第6話 愛しているから、だから苦しいよね
根本君は私を公園のベンチに座らせた。
それから横に根本君が腰掛ける。
私を見てから苦笑する様な反応を見せる。
その姿に聞くのが癪だったがどうしても聞きたくて「根本君。さっきの話だけど」と言ってみる。
すると根本君は最初から覚悟していたかの様な反応を見せた。
「うん。さっきの恋をした女性の話だよね」
「...そう。...何があったの?」
「簡単にいえば取られた、と言えるかもね」
「それって相手に取られたって事?」
「そうだね。俺は選ばれなかった。ただそれだけだよ。だけどそれでも彼女を愛していたから悔しかったけど」
「...その話は...栄一郎には」
「勿論してない。...アイツの事は根っから応援したいから」
「そんな余計な異物は必要は無いからね」と言いながらブラックコーヒーを飲む根本君は私を見た。
そして「君はさっきも言ったけど後悔はしない様にね」と言ってくる。
「あまり油断していると取られるぞ」とも。
「...私、怖いけど...だけどそれも運命かなって思う」
「どうして?何が運命なの?」
「私、取られちゃっても仕方が無いのかなって思うんだ。魅力無いし。久峰さんみたいな...可愛いキャラでもない」
「そうは思わないな。俺は。それ謙遜だよ」
「謙遜じゃ無いよ。可愛くない」
そう言いながら私はお茶を飲む。
そして何故かそのお茶のせいか暖かなせいか。
涙が出てきた。
私は涙を拭ってから涙を拭うが。
涙が止まらなかった。
「...恋って大変だよね」
「...私は...別に」
「否定しなくても良い。俺は絶対に外部には漏らさない。約束する」
「...何で根本君はそんなに大人なの」
「大人じゃないよ。...ただクソッタレがマシな方に進化しただけ。...俺は根っこは子供で屑だよ」
「そんな事ない。私は大人だって思う。見直した」
「アハハ。有難うね」
根本君は缶コーヒーを飲む。
それから空を見上げる仕草をする。
私は涙をハンカチで拭ってから「根本君。私は...負けたくないんだけど何かあるかな。策は」と聞いてみる。
何を言っているんだ。
「策は無い。...だけど君が全てをアピールするんだ。諦めたら負けだぞ。どっかの先生が言っていたけど諦めたら試合終了だ」
「...根本君は応援してくれる?」
「そりゃ勿論。俺は...君の行動が100回目の告白に繋がる様にする。君の性格が好きだからね」
「...有難う」
そして私はお茶を飲んでから立ち上がる。
根本君は「もう大丈夫かい」と聞いてくる。
私は「...まだ大丈夫じゃないかもだけど。もう平気だよ」と笑みを浮かべた。
すると根本君は「そうか」と返事をして柔和になる。
それから私達は別れてから私は家に帰る。
すると「おねーちゃん」と声がする。
その声の主は吉田虹(よしだにじ)だった。
☆
「虹。どうしたの?」
「どうしたのって言われたら部屋を出ている、かな」
「...そう」
虹。
彼女は...天才だ。
天才過ぎて学校に行けてない感じの中学生。
虹はIQが130ある。
だから日本の学校が性に合わないそうだ。
「またもしかしてパソコン作っていたの?」
「パソコンもそうだけどスーパーコンピュータ作ってた」
「...???...そうなんだ。今度見せてよ」
「良いよ」
耳までのヘアーに。
顔立ちは私よりも男前な顔をしている。
ホストみたいな顔だ。
身長も高い。
だけど。
「...今日も学校には行けなかった?」
「性に合わないから」
「...大変だね。ギフテッドって」
「別に大変じゃないよ。...ただ学校の連中がウザい、かな」
「...うん」
「...そういうお姉ちゃんはどうしたの?何だか...恋をしている様な顔だけど」
ぎくぅっとなる私。
どいつもこいつも何でそんな事が分かるのだ。
そう思いながら私は慌てて咳払いをする。
それから「虹。違うから」と言うが。
虹はニヤッとした。
「相手は?もしかして99回告白されたって人?」
「違うし!」
「違わないんだ。成程ね。で?今日は100回目?」
「...違うし...」
「あれ?」
虹は「?」を浮かべて悲しげな顔の私を見る。
私はその様子に苦笑いを浮かべ「告白は打ち切られた」と言う。
顔を覗き込んでいた虹が「何で?」と目をパチクリしながら聞いてくる。
私はその言葉に「実は」と全てを説明する。
「成程。相手様が目を覚ましちゃったって訳」
「そうだね。...それでもう告白はしないって言ってきた」
「そっかー。じゃあ...何か薬飲ませる?」
「駄目に決まっているでしょ!」
「だって悔しいじゃん。それ。私の自作パソコンで確率を計算して...」
「いや。良いから。そんな事しなくて」
私は首を振る。
そして虹を見た。
すると虹は「じゃあどうするの」と言ってくる。
私は胸に手を添える。
それから「で」と言う。
「...で?」
「デートに誘う」
「...んぅ!ぴゅあ!」
「...こ、これでも精いっぱいなんだけど」
「うぅ!ピュア!」
「胸がどきめき!」と言ってくる虹に怒る私。
それから頬を膨らませていると「まあお姉ちゃんにしては頑張っている方だね」とニコニコした。
そして「デートの服装は?」と聞いてくる。
私は「キャラクターもののT...」とそこまで言ったのだが「やめーや」と即座に突っ込まれた。
実は私は服のセンスが無いのだが。
そんな直ぐに否定しなくても良いじゃない。
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