第3話 「移住の始まり - サントス編」
2024年6月18日、私たち三田村香織と藤田涼介は、ブラジルのサントス港を訪れていた。この日は、1908年に日本からブラジルへの本格的な海外移住の第一陣を運んだ笠戸丸がサントス港に到着した記念日だった。JICA(国際協力事業団)がこの日を記念日に制定し、多くのイベントが開催されていた。
私たちはサントス港の記念碑の前に立ち、当時の日本人移民たちの苦労と努力に思いを馳せていた。彼らはブラジルの広大な土地を農地に変えるために、遠く離れた異国の地で新しい生活を始めたのだ。
「781人の移民たちが、ここで新しい生活を始めたんですね。」私は記念碑を見つめながら言った。
「ええ、彼らの努力が今日のブラジルの日系コミュニティを築いたのです。」涼介も同意した。
その日の午後、私たちは地元の日系ブラジル人コミュニティセンターで行われるイベントに参加する予定だった。センターでは、日本からの移民に関する歴史展示や講演が行われていた。しかし、到着してみると、展示の目玉である貴重な移民日記が何者かによって盗まれたことが発覚した。
「これは大変だ!」センターの責任者である佐藤さんが慌てていた。
「貴重な日記が盗まれたんですか?」私は尋ねた。
「はい、日記は移民たちの苦労や喜びが記されている重要な資料です。何としても取り戻さなければなりません。」佐藤さんは深刻な表情で答えた。
私たちはすぐに調査を開始した。まず、センターの警備員やスタッフから話を聞き、監視カメラの映像を確認した。映像には、怪しげな人物が展示室に入り、数分後に出て行く姿が映っていた。
「これは内部犯行の可能性が高いですね。」私は涼介に言った。
「確かに、展示室の状況から見ると、その可能性が高い。」涼介も同意した。
私たちはまず、センターのスタッフのリストを調べ、その日の勤務記録を確認した。そこには、不自然な勤務交代が記されていた。
さらに調査を進めると、その人物が地元のアンティークショップで働いていることが判明した。私たちはアンティークショップを訪れ、店主に話を聞いた。
「最近、貴重な日記が持ち込まれたことはありますか?」私は尋ねた。
「ええ、昨日、ある男が古い日記を売りに来ました。とても貴重なものだと思ったので、すぐに保管しました。」店主は答えた。
「その男のことを詳しく教えてください。」涼介が言った。
店主の証言から、その男がセンターのスタッフであることが確認された。私たちはそのスタッフの居場所を突き止め、日記を取り戻すために行動を開始した。
私たちは警察と協力し、そのスタッフの自宅を突き止めた。自宅に踏み込むと、日記が無事に発見された。犯人は現行犯で逮捕された。
田中という名前のスタッフが逮捕されたが、彼の動機は明らかにされなかった。日記は無事にセンターに戻され、展示が再開された。私たちは地元の日系ブラジル人コミュニティの人々と共に、彼らの祖先が築いた歴史を祝った。その後、私たちはサントス港近くのレストランでディナーを楽しむことにした。
レストランはブラジル料理と日本料理の融合メニューを提供しており、特別な記念日メニューが用意されていた。私たちはフェイジョアーダやテリヤキチキンを楽しみながら、移民たちの苦労と努力に思いを馳せた。
「このフェイジョアーダ、美味しいですね。日本の味とブラジルの味が見事に融合しています。」涼介が満足そうに言った。
「本当に。移民たちが築いた新しい文化を感じますね。」私はフェイジョアーダを一口頬張りながら答えた。
私たちは食事を楽しみながら、移民たちの歴史とその遺産に感謝の気持ちを抱いた。デザートには、パッションフルーツのムースと和風抹茶ケーキをいただいた。
「ブラジルと日本の文化がこんな形で融合しているなんて、素晴らしいことです。」涼介が笑顔で言った。
「ええ、そして今日の事件も無事に解決できて、心からこの日を祝うことができるわ。」私は満足感に浸りながら答えた。
食事の後、私たちはサントス港の夜景を楽しみながら、次の冒険に向けて準備を整えた。移民たちの努力とその遺産が、これからも続くことを祈りながら。
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「世界探偵物語」の第3話「移住の始まり - サントス編」はここまでです。次回もお楽しみに!
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