第5話 「毒殺事件 - プラハ編」
私たちは美しい中世の街並みが広がるチェコのプラハに到着した。ヴルタヴァ川が穏やかに流れ、プラハ城がその威厳を見せつけている。古い石畳の道を歩きながら、依頼人であるフランツ・ノヴァク教授のもとへ向かった。
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フランツ教授は有名な化学者であり、プラハ大学の教授でもある。彼は非常に緊迫した様子で私たちを迎え入れた。「今朝、私の助手が研究室で倒れているのを発見しました。どうやら毒を盛られたようです。」教授は焦燥の色を隠せなかった。
私たちはまず、大学の研究室を訪れ、現場の状況を詳しく調査することにした。研究室は化学薬品の香りに満ち、実験装置が整然と並べられていた。助手が倒れていた場所にはまだ緊迫した空気が漂っていた。
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「助手の状態はどうですか?」私はフランツ教授に尋ねた。
「病院に運ばれ、命に別状はありませんが、まだ意識が戻っていません。」教授は深いため息をついた。
私たちはまず、現場を詳しく調査し、毒がどのように盛られたのかを突き止めることにした。机の上にはいくつかのコップがあり、その中の一つに不自然な粉末が残っていた。
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「このコップから毒が盛られた可能性が高いですね。」涼介が言った。
「そうだな。この粉末を調べてみる必要がある。」私は粉末を慎重に集めた。
その時、研究室の隅で一人の学生が不安げな様子でこちらを見ているのに気づいた。「ちょっと話を聞いてみよう。」私は学生に近づき、声をかけた。
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「こんにちは、君はこの研究室の学生かい?」私は優しく尋ねた。
学生は少し戸惑いながらも答えた。「はい、そうです。今朝、助手が倒れているのを見て驚きました。」
「昨夜、この研究室で何か不審なことはなかったかい?」涼介が尋ねた。
学生は考え込むようにしながら、「昨夜、遅くまでここで実験をしていましたが、一人の男性が研究室に入ってくるのを見ました。彼は教授のライバルとして知られる人物で、何かに怒っているようでした。」と答えた。
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その情報を元に、私たちはフランツ教授のライバルであるヴィクトル・クレベク教授のもとを訪ねることにした。クレベク教授は冷静な表情で私たちを迎え入れたが、その目には微かな焦りが見て取れた。
「フランツ教授の研究室で毒殺未遂事件がありました。あなたは何かご存知ですか?」私はストレートに尋ねた。
「知りませんね。昨夜は自宅にいました。」クレベク教授は冷静に答えたが、その言葉には確信が感じられなかった。
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私たちはクレベク教授のアリバイを確認するために、彼の自宅周辺の監視カメラの映像を調べることにした。映像には彼が昨夜遅くに家を出て、大学へ向かう姿が映っていた。
「彼が犯人である可能性が高い。」涼介が映像を確認しながら言った。
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その後、私たちは警察と協力し、クレベク教授の自宅を捜索した。家の中からは毒物の入った瓶とフランツ教授の研究ノートが見つかった。クレベク教授はすぐに逮捕されたが、私はまだ何かが引っかかっていた。
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「涼介、何かおかしいと思わない?」私は逮捕されたクレベク教授を見ながら言った。
「確かに、彼が犯人だという証拠は揃っているが…何か違和感があるな。」涼介も同意した。
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私は研究室に戻り、毒物がどのように盛られたかをもう一度検討することにした。机の上にあった粉末を顕微鏡で詳しく調べていると、一つの事実に気づいた。
「この粉末…普通の毒物ではない。」私は驚きの声を上げた。
「どういうことだ?」涼介が尋ねた。
「これは特定の化学反応で初めて毒性を発揮する物質だ。助手が実験で使った試薬と混ぜることで、無害な状態から毒性を発揮させるように仕組まれている。」私は解説した。
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「つまり、粉末自体はすぐには毒と分からないように仕組まれていたんだな。」涼介が納得した。
「そう。そして、クレベク教授がこのトリックを知っていたとは思えない。これは彼の仕業ではない可能性が高い。」私は続けた。
私はもう一度学生の証言を思い返し、再度彼に話を聞くことにした。「昨夜、実験をしていた時、誰かが研究室に入ってきたと言っていたね。その時、何か特別なことはなかったか?」
学生は一瞬戸惑いながらも答えた。「実は、その男性が出て行った後、別の人が入ってきて…その人が粉末を机の上に置いたんです。」
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「その人物の顔は覚えているか?」私は緊迫した声で尋ねた。
学生はうなずき、「はい、それは…フランツ教授のもう一人の助手でした。」と答えた。
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その情報を元に、私はフランツ教授のもう一人の助手、マルタに話を聞くことにした。彼女は最初は否定していたが、私たちの鋭い質問に耐えきれず、ついに真実を白状した。
「私は…フランツ教授の研究を奪うために、彼を陥れようとしたのです。」マルタは涙ながらに告白した。
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「これで全ての謎が解けましたね。」涼介が言った。
「はい、この事件も無事に解決できて良かったです。」私は微笑みながら答えた。
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その日の夕方、フランツ教授の紹介で、私たちはプラハの伝統的な料理を楽しむことにしました。レストランでグーラッシュやクネドリーキを堪能しながら、次の冒険に思いを馳せました。プラハ城のライトアップが夜空に浮かび上がり、ロマンチックな雰囲気が漂っていました。
「やっぱりチェコ料理も素晴らしいね。」涼介が満足そうに言った。
「ええ、特にこのグーラッシュは絶品ね。」私は微笑んだ。
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食事の後、私たちはプラハの夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。
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「世界探偵物語」の第5話「毒殺事件 - プラハ編」はここまでです。次回もお楽しみに!
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