第15話 「小さな奇跡 - コペンハーゲン編」
私たちはデンマークの美しい首都、コペンハーゲンに到着した。運河に沿って並ぶカラフルな家々と、歴史ある建物が絵画のように美しい風景を作り出していた。爽やかな風が街を包み込み、私たちの心も軽くしてくれる。次なる依頼人は、地元の小さなベーカリーを営むエミリー・アンデルセンさんだった。
---
「探偵さん、どうか助けてください。私たちの看板犬、オスカーが突然いなくなってしまったのです。」エミリーさんは涙ながらに訴えた。
「オスカーがいなくなったのはいつのことですか?」私は優しく尋ねた。
「昨夜、閉店後にいつも一緒に散歩をしていたのですが、その途中で突然見えなくなってしまったのです。」エミリーさんは悲しそうに答えた。
---
その話を聞いている間、私は前日にエミリーさんのベーカリーで過ごした楽しい時間を思い出していた。エミリーさんは私たちに看板犬のオスカーを紹介してくれた。オスカーは可愛らしい茶色のコッカースパニエルで、くるくるした毛並みと愛らしい瞳が特徴的だった。
---
前日、ベーカリーのテラスで涼介とコーヒーを楽しんでいると、オスカーが私たちの足元にやってきて、私の足にじゃれてきた。「こんにちは、オスカー。」私は微笑みながらオスカーの頭を撫でた。
オスカーは嬉しそうに尻尾を振り、私に向かってボールを持ってきた。「遊びたいのね。」私はボールを投げ、オスカーがそれを追いかけるのを見て楽しんだ。涼介もその様子を見て微笑んでいた。
「オスカーは本当に可愛いわね。」私はオスカーがボールを持って戻ってくるたびに、優しく声をかけた。
エミリーさんも嬉しそうにその様子を見ていた。「オスカーは私たちの家族の一員なんです。お店に来るお客さんも、オスカーに会うのを楽しみにしているんですよ。」
---
その温かい思い出を胸に、私たちはまず、エミリーさんのベーカリーとその周辺を詳しく調査することにした。ベーカリーは可愛らしい外観で、地元の人々に愛されていることが一目で分かる。パンの香ばしい香りが街に広がり、温かい雰囲気が漂っていた。
「まずは散歩コースを辿ってみよう。」涼介が提案した。
---
私たちはエミリーさんの案内で、オスカーがいなくなった場所まで歩いた。運河沿いの美しい散歩道は、観光客や地元の人々で賑わっていた。木々の緑が目に優しく、春の花々が咲き誇っていた。途中、オスカーの写真を見せながら、人々に話を聞いてみることにした。
---
「見かけたことがありますか?」私は通りすがりの女性に尋ねた。
「はい、昨夜遅くに、あのカフェの前で見かけました。」女性はオスカーの写真を指差しながら答えた。
「そのカフェを調べてみよう。」涼介が言った。
---
私たちは女性が指差したカフェへ向かった。カフェは古い石造りの建物で、温かみのある灯りが店内を照らしていた。店内には、アンティークの家具と可愛らしいデコレーションが施され、居心地の良い空間が広がっていた。店主は温かく迎えてくれ、オスカーについての情報を教えてくれた。
「昨夜、オスカーを見かけました。とてもお利口で、少し疲れているようでしたので、カフェの中で休ませていました。」店主は笑顔で語った。
「今、オスカーはどこにいますか?」私は尋ねた。
「少し前に、近くの公園に連れて行きました。子供たちと遊ぶのが好きなようです。」店主は答えた。
---
私たちは急いで近くの公園へ向かった。公園では子供たちが楽しそうに遊んでおり、オスカーもその中に混ざって元気に駆け回っていた。公園の風景は、広い芝生と大きな木々が影を落とし、春の陽光がキラキラと輝いていた。湖では白鳥が優雅に泳ぎ、ベンチに座る人々は読書を楽しんでいた。
「オスカー!」エミリーさんは涙を浮かべながら叫んだ。
オスカーはエミリーさんの声に反応し、嬉しそうに駆け寄ってきた。エミリーさんはオスカーをしっかりと抱きしめ、再会の喜びに涙を流していた。
---
「本当にありがとうございます。オスカーが無事でよかったです。」エミリーさんは感謝の気持ちを込めて言った。
「こちらこそ、お役に立ててよかったです。」私は微笑みながら答えた。
---
その後、私たちはエミリーさんのベーカリーで特製のデニッシュペストリーを楽しむことにしました。暖かい雰囲気の中で、美味しいペストリーとコーヒーを堪能しながら、次の冒険に思いを馳せました。コペンハーゲンの美しい夜景が広がり、運河の水面に映る灯りが幻想的な景色を作り出していました。
「やっぱりデンマークのペストリーは素晴らしいね。」涼介が満足そうに言った。
「ええ、特にこのシナモンロールは絶品ね。」私は微笑んだ。
---
食事の後、私たちはコペンハーゲンの夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。オスカーも満足そうに私たちの足元を駆け回っていた。
---
「世界探偵物語」の第15話「小さな奇跡 - コペンハーゲン編」はここまでです。次回もお楽しみに!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます