第10話 「失われたアーティファクト - モスクワ編」

私たちはロシアのモスクワに到着した。クレムリンの赤い壁が朝日に照らされ、荘厳な雰囲気を醸し出していた。冬の寒さが身に染みる中、依頼人のアナスタシア・ペトロワ教授が私たちを待っていた。


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アナスタシア教授は、ロシアの古代遺物を研究する歴史学者であり、彼女の発掘チームが見つけた貴重なアーティファクトが突然消えたというのだ。「このアーティファクトは、ロシアの歴史を解き明かす鍵なのです。どうか見つけてください。」彼女の目には焦燥の色が浮かんでいた。


発掘現場はモスクワ郊外の古い教会の地下にあり、雪がしんしんと降り積もっていた。教会の中は寒さを防ぐために厚い石壁で囲まれており、地下へと続く階段が見えていた。


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「アーティファクトが消えたのはいつのことですか?」私は教授に尋ねた。


「昨夜のことです。チーム全員が休憩を取っていた間に消えてしまいました。警備カメラも何も捉えていません。」アナスタシア教授は深いため息をついた。


私たちはまず、地下の発掘現場を詳しく調査することにした。古代の石棺や遺物が並ぶ中、消えたアーティファクトの場所だけが不自然に空いていた。


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「まずは足跡を追ってみよう。」私は涼介に言った。


地下の薄暗い通路を進みながら、私たちは微かな足跡を見つけた。足跡は雪に覆われた外へと続いていた。「この足跡は新しい。犯人は外へ逃げたようだ。」涼介が言った。


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外に出ると、モスクワの冷たい風が頬を刺すようだった。足跡を辿っていくと、古びた倉庫にたどり着いた。倉庫は閉ざされていたが、中からかすかに音が聞こえてきた。


「ここにアーティファクトが隠されているかもしれない。」私は涼介に囁いた。


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私たちは静かに倉庫の扉を開け、中に入った。薄暗い室内には古い木箱が積まれており、その中にアーティファクトが隠されている可能性が高いと感じた。その時、奥の方で何者かが動く気配がした。


「誰かがいる。」涼介が囁いた。


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私たちは静かに近づき、犯人がアーティファクトを手に取ろうとした瞬間に飛びかかった。「動くな!」涼介が叫び、犯人の腕を掴んだ。


犯人は驚き、抵抗しようとしたが、私たちは素早く彼を制圧した。「君がアーティファクトを盗んだのか?」私は犯人に問い詰めた。


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「そうだ。しかし、これは私一人の仕業ではない。」犯人は観念した様子で答えた。


その後の調査で、犯人が古物商と共謀し、アーティファクトを高値で売りさばこうとしていたことが明らかになった。地元警察と協力して、犯人と共謀者は逮捕され、アーティファクトは無事にアナスタシア教授の元に戻された。


「これで全ての謎が解けましたね。」涼介が言った。


「はい、この事件も無事に解決できて良かったです。」私は微笑みながら答えた。


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その日の夕方、アナスタシア教授の紹介で、私たちはモスクワの伝統的な料理を楽しむことにしました。レストランでボルシチやピロシキを堪能しながら、クレムリンの美しいライトアップを眺めました。


「やっぱりロシア料理も素晴らしいね。」涼介が満足そうに言った。


「ええ、特にこのボルシチは絶品ね。」私は微笑んだ。


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食事の後、私たちはモスクワの夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。


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「世界探偵物語」の第10話「失われたアーティファクト - モスクワ編」はここまでです。次回もお楽しみに!

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