第5話 根本和幸の後悔
☆
お兄ちゃんが何だかデートをしていた。
相手の人はとっても凄い美人だった。
だけど私自身も負けてない。
それだけ美少女だ。
相手の...彩香さんという人はお兄ちゃんの腐れ縁だという。
だけどその様子にしてはおかしい気がする。
私は考えながらお兄ちゃんと一緒に帰る。
「お兄ちゃん。彩香さんとは腐れ縁なの?」
「そうだな。幼馴染ではないけど友人だ」
「...ふーん...」
「な、何だよ」
「それにしては仲が良すぎでは?」
「そんな馬鹿な」とお兄ちゃんは否定する。
それから「気のせいだよ」と何故か複雑そうな顔をする。
何故そんな顔をするのか分からないが。
だけどお兄ちゃんがそう言うなら。
「ねえ。お兄ちゃん」
「ああ。どうした?」
「私、お兄ちゃんが好き」
「ああ。そうなのか」
「そうなのか、じゃないよ。本当に好きだから」
「はいはい」
またそうやって子ども扱い。
私は頬を思いっきり膨らませながらお兄ちゃんを見る。
お兄ちゃんは「じゃあまた明日な」と言う。
私は「お兄ちゃん。今日はお兄ちゃんの家に泊まる」と言う。
「...そんな馬鹿な。許されないだろ」
「いや。絶対に泊まる。この気持ちが伝わるまで」
「...いや。お前はまだ子供。伝わらない」
「むきー!!!!!」
私は怒った。
それから「そこまで言うなら証明してやろうではないか」と私は切り出す。
そして私はお兄ちゃんの腕に寄り添う。
艶めかしい顔をする。
「お、おい」
「お兄ちゃん。一緒にベッドに行こう」
「いや。興奮しない。お前じゃ」
「むきー!!!!!!!!!!」
どうしたら良いのだろうか。
そう思いながら私は落ち込む。
それから考えているとお兄ちゃんが溜息を吐いた。
そして私の額に手を添える。
「安心しろ。お前の気持ちは嘘偽りなく俺に対する好意だと思う」
「...お兄ちゃん?」
「だけど俺はそんな感情には今はならないんだ。...ゴメンな」
「...お兄ちゃん...」
「俺はお前が好きだよ。だけどそれは好意じゃない。...ただお前を大切にしたいっていう気持ち。だけどお前の感情は良く分かる。俺が好きだって」とお兄ちゃんは私を見ながら言ってくる。
私は何だか急速に恥ずかしくなった。
それから俯いていると「ナターシャ。お前は可愛い。そしてモテモテだろう。だけどその中で俺を好いてくれているのが...奇跡だよ」と頭を撫でられた。
「...お兄ちゃん...」
「ゴメンな」
「うん。だいじょぶ。元気になった」
「...うん。これからも宜しくな」
そして私は感情がどくどくなりながらそのままお兄ちゃんと別れる。
それから私はそのまま家に帰る。
玄関で崩れ落ちた。
あまりに心臓がバクバクなり過ぎて、だ。
お兄ちゃんが滅茶苦茶、格好良い。
「昔から好きだからね。お兄ちゃん」
そんな事を呟きながら私は立ち上がる。
それから鞄を下ろしてからそのまま鼻歌交じりで行動をした。
というかよく考えてみたんだけど。
デートぐらいなら誘っても良いよね?
☆
私は心底焦っていた。
何故焦っているかといえば正直言ってしまうと。
彼女。
久峰さんという脅威が出て来たから、だ。
「...」
こんな感情になるなんてな。
私の栄一郎がとられてしまうかもしれない。
そんなの嫌だ。
あのポジションは私のポジションだ。
だから奪われたくない。
「...だけどなぁ」
そんな事を呟きながら私は歩いていると「おや」と声が。
顔を上げるとそこに根本君が居た。
根本君は「どうしたの?」と笑みを浮かべている。
私は「い、いや。何でもないよ。根本君」と言った。
「それは嘘だな。...もしかして柴葉の事か?」
「え!?そ、そんな事は...」
「まあ俺で良かったら話を聞くさ。...どうしたんだ?」
「...誰にも言わない?」
「言わない。...俺、口だけは堅いから」
そう言いながら根本君は持っているビニール袋から何かを取り出す。
それはペットボトルのお茶だった。
私に差し出してくる。
そのお茶に「え!?い、いいよ」と言うが。
根本君は「まあまあ。お茶でも一杯飲んでから話を聞くよ」と公園を差し示す。
「...根本君って変な所で紳士だよね」
「俺はこれでも彼女を失った。...良く分かるのさ」
「...」
「...もしかしてだけどさ。君、柴葉が好きだろ?」
「え!!!!?」
「隠さなくて良い。...俺はアイツには絶対に話さない。あくまでそういうのは墓場まで持って行くよ」
「...私はそんな事は...」
「そんな事は...」と俯く私。
それから複雑な顔をする。
胸が痛い。
あの子に栄一郎が取られてしまうかも知れないという事が。
「吉田さん。これは俺からのアドバイスだけど」
「...?」
「行動するなら早めにしな。...後悔した時はマジに全てが遅いから」
「...根本君...」
「俺はそうやって彼女を失ったから」
「...!」
私はそう思いながら根本君を見る。
根本君は肩を竦めて苦笑しながら悲しげな感じで空を見上げた。
私はその姿に目線を逸らした。
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