第7話 愛


翌日の事だったが。

俺はナターシャに呼び出された。

そして俺は「?」を浮かべながらそのまま公園までやって来る。

公園に呼び出されたのだが何だ?


「おにーちゃん」

「...何をしているんだお前は」

「ちぇ。面白みが無いよー」

「無いに決まっているだろう。何をしているのだ」

「見て分かる通りだよ。おにーちゃん。ほれほれ」


そして背後を見ると俺は赤面した。

何故なら相当な美少女が立っていた。

化粧を少しだけしており。


あまりの美人に俺は見惚れてしまう。

何というか...け、化粧だけで人ってこんなに変わるのか。

そう言えるぐらいだった。

大人びた姿に...外出着にしては表現が下手で申し訳無いが美しいものを着ている。


「おにーちゃん。どうかな?私、生まれて初めてお化粧した」

「っ...!」

「えへへ。おにーちゃんは美しい人には目が無いね」

「...揶揄うな。お前」


クソッタレ腹立たしい。

あまりに美女すぎた。

なんでここまでコーデをしているのかさっぱりだが。

あくまで目がそっちに向いてしまった。

それは認めざるを得ない。


公園にわずかながら居るカップルですら「うぇ!?」とかなっているしな。

モデルとかじゃない。

これは...女神だ。

そう思いながら俺は顔を背ける。


「ねえねえ。おにーちゃん」

「な、何だ」

「今度、デートしよう」

「な、何でだよ。俺が今は嫌っての知っているのか」

「デートじゃ無かったら良いの?」

「で、デートじゃないってのは」

「例えば食事に誘っているとか」

「それはデートと言うじゃないか」

「じゃあお買い物」

「ふざけんなそれもデートだろ」


「じゃあ何なら良いの。付き合って」と言ってくるナターシャ。

ああ良かった。

ここはナターシャだ。

しっかりナターシャだ。

あまりに目がいってしまっていた。

美しい。


「ねえ。変態お兄ちゃん」

「何だ!?変態って!!!!?」

「だって目がいやらしい。スケベ。私の胸とか見ているし」

「...そんな事はない。そもそもそこを少しだけ開けた服を着ているお前が...」

「ふむ。お兄ちゃんはスケベっと」

「書くな!」


ノートにあれこれ記載するナターシャ。

馬鹿野郎かコイツは。

罠に嵌めやがって。

そう思いながら「食事なら付き合うから。変な事を書くな」と慌てる。


「じゃあお兄ちゃん。今度の土曜日ね」

「待て。勝手に予定を決めるな」

「えっちなおにーちゃんに決める権力はありませーん」

「んぐぅ」

「おにーちゃん。あまりに目に余る時はおにーちゃんのお友達に言うから」

「んぐぅ!それだけは止めてくれ」


俺は慌てながら咳払いをする。

ったくコイツは。

そう思いながら居るといきなりナターシャが俺の腕を取った。

それから恋人結びをする。

何をしている!?!?!


「コラ!?何をしているんだ!」

「恋人結び。私とおにーちゃんが結ばれる様に」

「結ばれる様に。じゃない!何でだよ!」

「私はあくまでおにーちゃんが好き。...おにーちゃんが好き。...昔から」

「...」

「...ねえ。おにーちゃん。約束。忘れて無いよね」


確かに約束はした。

それも10年前のナターシャが熱を出している時に約束した。

何を約束したか。


それは...許嫁になるという約束。

ナターシャが言い出した。

ただしこれは俺とナターシャの間で条件があった。

それは何か。


「ナターシャを貰うぐらいなら俺が医者になる位の天才にならない限りは駄目だ。老後の資金とか集めないとな。現実は厳しい」


そう言ったのだ。


「...だが俺は天才になってない。だから失敗した。その約束は破棄だ」

「確かにお兄ちゃんは天才にはなってない。だけど...その代わりに私が天才になってみせる。だから...お兄ちゃん」

「...」


気持ちは分からんでもない。

だけど俺は誓った思いがある。

だから俺はその気持ちに反する訳にはいかない。

そう思いながら俺は潤んだ目を向けてくるナターシャに「すまない」と言う。

するとナターシャは「...だよねー」と言った。


「おにーちゃんならそう言うと思った」

「...いや待てお前。ジョークで言ったのか」


俺から恋人結びを外したナターシャは首を振る。

ジト目になる俺。

するとナターシャは「真面目にお兄ちゃんが好きだけど?」と胸を張る様に言う。

俺は赤面しながら「分かったから」と言い聞かせる。


「だけどお兄ちゃんはそう言って頑張る。そう言う性格って知っているから。おにーちゃんが好き」

「...!」

「私、おにーちゃんが好き。...あの女性よりも遥かにこの想い届け」

「...は?あの女性って誰だ」

「おにーちゃんの腐れ縁とされる女性だよ」

「何をふざけた事をまた言っているんだお前は。そんな訳あるか」


「うん?果たしてそうでしょうか?」と首を傾げるナターシャ。

そんな事がある訳が無い。

ジョークが過ぎる。

そう思いながら俺はナターシャに怒る。


「ナターシャ。幾ら何でも嘘は良くない」

「嘘?そっかー。おにーちゃんは嘘って言うんだね」

「有り得ない。...アイツが俺を好きってのは。当てずっぽうで言うもんじゃない」

「まあそれならそれでも良いけどね」


そう言いながらナターシャは苦笑する。

適当な事ばかり言いやがって全く。

良くない。

そういうのはな。

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