第8話 「消えたお守り - マニラ編」

私たちはフィリピンの首都マニラに到着した。湿った熱気が街中に漂い、トライシクルが喧騒の中を走り抜ける。賑やかな通りと笑顔あふれる人々の中で、次の依頼人を待っていた。


---


依頼人は地元の教師であるリサ・サントスさん。彼女は祖母から譲り受けた大切なお守りが突然消えてしまったと困惑していた。「このお守りは、私たちの家族の幸運を守ってきたものです。どうか見つけてください。」リサさんは涙ながらに訴えた。


私たちはまず、リサさんの家を訪れ、詳しい話を聞くことにした。リサさんの家はマニラの古い町並みにあり、伝統的なフィリピンの家屋で木の温もりが感じられた。家の中はリサさんの祖母が大切にしていた品々で溢れ、その中にお守りがあった場所だけが不自然に空いていた。


---


「お守りが消えたのはいつのことですか?」私はリサさんに尋ねた。


「昨夜、家族で夕食をとっている間に消えてしまったんです。家のドアも窓も閉めていたのに、一体どうして…。」リサさんは不安げな表情を浮かべた。


私たちはまず、家の中を詳しく調査することにした。窓やドアに不審な痕跡はなく、内部の者が関与している可能性が高いと感じた。


---


「まずは家族全員の話を聞いてみよう。」私は涼介に言った。


リサさんの家族全員がリビングに集まり、それぞれの昨夜の行動を詳しく話してくれた。特に何か異常を感じた者はいなかったが、一人の幼い弟が「夜中に見知らぬ影を見た」と証言した。


「その影はどこへ行ったか覚えていますか?」涼介が優しく尋ねた。


「うん、お姉ちゃんの部屋に入っていったよ。」弟は小さな声で答えた。


---


その情報を元に、私たちはリサさんの部屋を再度調査した。窓辺に微かな爪痕が残されているのを発見し、その爪痕が庭へと続いていることに気づいた。


「これは…誰かが外から侵入した形跡かもしれない。」私は窓の外を見渡した。


窓の下には庭が広がっており、花壇の一部が乱れていることに気づいた。「ここに何かが隠されているかもしれない。」涼介が言った。


---


私たちは庭を詳しく調査し始めた。花壇の中で、何かが踏みつけられた跡を見つけたが、それ以外に特に目立ったものはなかった。その時、隣の家の窓からこちらを見ている少年に気づいた。


「ちょっと話を聞いてみよう。」私は少年に近づき、声をかけた。「こんにちは、君は何か見かけたことがあるかい?」


少年は少し恥ずかしそうにしながらも答えてくれた。「昨夜、庭に誰かが来ているのを見たよ。猫を追いかけていたみたい。」


---


その情報を元に、私たちは庭をさらに詳しく調査した。花壇の隅に小さな穴を見つけ、そこに何かが引っかかっているのを発見した。それは、お守りの紐だった。


「これは…。」私は紐を慎重に引っ張り出し、お守りがその先に付いているのを確認した。「見つけたわ。」


「どうやら、猫が紐を引っ張って庭に落としたようだ。」涼介が言った。


---


お守りをリサさんに返すと、彼女は安堵の表情を浮かべた。「ありがとうございます!これで祖母の思い出を守ることができます。」リサさんは感激の涙を流した。


その後、私たちは地元警察と協力し、周辺の防犯対策を強化するよう提案した。犯人がいなかったことに安心しつつも、リサさんの家族が今後安全に暮らせるよう、注意を促した。


---


その日の夕方、リサさんの紹介で、私たちはマニラの伝統的な料理を楽しむことにしました。レストランでアドボやハロハロを堪能しながら、次の冒険に思いを馳せました。マニラ湾に沈む夕日が美しく、色鮮やかな景色が広がっていました。


「やっぱりフィリピン料理は素晴らしいね。」涼介が満足そうに言った。


「ええ、特にこのアドボは絶品ね。」私は微笑んだ。


---


食事の後、私たちはマニラの夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。


---


「世界探偵物語」の第8話「消えたお守り - マニラ編」はここまでです。次回もお楽しみに!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る