第4話 らいば、る?

「ね、ねえ。タピオカミルクティー飲んで行かない?」

「え?...だが...」

「良いじゃん。私、飲みたい」

「...まあ彩香が飲みたいなら行くけど」


私は強引に彼をカフェに誘う。

それから私はタピオカミルクティーを注文した。

今更タピオカ、と思うかも知れないけど。


正直そんなのどう言われようがどうでも良かった。

栄一郎と話をして情報を得たかったから。

彼はタピオカハーブティーを注文する。

それから2人でスタンドで飲む。

すると栄一郎が言いずらそうな感じで切り出してくる。


「...なあ。彩香」

「う、うん。何?」

「...俺さ、彩香って呼ぶのも止めようと思うんだ」

「...え?...え?な、何で」

「馴れ馴れしいだろ?これ。...俺が調子に乗ったって事だ」


私はどんどん悪い方向に行く今の状況に悲しげな顔をする。

気が付くと否定していた。

「そんなの嫌」という感じで、だ。

すると栄一郎は「え?」となって顔を上げた。


「...わ、私達の関係はあくまで偽物じゃないでしょ。...くだらないかもしれないけどこの関係は偽物じゃない。だからそれだけは止めて。お願い」

「しかしウザいだろ。俺が」

「そんな事ない。お願い」

「...そこまで言うなら止めないよ」


何とか私は否定する事が出来た。

それから私を彩香のまま呼んでくれる栄一郎を見る。

栄一郎は柔和な顔でタピオカティーを飲んでいた。


私はその顔に拳を握る。

そして手を開いてから「ね、ねえ」と意を決した。

最大の意を決した。


「彼女...作らないの」

「...彼女?」

「うん。彼女。...彼女...居ないの」

「居る訳ないだろ。正直、お前にずっとちょっかいをかけていたんだから」

「...!」


ぱあっと視界が明るくなる。

それから心臓が高鳴る。

そうか彼女は居ないのか。

そう思いながら私は胸に手を添える。


「...で?何でそんな事を聞くんだ」

「ふぁ!?そ、それは別に何でも良いでしょ」

「...うーん。意味が分からん」


そんな感じで居るとタピオカ屋に女子が入って来た。

女子が、だ。

するとその女子が「あれ?お兄ちゃん」と栄一郎に声を掛ける。


クォーターっぽい女子だった。

別の高校の制服を着ている...というか問題はそこじゃない。

銀髪の究極のモデルの様な少女だった。

その容姿はまるで女神と言える。

一言で言えば私の容姿に近いぐらいの美少女だった。


「だ、誰?」

「え?ああ。近所のスワロ・ナターシャ・久峰(ひさみね)だ。俺の幼い頃からの...」

「彼女です」

「...嘘ばっかり吐くな。...お前という奴は」

「お兄ちゃんは浮気者だね」

「あのな...」


久峰...さん。

私は青ざめながらも正気を保ってから「正式にはどういう関係?」と咳払いして聞いてみる。

すると久峰さんは「幼馴染です」と答えた。

「近所付き合いの」と笑顔で、だ。


「...へー。まあ一言も聞いてないけど。...栄一郎の変態」

「...お前誤解を生む様な発言は止めてくれ」

「?...ところで此方はどちら様?お兄ちゃん」

「この子は俺の腐れ縁の女子」

「そ、そう」


「ふーん」という感じで反応する久峰さん。

それから「お兄ちゃんとはそういうご関係で?」と詳しく聞いてくる。

私は「ち、違う!!!!?」と思いっきり否定した。

そして私は慌てて「栄一郎とは...」と言う。


「じゃあ私の恋人でも良いですよね?」

「はい?」

「私、お兄ちゃんのお嫁さんになるつもりです」

「「...はぁ!!!!?」」


私もそうだが栄一郎も唖然とした。

「は!?初耳だぞ!ふざけんな!」という感じで慌てる。

久峰さんは「お兄ちゃんは初耳かもだけど私は決めているから」と栄一郎に縋る。

胸がぽよんぽよん当たっている。

私は思わず私の胸と区別してしまう。


「冗談は止めろ。全く」

「えー。冗談じゃないよー。私、高校生になったんだよ?」

「高校生だからなんだ。俺らはクソガキだぞ。何も出来ん」

「でも妊娠できるじゃん?」

「...」

「...は!?」


「なに、を何を言っているんだ!?」と栄一郎は慌てて真っ赤になって周りを見る。

野次馬が集まっている。

私は愕然としながらその姿を見る。

これは...またとんでもないライバ...じゃない。

私にとっては脅威になる少女だ。


「ね、ねえ。久峰さん。その。人前でそれは...」

「うーん。でも私、子供が欲しいしね。お兄ちゃんの」

「...」


栄一郎は久峰さんを引き摺って行く。

私もそれに付いて行ってから外に出た。

栄一郎は久峰さんの肩を存分に揺らし始める。

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