!!?」


そりゃそういう反応になるよね。

そして江美子は「もしかして彼に?」と聞いてくる。

私は頷きながら「全て告白した」と言う。

すると江美子は「そっか」と笑みを浮かべて前の席に腰掛ける。


「...遂にかー。ハラハラしていたから」

「だけど彼から返事は無かった。いや。これで良かった」

「え?どういう事?」

「恋のライバルが居る」

「...あー。そういう事か。モテるね。彼」

「そうだね。...そうだね...アハハ...」


私はフルフルと震えながら涙を浮かべる。

そして頭を抱えて撃沈した。

もう栄一郎の顔を見れないじゃないか。

そう思いながら居ると「彩香」と声がした。

よく見ると江美子が逃げている。


「...は、はい?な、何。栄一郎」

「お前の告白。あれは...事実か」

「...そ、そうですよ?事実ですけど何か?」


何じゃそりゃ!!!!!

思いながら私は苦笑というか何ともいえない顔になる。

教室中が注目していた。

まるで芸能人でも見つけたかの様な感じだ。


「...な、何。早くして」

「...俺は今は気持ちに応えられないぞ。なのに何で。お前に熱中していたのは解けたのに」

「あ...それ...ね。私、気にしてない」


そう言いながら私は栄一郎を見る。

栄一郎は「え?」となる。

私は「答えなんか求めてない。栄一郎は栄一郎らしく居て」と言う。

すると「...」と栄一郎は黙った。


「...」

「だ、だから。...今は答えなくて良いと思ったから」

「...分かった。お前の意見を尊重する」

「...そうだね」

「...だけどいつか答えは出す。...有難う」


そして栄一郎は戻る。

すると教室が落胆に包まれた。

「つまんね」という感じで、だ。

特に江美子達が「ハァ...('Д')」という首を振る感じになる。

何でやねん。

江美子が来た。


「...面白くないよ。もっと積極的にビシバシ攻め込まないと」

「そうそう」

「だよねー」

「そんなん出来る訳ないでしょ!!!!!」


私はそうツッコミを入れる。

すると教室のドアが開く。

それから「おにーちゃん」と顔を見せたのは...ナターシャだった。

教室が固まる。


「おま!?ナターシャ...」

「お兄ちゃんの香りを嗅ぎに来ました♪」

「アホかお前は!何をしている!!!!!」


教室のクラスメイトが固まっていた。

というか特に男子達が「前世で幾ら徳を積んだらアイツみたくなるのか」という感じで議論が始まっていた。

ナターシャは「お兄ちゃん。デートしよう」と言う。

私に気が付いているのか無いのか。


「お前な!学校でお兄ちゃんは内緒って言ったろ!!!!?」

「うん。そんな事を言っている場合でも無いから。...私のお兄ちゃんが奪われるかもだしねぇ」


言いながら私を見るナターシャ。

こ、こやつ。

そう思いながら私は「ナターシャさん。幾ら何でも」と言うと。

「お兄ちゃんの子供が欲しい」と言った。

教室が凍りつく。


「あー。殺すか?」

「おう。柴葉が居なくなればこの世界は安泰だ」

「それは思った。殺そうぜ」

「マジに美少女に何言わせてんだあの屑。マジ死ねよ」

「ヒャッハー!汚物は消毒だァ!!!!!」


武器を取り出し始める。

私は「ふむ」と呟いてから消火器を持った。

栄一郎が「待てお前ら!!!!?俺は何も悪くねぇぞ!!!!!」と慌てる。

すると根本君が「面白そうじゃないか。死ね柴葉」と栄一郎の手足を取る。


「お前な!!!!!お前らァ!!!!!特にナターシャ!貴様!!!!!」


すると栄一郎の前にナターシャが出た。

それから「待って待って。皆さん。...お兄ちゃんの下半身だけは攻撃しないで。精子がストレスで減っちゃう」と言った。

その言葉で教室のボルテージがマックスになった。

そして「ぶっ殺せぇ!!!!!」となる。



コチョコチョの刑に処された。

そして俺は馬鹿どものせいで軽く失禁しそうになった。

全くコイツら。

そう思いながら俺は目の前の爆笑している根本を見る。


「まあ良いじゃないか。愛されるのは」

「お前が逃がさなかったからろくでもない目に遭ったわ」

「この教室って面白いよな」

「論外だぞ」


俺はそう思いながら服装を整える。

それから盛大に溜息を吐く。

すると根本が「まあ...やらずに後悔するよりかはやって後悔の方が良いからな」と微笑んでから俺を見る。

馬鹿かコイツ。


「俺が死ぬわ」

「だけどそれだけ愛されているって事だ。クラスメイトにもな」

「...やれやれ」


そして俺は溜息を吐いていると「栄一郎」と声がした。

顔を上げると彩香が立っている。

な、何だ。

そう思いながら俺は彩香に赤面する。


「職員室に用事がある。一緒に行って」

「何でだよ。お前」

「用事があるの!」

「...そ、そうですか」


俺は強く言う彩香に赤面しながら面倒臭い感じで立ち上がる。

それからそのまま彩香の後ろを付いて行く。

そして歩いていると教室とは別の方角に彩香は行く。

どこに行くんだ。


「おい?職員室はそっちじゃない...」

「視聴覚室。さっきの教室にも用事があるの」

「は?」

「良いから。忘れ物」


そして俺は意味不明のまま視聴覚室に来る。

開けてから中に入った途端。

いきなりガチャンと鍵を閉められた。

それも...彩香に。

な、に?!


「あ、アハハ。わ、罠にはまったね」

「...わ、わな?」

「...こうした方が...効率が良いって虹が言っていたから」

「冗談はよせ。全く」

「...冗談?わ、私は...ほ、ほ、本気だけど」


じりじりと近付いて来る彩香。

俺は壁際まで追いつめられてしまう。

そして暗い密室で2人だけになる。

ちょ、マジに。

冗談ですよね?!

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