第13話 「赤道の重力 - エクアドル編」
私たちは南米エクアドルの首都キトに到着した。アンデス山脈に囲まれたこの街は、赤道直下に位置しており、その独特の地理と文化が私たちを魅了していた。次なる依頼人は、エクアドル国立博物館の館長、マルティネス氏だった。
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「探偵さん、どうか助けてください。博物館の展示物が奇妙な方法で消失しました。」マルティネス氏は焦燥の色を隠せなかった。
「消失した展示物について詳しく教えてください。」私は興味深く尋ねた。
「それは『太陽の石』という古代のアーティファクトで、エクアドルの歴史にとって非常に重要なものです。昨夜、警備員が見回りをしていた際に、突然消えてしまったのです。」マルティネス氏は深いため息をついた。
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私たちはまず、博物館の現場を詳しく調査することにした。展示室は厳重に管理されており、警備システムにも異常は見当たらなかった。消失した場所には、まるで何事もなかったかのように展示台が残っていた。
「奇妙だな。盗まれた形跡が全くない。」涼介が眉をひそめて言った。
「そうだな。この状況では、何か特別なトリックが使われたと考えるのが妥当だ。」私は同意した。
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その時、展示室の隅に奇妙な装置が置かれているのに気づいた。装置は古代の重力計のようで、赤道の特性を測定するために使われているようだった。
「これは…赤道直下の重力を利用したトリックかもしれない。」私はひらめいた。
「赤道の重力?どういうことだ?」涼介が尋ねた。
「赤道直下では、遠心力の影響で重力が他の地域よりわずかに弱い。これを利用して何か仕掛けをした可能性がある。」私は説明した。
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さらに調査を進めると、展示台の下に小さな仕掛けが隠されているのを発見した。それは、重力の微妙な変化を利用して作動する隠し扉だった。
「これだ。赤道の重力を利用して、展示台の下に隠し扉を作動させたんだ。」私は確信した。
「つまり、展示物はこの隠し扉を通じて消えたというわけか。」涼介が理解したように言った。
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隠し扉を開けると、そこには小さな地下室が広がっていた。地下室の奥には、消えた『太陽の石』が無事に保管されていた。
「見つけたわ。」私は太陽の石を手に取り、マルティネス氏に見せた。
「ありがとうございます!これでエクアドルの宝を取り戻すことができました。」マルティネス氏は感激の涙を浮かべた。
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しかし、私はさらにこの事件の真相を追及することにした。「この仕掛けを作ったのは誰か?展示物を盗もうとした犯人がいるはずだ。」
警備員のリストを確認し、一人の名前に目を止めた。最近雇われたばかりの警備員、カルロス・リベラだ。彼の履歴を調べると、以前に類似の手口で博物館を狙ったことがあることが判明した。
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私たちはカルロスを問い詰めることにした。最初はしらを切っていた彼も、証拠を突きつけられると観念した。
「そうだ、俺がやった。赤道の重力を利用すれば、誰にも気づかれずに宝を手に入れられると思ったんだ。」カルロスはうなだれながら言った。
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カルロスは警察に引き渡され、博物館の安全が再び確保された。
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その日の夕方、マルティネス氏の紹介で、私たちはエクアドルの伝統的な料理を楽しむことにしました。レストランでセビチェやエンパナーダを堪能しながら、次の冒険に思いを馳せました。アンデス山脈に沈む夕日が美しく、色鮮やかな景色が広がっていました。
「やっぱり南米料理は素晴らしいね。」涼介が満足そうに言った。
「ええ、特にこのセビチェは絶品ね。」私は微笑んだ。
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食事の後、私たちはエクアドルの夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。
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「世界探偵物語」の第13話「赤道の重力 - エクアドル編」はここまでです。次回もお楽しみに!
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