第11話 「消えた猫 - 京都編」

水曜日の夕暮れ、私たちは歴史と文化が息づく美しい街、京都に到着した。朱塗りの鳥居が立ち並ぶ伏見稲荷大社や、石畳の小路が続く祇園の風景が心を落ち着かせる。次なる依頼人は、老舗の茶屋を営む村田さんだった。


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「どうか助けてください!私たちの看板猫、まるが昨夜から姿を消してしまったのです。」村田さんは深い悲しみを滲ませて訴えた。


「まるちゃんはどこで最後に見かけられたのですか?」私は優しく尋ねた。


「昨夜、店が閉まる直前まで店内にいたのですが、それからいなくなってしまいました。」村田さんは目を潤ませながら答えた。


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私たちはまず、茶屋の周辺を詳しく調査することにした。夕暮れの中、古風な建物が並ぶ通りを歩きながら、私たちはまるの手がかりを探した。茶屋の裏手にある小さな庭には、まるが遊んでいたであろう痕跡が残っていた。


「ここにいた形跡はあるけど、どこかに連れて行かれたようですね。」涼介が言った。


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その時、近くで遊んでいた子供たちが私たちに駆け寄ってきた。「ねえ、あのお猫ちゃんを探してるの?昨日、着物を着たおばさんが連れて行くのを見たよ。」


「着物を着たおばさん?」私は興味深く尋ねた。


「うん、髪を結い上げていて、古いお屋敷の方に行ったんだ。」子供たちは口々に答えた。


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私たちは子供たちの情報を頼りに、古いお屋敷の方へ向かうことにした。京都の夕暮れが朱に染まり、静かな通りを歩いていると、古い木造の屋敷が見えてきた。


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「ここだな。」涼介が言った。


お屋敷の門を叩くと、中から品の良い老婦人が現れた。「何か御用ですか?」


「昨夜、こちらに猫を連れてきた方がいらっしゃると聞いたのですが。」私は尋ねた。


老婦人は微笑みながら答えた。「ああ、あの猫のことですね。実は昨夜、迷子になっていたようなので、一晩だけ預かっていました。少しお待ちください。」


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老婦人が奥に引っ込むと、間もなく猫を抱いた舞妓さんが現れた。彼女は優しくまるを抱きしめながら、私たちに近づいてきた。「こちらが探していた猫ちゃんですか?」


「はい、そうです。ありがとうございます!」私は感謝の気持ちを伝えた。


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舞妓さんは微笑みながら話し始めた。「昨夜、仕事から帰る途中で、この子が一人で泣いているのを見つけたんです。心配になって連れて帰りました。」


「お世話になりました。まるちゃんも安心したでしょう。」涼介が言った。


「いえいえ、この子はとてもお利口で可愛らしいです。これからも元気でいてほしいですね。」舞妓さんはまるを優しく撫でながら言った。


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その後、私たちはまるを連れて村田さんの茶屋に戻った。村田さんはまるを抱きしめて涙を流しながら感謝の言葉を述べた。


「本当にありがとうございます!これでまたお店に活気が戻ります。」村田さんは笑顔を見せた。


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その日の夕方、村田さんの茶屋で私たちはお茶と和菓子を楽しむことにしました。風味豊かな抹茶と美味しいお団子が並ぶ中、次の冒険に思いを馳せました。京都の夜は静かで、提灯の灯りが通りを柔らかく照らしていました。


「やっぱり京都は最高だね。」涼介が満足そうに言った。


「ええ、特にこのお茶と和菓子は絶品ね。」私は微笑んだ。


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食事の後、私たちは京都の夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。まるも安心したように私たちの足元で丸くなっていた。


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「世界探偵物語」の第11話「消えた猫 - 京都編」はここまでです。次回もお楽しみに!

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