第二章 甘ったるい甘
徐々に甘くなる世界
第11話 許さんぞぉう
☆
撃沈していた。
私が恥ずかしさのあまり。
何も言えない。
栄一郎にさりげない告白。
馬鹿じゃないの?調子に乗っている。
「おーい。大丈夫?」
「...江美子?」
「いや。ずっと顔を突っ伏しているから」
目の前に鶴島江美子(つるしまえみこ)が顔を見せた。
私の友人の様な存在の彼女。
顔立ちは隠れ美人とされている。
丸眼鏡を掛けており...詳しくは分からないが。
「...どしたの?」
「...告白した」
「...そっか...ぁ!?!!?」
そりゃそういう反応になるよね。
そして江美子は「もしかして彼に?」と聞いてくる。
私は頷きながら「全て告白した」と言う。
すると江美子は「そっか」と笑みを浮かべて前の席に腰掛ける。
「...遂にかー。ハラハラしていたから」
「だけど彼から返事は無かった。いや。これで良かった」
「え?どういう事?」
「恋のライバルが居る」
「...あー。そういう事か。モテるね。彼」
「そうだね。...そうだね...アハハ...」
私はフルフルと震えながら涙を浮かべる。
そして頭を抱えて撃沈した。
もう栄一郎の顔を見れないじゃないか。
そう思いながら居ると「彩香」と声がした。
よく見ると江美子が逃げている。
「...は、はい?な、何。栄一郎」
「お前の告白。あれは...事実か」
「...そ、そうですよ?事実ですけど何か?」
何じゃそりゃ!!!!!
思いながら私は苦笑というか何ともいえない顔になる。
教室中が注目していた。
まるで芸能人でも見つけたかの様な感じだ。
「...な、何。早くして」
「...俺は今は気持ちに応えられないぞ。なのに何で。お前に熱中していたのは解けたのに」
「あ...それ...ね。私、気にしてない」
そう言いながら私は栄一郎を見る。
栄一郎は「え?」となる。
私は「答えなんか求めてない。栄一郎は栄一郎らしく居て」と言う。
すると「...」と栄一郎は黙った。
「...」
「だ、だから。...今は答えなくて良いと思ったから」
「...分かった。お前の意見を尊重する」
「...そうだね」
「...だけどいつか答えは出す。...有難う」
そして栄一郎は戻る。
すると教室が落胆に包まれた。
「つまんね」という感じで、だ。
特に江美子達が「ハァ...('Д')」という首を振る感じになる。
何でやねん。
江美子が来た。
「...面白くないよ。もっと積極的にビシバシ攻め込まないと」
「そうそう」
「だよねー」
「そんなん出来る訳ないでしょ!!!!!」
私はそうツッコミを入れる。
すると教室のドアが開く。
それから「おにーちゃん」と顔を見せたのは...ナターシャだった。
教室が固まる。
「おま!?ナターシャ...」
「お兄ちゃんの香りを嗅ぎに来ました♪」
「アホかお前は!何をしている!!!!!」
教室のクラスメイトが固まっていた。
というか特に男子達が「前世で幾ら徳を積んだらアイツみたくなるのか」という感じで議論が始まっていた。
ナターシャは「お兄ちゃん。デートしよう」と言う。
私に気が付いているのか無いのか。
「お前な!学校でお兄ちゃんは内緒って言ったろ!!!!?」
「うん。そんな事を言っている場合でも無いから。...私のお兄ちゃんが奪われるかもだしねぇ」
言いながら私を見るナターシャ。
こ、こやつ。
そう思いながら私は「ナターシャさん。幾ら何でも」と言うと。
「お兄ちゃんの子供が欲しい」と言った。
教室が凍りつく。
「あー。殺すか?」
「おう。柴葉が居なくなればこの世界は安泰だ」
「それは思った。殺そうぜ」
「マジに美少女に何言わせてんだあの屑。マジ死ねよ」
「ヒャッハー!汚物は消毒だァ!!!!!」
武器を取り出し始める。
私は「ふむ」と呟いてから消火器を持った。
栄一郎が「待てお前ら!!!!?俺は何も悪くねぇぞ!!!!!」と慌てる。
すると根本君が「面白そうじゃないか。死ね柴葉」と栄一郎の手足を取る。
「お前な!!!!!お前らァ!!!!!特にナターシャ!貴様!!!!!」
すると栄一郎の前にナターシャが出た。
それから「待って待って。皆さん。...お兄ちゃんの下半身だけは攻撃しないで。精子がストレスで減っちゃう」と言った。
その言葉で教室のボルテージがマックスになった。
そして「ぶっ殺せぇ!!!!!」となる。
☆
コチョコチョの刑に処された。
そして俺は馬鹿どものせいで軽く失禁しそうになった。
全くコイツら。
そう思いながら俺は目の前の爆笑している根本を見る。
「まあ良いじゃないか。愛されるのは」
「お前が逃がさなかったからろくでもない目に遭ったわ」
「この教室って面白いよな」
「論外だぞ」
俺はそう思いながら服装を整える。
それから盛大に溜息を吐く。
すると根本が「まあ...やらずに後悔するよりかはやって後悔の方が良いからな」と微笑んでから俺を見る。
馬鹿かコイツ。
「俺が死ぬわ」
「だけどそれだけ愛されているって事だ。クラスメイトにもな」
「...やれやれ」
そして俺は溜息を吐いていると「栄一郎」と声がした。
顔を上げると彩香が立っている。
な、何だ。
そう思いながら俺は彩香に赤面する。
「職員室に用事がある。一緒に行って」
「何でだよ。お前」
「用事があるの!」
「...そ、そうですか」
俺は強く言う彩香に赤面しながら面倒臭い感じで立ち上がる。
それからそのまま彩香の後ろを付いて行く。
そして歩いていると教室とは別の方角に彩香は行く。
どこに行くんだ。
「おい?職員室はそっちじゃない...」
「視聴覚室。さっきの教室にも用事があるの」
「は?」
「良いから。忘れ物」
そして俺は意味不明のまま視聴覚室に来る。
開けてから中に入った途端。
いきなりガチャンと鍵を閉められた。
それも...彩香に。
な、に?!
「あ、アハハ。わ、罠にはまったね」
「...わ、わな?」
「...こうした方が...効率が良いって虹が言っていたから」
「冗談はよせ。全く」
「...冗談?わ、私は...ほ、ほ、本気だけど」
じりじりと近付いて来る彩香。
俺は壁際まで追いつめられてしまう。
そして暗い密室で2人だけになる。
ちょ、マジに。
冗談ですよね?!
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